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子どもへの投資こそ「少子化対策」の要

(リベラルタイム2019年4月号掲載)
日本財団理事長 尾形 武寿

我国が今後の社会づくりを進める上で、少子高齢化への取り組みが最大の課題であるのは言うまでもない。65歳以上の高齢人口は2017年、全人口の27.7%、3515万人に上る。内閣府によると、1950年の高齢人口は4.9%、416万人だった。約70年間に比率は5.7倍、人数は8.4倍に増えた計算。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の高齢化は今後も世界最先端のスピードで進み、2065年には38.4%とさらに10%以上増える。

これに伴い1950年、現役世代(15〜64歳)12.1人で高齢者一人を支えた社会の姿は2065年、1.3人で一人を支えるところまで進む。支えきれなければ年金や医療など、あらゆる社会システムが崩壊しかねない。しかし、私はこの点をさほど悲観視していない。

というのも高齢者のうち約半数を占める74歳以下の前期高齢者は近年、気力・体力を持った人が増え、彼らの専門知識や技術を活かす受け皿を整備すれば、現役世代の負担も緩和されるからだ。現実に高齢者の定義を75歳以上に引き上げるよう提案する声もある。

むしろ深刻なのは少子化である。我国の出生数は第一次ベビーブーム期の1949年、過去最高の約270万人に上った。しかし第二次ベビーブーム期の1973年、約210万人を記録して以降、減少の一途をたどり、2016年には97万人と100万人を割った。2030年には75万人、60年には48万人まで落ち込むと推計されている。

結果、2030年にはサービス、医療・福祉分野を中心に600万人を超す労働力が不足する、といった民間研究もある。女性やシニア、外国人労働者など働き手を増やすほか、AI(人工知能)やロボットなどを活用した生産性向上など多角的な対応で、不足数は一定程度、緩和されるかもしれない。

しかし、少子化の最大の問題は次代を担う若者の減少で社会が縮小し社会全体の活気が失われる点にある。そのためにも一人でも多くの子どもが健全に育つ社会環境の整備が急務で、日本財団でも里親制度や特別養子縁組の普及、児童養護施設等の出身者や不登校児に対する進学支援、小児難病や障害を持つ子供を介護する家族が一時的に小休止できるレスパイト施設の整備などに取り組んできた。

この一環として全国100カ所を目標に整備を進めているのが子供の「第三の居場所」。就労や傷病で保護者が日中、家庭にいないため下校後、保育を必要とする小学校低学年の児童が対象で、
子供は放課後から親が迎えに来る午後9時まで施設に滞在する。施設の建設と3年間の運営費を日本財団が負担し、その後は当該市町村に運営を引き継ぐことにしている。

その13カ所目の居場所が広島県尾道市の因島に完成し、筆者も2月1日、内覧会に出席した。尾道市には1年半前にも第三の居場所がオープンしており、因島拠点は2カ所目。先行した尾道拠点では11人の児童が利用し、地元の社旗福祉協議会などの熱心な取り組みもあり、平谷祐宏市長は「子供たちが将来の夢を語り、見違えるような日常生活を送るようになった」と第三の居場所に対する期待を語ってくれた。

お年寄りやボランティアの学生らが子供の勉強や話し相手、食事の世話をし、子供が馴染みやすい場に育ってほしいと思う。地域ぐるみで子供を育てるのは日本の良き伝統でもあった。100カ所を全国に広く配置するのではなく、熱心な自治体に集中させることで子育てのモデル都市とするのも効果的と考える。国の未来を託す子供に対する投資こそ、何よりも少子化対策の要である。

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