記事

米朝首脳会談、交渉内容をめぐって食い違う主張 トランプ大統領は文大統領よりも安倍総理の提案を受け入れた?



 合意に至らず、度重なる予定変更で報道陣が翻弄された米朝首脳会議。予定外の動きは会談を終えた深夜になっても続いた。北朝鮮の李容浩外相が突然の会見を開き、交渉内容に関するトランプ大統領の説明に反論。さらにポンペオ国務長官が「大統領の発言が正しい」と主張すると、崔善姫外務次官が「我が方の提案に対してアメリカが受け入れなかったのはせっかくの機会を逃すことになる」「今後このような機会が再びアメリカ側に与えられるかどうか私も確信は持てない」と指摘した。



 食い違う双方の主張を改めて整理すると、会見でトランプ大統領が

  • 北朝鮮は完全な制裁解除を求めたがそれには応じられない
  • アメリカは北朝鮮に対し、寧辺以外の核施設の廃棄も求めた
  • 北朝鮮との関係は維持する
  • 米朝間にはまだ溝(ギャップ)がある
  • 次回の会談は約束していない

 と説明したのに対し、李容浩外相は

  • 我々が求めるのは全面的な制裁解除ではなく一部解除」
  • 寧辺の全ての核施設を両国の専門家の立会いの下、永久に廃棄すると申し出た
  • 寧辺の核施設廃棄の他にもう1つ必要だとアメリカは最後まで主張した
  • アメリカが再度交渉を持ちかけても我々の案に変化はない

 と反論したということになる。これについて、1日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した新潟県立大学の浅羽祐樹教授は「なぜ決裂したのかがよく出ていると思う」と話す。



 「北朝鮮側は連絡事務所の設置や終戦宣言などよりも、切実に経済制裁を緩和してほしいと訴えた。しかもそれは全ての制裁ではなく、2016年以降に国連安全保障理事会が決議した5本分、すなわち金融や石油の輸入禁止、北朝鮮の主力の輸出産物の石炭など、お金になる部分について解除してほしいということだった。ところがトランプ大統領にしてみれば、それは実質的に全面的な解除につながるということ。北朝鮮側にとっては"一部"だが、トランプ大統領にとっては"完全"ということだ。加えて北朝鮮にすれば、核開発のいわば心臓部である寧辺を差し出すのであれば、相応の見返りがあって然るべきだということだ。だが、これもトランプ大統領や日本を含む国際社会に言わせれば、寧辺はこれまで北朝鮮が何度も何度も止めると言っていたものだし、寧辺以外の核開発施設の方がはるかに脅威だ。それらが止まらないことには、非核化への実質的なプロセスに進んだことにならない。そこまでいくのであれば、見返りとしての制裁緩和もやぶさかではないということだった。このように、双方の主張に相当な隔たりがあったということだ」。

 浅羽氏は「ここまでの結果になるとは両国にとっても予想外だったと思う」とした上で、「"悪い合意をするよりは合意をしない方がまし"、ということだ」と指摘する。

 「選択肢AとBを突きつけられ、追い詰められるとどちらかを選んでしまいがちだが、その場は流して選択肢CやDを選ぶ方が良く、そのために現状そのまま続く方がいい、ということは我々の日常生活でもままあると思う。今回はビッグディールとスモールディール、そして"決裂"と"破綻"の、実質4択だったと思う。スモールディール=寧辺という、既存の、すでに知れ渡っていて、北朝鮮が何度も止めると言っていた核開発施設を止めることに対し、アメリカが制裁緩和に応じるシナリオと、ビッグディール=寧辺以外の、これまで隠されていた平壌近郊カンソンの核開発施設も含めて北朝鮮が申告することに対し、応分の制裁緩和に応じるというシナリオがあった。何らかの形で文書を出し、それぞれが国内外に向けて成果をアピールしたかったのは間違いないが、ビッグディールで合意できずにスモールディールで合意してしまえば国内が持たない。最悪は破綻だ。次に悪いのはスモールディール。それで"平和だ"と喧伝されれば、日本や韓国にとっては安全保障環境が悪化することすらある。その意味で、一度席を立って、これでは合意できないということを突きつける方がましだったということ」。

■トランプ大統領は文大統領よりも安倍総理に与したが… 

 これまで3度にわたる金委員長との首脳会談で関係改善をアピール、今回の米朝首脳会談についても米朝関係、南北関係はかつてなく良好だとし、韓国が主導権を握っていると強調してきた文在寅大統領。



 米朝首脳会談の2日前には「朝鮮半島問題の主役として米朝関係発展を促し、非核化や恒久的な平和繁栄に力を尽くすだろう」と述べ、実質的に成果なしとなった会談を受けての演説でも「南北関係発展が米朝関係の正常化と北日関係正常化につながり、北東アジア地域の新しい平和安全保障と秩序をもたらすだろう」「ベトナム・ハノイでの2回目の米朝首脳会談も長時間話し合って相互理解と信頼を高めただけでも意味のある進展だった」とその意義を強調していた。

 文大統領の発言について浅羽氏は「米朝と南北関係が連動していて、好循環だったということで行きたかったんだと思うが、演説の原稿はあまり書き直していないと思う。なお強気だなという印象で、私が仲裁者となって米朝間を取り持たないといけないという、ある種の使命感に燃えている。ただ、それはややもすると現実の韓国の外交の力量よりも高めのところを見込んでいる"誤算"の可能性がある」と見方を示し、「米朝間で何らかの妥結があり、それを受けて金正恩委員長をソウルに呼んで南北首脳会談を行うことを望んでいた。また、経済制裁の本体の部分、つまり国連安全保障理事会やアメリカ政府が行っている部分の解除が難しければ、韓国政府が行っている制裁措置、つまり金剛山観光事業や開城工業団地の部分で肩代わりすることで、韓国の立ち位置を示そうとしていた。その構想が全部流れてしまったので、立て直しが求められている」と指摘した。



 さらに浅羽氏は「トランプ大統領へのインプットは、文大統領のインプットよりも安倍総理の方が効いている。共に米朝首脳会談の前に電話会談をやっているが、トランプ大統領は文大統領の"肩代わり"の提案よりも、安倍総理が一貫して求めてきた非核化の実質的な措置、寧辺プラスアルファがなければ制裁緩和に応じるべきではないという提案に与した。つまり北朝鮮は対日政策に関してアメリカ経由ではあるが立場を変える可能性はあるとは思う。ただし今の局面において、残念ながら日本は非核化でも朝鮮半島の平和体制構築でも主要なプレーヤーでないのが事実。安全保障面で脅威にさらされているという意味では"利害関係者"ではあるが、"朝鮮戦争の当事者"ではなかった。実際は日本も参戦し犠牲者も出ているので当事者と言えなくもないが、法的な意味でのプレーヤーではないので関わりにくい」と話した。

 また、今後については「今回、米朝は決裂してはいるが、完全に破綻したわけではないので、合意がなされなかったことをそんなに悲観的に見る必要はないと思う。1日付の北朝鮮の機関紙を読むと、1・2面を使って写真のオンパレードで、"建設的な対話ができた""次に向けて期待している"と主張している。今回の結果は北朝鮮への制裁が効いているという裏返しでもある。トランプ大統領は"制裁を強めるのは望むことではない"と言っているし、北朝鮮も非核化にはコミットしているので、2017年のように核・ミサイル実験を行うとか、そういう手段は取らない」との見方を示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶放送済み『AbemaPrime』は期間限定で無料配信中

あわせて読みたい

「米朝首脳会談」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    結婚しなくなった日本は先進国

    シロクマ(はてなid;p_shirokuma)

  2. 2

    沖縄慰霊 本土の捨て石だったか

    古谷経衡

  3. 3

    首相へヤジに地元民「沖縄の恥」

    和田政宗

  4. 4

    反日を煽る韓国紙に読者が異議

    団藤保晴

  5. 5

    宮迫・田村亮ら芸人11人謹慎発表

    BLOGOS しらべる部

  6. 6

    男逃走めぐる産経社説は撤回必要

    郷原信郎

  7. 7

    4年間は寮生活 松下政経塾の実情

    BLOGOS編集部

  8. 8

    自民 参院選前にかつてない逆風

    五十嵐仁

  9. 9

    戦後日本で活躍した天才の転落劇

    fujipon

  10. 10

    会社でキレる人が評価される理由

    非国民通信

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。