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2回目の米朝首脳会談、合意に至らなかった本当の理由 - 海野素央 (明治大学教授、心理学博士)

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会談と公聴会が同日になったワケ

トランプ大統領は記者会見で、コーエン被告の公聴会に関して「すべて見なかった」と語り、「フェイク(偽)な公聴会だ」とレッテル貼りをして批判しました。そのうえで、「この重要な首脳会談を行ているときに、公聴会を開催した。2日後、あるいは来週に行うことができたはずだ」と、不満をぶちまけました。

米朝首脳会談と同日にコーエン被告の公聴会が開催されていなければ、人道支援、連絡事務所の相互開設、ニョンビョン核施設の廃棄など低レベルの非核化で合意を得たのかもしれません。北朝鮮も開城工業団地及び金剛山観光の再開における特例のみを要求し、完全な制裁の解除までは求めなかったでしょう。

そもそもコーエン被告の公聴会は2月7日に開催予定でした。ところが、コーエン被告がトランプ大統領と同大統領の弁護士チームの1人であるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長によって、家族が脅迫を受けていると主張し、公聴会は同月末に延期になりました。

そこで、ナンシー・ペロシ下院議長とイライジャ・カミングス下院監視・政府改革員会委員長は、米朝首脳会談の注目度を下げるためにコーエン被告の公聴会を会談と同日に開催したのです。その結果、トランプ大統領は米朝首脳会談が全米に生中継されるのを期待していましたが、コーエン被告の公聴会に奪われてしまいました。

ペロシ議長とカミングス委員長の狙いは的中しました。記者会見で2人の術中に陥ったトランプ大統領は、非常に不快そうな表情を見せていました。

2020年米大統領選挙の新たな意味

トランプ大統領は記者会見で、「次の会談は約束をしていない」と述べました。20年米大統領選挙で再選を目指す同大統領は、北朝鮮の非核化を進展させなければ、ライバルの民主党候補から攻撃を受けることは間違いありません。

以前述べましたが、同年秋に大統領候補テレビ討論会が始まるので、遅くともそのころまでに非核化において目に見える成果が出ないと、北朝鮮核問題がトランプ大統領にとってマイナス要因になる可能性が高まります。従って、金委員長との良好な関係の継続は不可欠です。

記者会見でトランプ大統領は、交渉では「いつでも退室する準備はできている」と主張し、悪いディールをしなかった点を強調しました。しかし帰国すれば、議会民主党から2回目の米朝首脳会談は「大失敗だった」と批判されることは避けられません。

米情報機関のトップであるダン・コーツ国家情報長官が2回目の米朝首脳会談の前に議会公聴会で、「北朝鮮は核兵器を放棄する公算は低い」と証言しました。正しくその通りになったわけです。

ペロシ下院議長は今回の会談決裂について、「トランプ大統領は米情報機関を信頼するべきだ」とコメントを出しました。

加えて、前で触れましたがコーエン被告の証言によりトランプ大統領は選挙資金法違反に問われます。ロシア疑惑を捜査するモラー特別検察官の最終報告書で、トランプ大統領の選挙資金法違反が明記され、しかも20年大統領選挙で敗れた場合、起訴される可能性が出てきました。

つまり、トランプ大統領にとって次の大統領選挙の意味がまったく変わってきたのです。

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