- 2019年02月28日 15:15
「沖縄の民意」を見くだす安倍首相の驕り
2/2■「沖縄県民を含む国民の安全を損なう」はずるい
「移設を進めることができなければ、市街地に囲まれた普天間飛行場の危険性を取り除くことはできない。中国などの脅威から日本を守る、抑止力を保つことにも反する。沖縄県民を含む国民の安全を損なうことにつながる。投票結果は極めて残念である」
こう書くのは2月25日付の産経新聞の社説(主張)である。
普天間飛行場に比べれば、海を埋め立てて米軍のキャンプ・シュワブを増設する辺野古移設の基地は、ヘリや輸送機の飛行は海上が中心になるから格段と安全だろう。
しかし中国の脅威から日本を守るには辺野古でなくともいいはずだ。ましてや前述したように朝鮮半島の勢力図が変化しつつあるなか、中国の立ち位置も変わる。アメリカの対応も変わってくる。
ここは先を見越して動く必要がある。防衛では先見の明が欠かせない。先を見通せなければ、抑止力も効かない。
ボタンを正しく掛け直した後、たとえば沖縄県外の日本国内に新たな米軍基地を建設する方法も検討すべきである。本土の既存の自衛隊基地を拡大して一部を米軍が使用することも可能だ。グアムの米軍基地を増強する方法もあり得る。とにかく辺野古に固執していては一歩も前には進まない。
産経社説は「沖縄県民を含む国民の安全を損なう」と書くが、安倍政権の本音は、沖縄県民を犠牲にして日本の安全と国益を守ろうというものだ。それを社会の公器である新聞の社説が、いかにも沖縄県民の安全が守れないというような書き方をするのは、ずるくて卑怯だ。納得がいかない。社説は正々堂々と本音で書くべきである。
■県民投票は基地問題に「なじまない」のか
次に2月26日付の読売新聞の社説。その冒頭から「沖縄県の基地負担を軽減する長年の取り組みを混乱させることにならないか。安全保障政策を県民投票で問うことの危うさを直視すべきだ」と主張する。産経社説と同様、米軍基地問題を沖縄に一方的に押し付けるつもりなのでは、と疑いたくなる書きぶりである。
読売社説は中盤でこうも指摘する。
「米軍施設の移設先は、日本を取り巻く安全保障環境や米軍の運用実態、沖縄の基地負担軽減を総合的に勘案して決めざるを得ない。国は、時間をかけてでも実現させる責務を負う。県民投票で是非を問うのはなじまない」
県民投票は本当になじまないのだろうか。沙鴎一歩は「『国民投票』で是非を問うべき問題だ」と主張したが、読売社説は正反対のスタンスを取る。どこまでも安倍政権を擁護したいのだろう。さらに読売社説は主張する。
「英国が欧州連合(EU)離脱の是非を国民投票にはかった結果、大混乱に陥っている」
「複雑に利害が絡む国政の課題は、有権者に直接問うのではなく、国政選挙で選ばれた国会議員に委ねるべきである」
イギリスのEU離脱問題と日本の辺野古移設問題を等しく並べる読売社説の真意がわからない。複雑に利害が絡む国政の課題だからこそ、地元沖縄に直接問える県民投票がいいのではないか。米軍基地で経済効果の恩恵を受けるのも、米軍機の騒音や事故、米兵の犯罪に悩むのも沖縄県民だ。その沖縄県民がどう考えるのかを問うのが民主主義だろう。
■安倍首相が「数の力」に驕っているのは明らか
産経や読売とは反対のスタンスを取るのが朝日新聞の社説である。2月25日付の朝日社説の見出しは「沖縄県民投票 結果に真摯に向きあえ」だ。
朝日社説は「辺野古問題がここまでこじれた原因は、有無を言わさぬ現政権の強硬姿勢がある」と指摘したうえで主張する。
「最近も、埋め立て承認を撤回した知事の判断を脱法的な手法で無効化し、土砂の投入に踏みきった。建設予定海域に想定外の軟弱地盤が広がることを把握しながらそれを隠し続け、今も工期や費用について確たる見通しをもたないまま『辺野古が唯一の解決策』と唱える」
「自分たちの行いを正当化するために持ちだすのが、『外交・安全保障は国の専権事項』という決まり文句だ。たしかに国の存在や判断抜きに外交・安保を語ることはできない。だからといって、ひとつの県に過重な負担を強い、異議申し立てを封殺していいはずがない」
安倍政権の強硬姿勢はどこから来るのか。数の力に驕っているのは明らかだ。安倍首相は「対話を進めていきたい」と語った。それは口先だけだ。沖縄の民意が「反対」を支持したにもかかわらず、辺野古の埋め立てを続行している。一体、いつ対話をするつもりなのか。もう嘘をつくのはやめてもらいたい。
■明白な民意を無視し続ける姿勢は、民主主義の危機
朝日社説は「自分たちのまちで、同じような問題が持ちあがり、政府が同じような振る舞いをしたら、自分はどうするか。そんな視点で辺野古問題を考えてみるのも、ひとつの方法だろう」とも書く。
その通りだが、もはや「ひとつの方法だろう」などではなく、私たち国民ひとり一人が自分の問題として考えなければ、辺野古移設を含めた沖縄の米軍基地問題は解決していかない。
朝日新聞は翌26日付紙面にも「これが民主主義の国か」との見出しを付けた社説を掲載し、次のように指摘している。
「日米合意や安全保障上の必要性を強調し、明白な民意を無視し続ける姿勢は、日本の民主主義を危機に陥れている」
民主主義とは何か。沖縄の県民投票の結果が投げかける重要な問いである。
(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)
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