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「ナイスセックス! ありがとう!」あいみょんが起こした2・18武道館セックスコール&レスポンス事件

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BLOGOS編集部

昨年ブレイクを果たしたシンガーソングライターあいみょんが、2月13日にメジャー2枚目のニューアルバム「瞬間的シックスセンス」をリリースした。そして2月18日には自身初の武道館ライブを開催。とても行きたかったのだけどチケットは無かった。

このメモリアルな武道館ライブを目撃できなかった悔しさを、前々日に両国国技館で開催された「DDTプロレス マッスルマニア2019㏌両国 ~俺たちのセカンドキャリア~」の余韻で凌ぐ。全長3メートルのアンドレザ・ジャイアントパンダをとても間近で見られた幸せを引っ張れるだけ引っ張り、あいみょんの武道館に行けなかった悔恨にフタをしていた。

のだが、その武道館ライブのレビュー記事に触れ、抑えきれない悔恨が噴出した。

ナイスセックス!ありがとう!

< 2019年2月18日配信 音楽ナタリー「あいみょん初の武道館に1万4000人、万感の思いで歌った曲」 >

あいみょんが本日2月18日に初の東京・日本武道館単独公演「AIMYON BUDOKAN -1995-」を開催した。(中略) チケットが一般発売されるとすぐさま完売し、会場には全国から約1万4000人のファンが集結した。「初めての日本武道館公演は弾き語りでやりたい」という思いがあったというあいみょんは、360°観客に囲まれたセンターステージでアコースティックギターの弾き語りによるパフォーマンスを披露。

(略)

「日本一のアレを聴きたいと思ったんです!」とあいみょんが目を輝かせて始まった「ふたりの世界」では、あいみょんが「まだ眠たくないの」と歌うと、観客が「セックス」と大声で叫ぶ。これを受けてあいみょんは「ナイスセックス! ありがとう!」と満面の笑顔を見せた。-https://natalie.mu/music/news/320487
「ふたりの世界」は2017年にリリースされたメジャー1stアルバム「青春のエキサイトメント」に収録されている一曲だ。
< 「ふたりの世界」(作詞:あいみょん)より >

いってきますのキス
おかえりなさいのハグ
おやすみなさいのキス
まだ眠たくないのセックス


お風呂からあがったら
少し匂いを嗅がせて
まだタバコは吸わないで
赤いワインを飲もう
歌詞前半に「セックス」というフレーズがあり、これにあわせて武道館に集った1万4000人が「セックス!」と声を揃えてコールしたという。それを受けたあいみょんの返しが「ナイスセックス!」だ。この瞬間、「セックス」という巨大な文字型となって武道館を突き破り東京の夜空に高々と達したはずだ。

この場面、察するに察すれば、あいみょんとファンによる武道館到達という勝ち名乗りの儀式じゃないか…、ああ、そこに居たかった。

SEXというワードの破壊力

さて「セックス」――、あいみょんというアーティストを語るのに、これをやんわりなワンノブゼムにはできない。だからこその「2・18武道館セックスコール&レスポンス事件」だ。勝手にプロレス史っぽくしてしまったが、しばしマッスル両国とあいみょん武道館が混濁しているので仕方ない。

「セックス」というワード、その日本社会における発現と普及の変遷は専門家に譲るとして、ざっくり言えばこのワード、日常であまり大きな声では言えない、小声を強いられる言葉として長らく存在してきたのは確かだ。

「セックス」というワードが、性表現やピンク&エロ業界のジャンルを超えて、日常に進出してきた場面を筆者なりに思い返してみる。まず、80年代の深夜テレビ「オールナイトフジ」(1983~ フジテレビ)があった。売り出し中だった若き片岡鶴太郎が番組冒頭の自己紹介でワンショットになったとき、ツカミのギャグとしてシモネタフレーズを発するのが恒例だった。そこで鶴太郎が「…セックス」と発し、女子大生(オールナイターズ)達をキャアキャア言わせていたことを覚えている。忘れられないのはそれぐらい「セックス」という言葉が、テレビから発せられることに大きなインパクトがあったからだ。

次が、月9ドラマ「東京ラブストーリー」(1991~ フジテレビ)だ。鈴木保奈美演じる「赤名リカ」が、織田裕二演じる「カンチ」を相手に発したセリフ「ねぇ、セックスしよう」は、ゴールデンタイムのテレビから(トウが立ったベテランではなく)若手人気女優のみずみずしい口で「セックス」と言わせたエポックな事件だった。

次が、海外ドラマの「セックス・アンド・ザ・シティ」(1998~)か。アダルトではない一般的なエンタメ作品で、そのタイトルに堂々と「セックス」というワードが使われた衝撃。アメリカによる有無も言わせぬ黒船感を強く感じた。

そうして、「セックス」というワードは世間の日陰ではない日向の場で存在を広げ、出版界では小説「人のセックスを笑うな」(2004 著:山崎ナオコーラ)なども出て、のちに松山ケンイチと永作博美の主演で映画化もされた。

ふり返るなら平成という時代は、「セックス」というワードの湿り気をメジャーメディアの天日で乾かし、陰から陽の場における取り扱いの規制緩和が進んだ時代だった、とかなんとか言えるだろう。

だが、ドラマ、映画、小説などで辿ってきたその歩みに、ポップソングは含まれていなかった。マニアックな昭和歌謡、ニッチなインディーシーンではなく、大衆と並走するポップシーン…、ユーミン、松田聖子、ドリカム、浜崎あゆみ、安室奈美恵、宇多田ヒカル、aiko、椎名林檎、いきものがかり、きゃりーぱみゅぱみゅ、西野カナ、乃木坂46…。

誰も「セックス」というワードを歌詞にすることは無かった。しなかったし出来なかった。歌詞にすればそれを口にしなければならない。その言葉を口にすることの生々しい反作用に、その言葉が想起させるダイレクトなエロさに、アーティストもファンも耐えられないからだ。ともすれば、それまでに築いてきたイメージをその一語でもって崩しかねない。そんな危険な(コスパのわるい)言葉には近づかないほうが賢明というオトナの判断だ。

が、平成がまもなく終わろうという音楽シーンにあいみょんは現れ、ポップソングで「セックス」というワードを解放してしまった。しかも、1万4000人のファンが誰彼はばかることなく、大コールでこのワードを支持したのだ。あいみょんは今、そういう場所に立っている。

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