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米朝首脳会談 南北共同シナリオの行方

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

2019年2月25日-3月2日

【まとめ】

・北朝鮮の完全非核化の実現可能性は極めて低い。

・北朝鮮の「主体思想」はソ連と周辺強国への半従属の歴史から成る。

・トランプ政権上に成り立っている南北共同シナリオはいずれ破綻する。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=44377でお読み下さい。】

今週はベトナムで第二回米朝首脳会談が予定されているが、正直言って首脳会談にはあまり期待していない。今回も北朝鮮の「非核化」、すなわち北朝鮮が現在保有するものだけでなく、全ての核兵器・運搬手段を含む核兵器開発プログラムそのものを廃棄することについて北朝鮮が譲歩する可能性は極めて低いと考えるからだ。

しかし、「それでは身も蓋もない。何かコメントせよ」、とお叱りを受けそうなので、今回はもう少し大局的見地から、なぜ北朝鮮が核開発を止めないのか、なぜ韓国が北との関係改善を急ぐのか、について考えてみたい。これから述べることが正しければ、米国の大統領が誰であれ、こうした歴史的潮流を止めることはできないだろう。

何故そう考えるようになったのか。視点を変えて、北朝鮮と韓国の立場で考えれば、全てが合点がいく。筆者の仮説はこうだ。

● 1990-91年のソ連崩壊は北朝鮮の金日成と金正日にとって建国後最大のショックだったに違いない。ソ連の次は北朝鮮だと一時は確信したのではなかろうか。

▲写真 ソ連の象徴だったレーニン像 出典:Wikimedia Commons; Cmapm

● 北朝鮮がこの状況下で生き延びるためには核兵器を保有するしかない。1994年以降の核兵器開発は北朝鮮生き残りのための金正日の確信犯的行動である。

● 朝鮮半島の歴史は周辺の強国への半従属の歴史だった。半島で強大な独立国家が栄えたことは稀で、多くは最も強大な隣国との冊封関係で生き延びてきた。

● こうした歴史を知れば、北朝鮮の「主体思想」なるものも、朝鮮民族の「他に依存せず、自らの歴史の主体となりたい」という願望の一側面であることが判るだろう。

● 韓国の文大統領は確かに左翼だが、彼も左派のナショナリストだと考えれば合点がいく。彼は韓国が米国の影響下にあることが耐えられないのだろうと思う。

▲写真 安倍首相と電話会談をする文大統領 出典:韓国大統領府

● 北朝鮮だって同じ。中国やソ連の影響下にあることへの不満は小さくない。中朝は基本的に相互不信であり、最近の関係改善はあくまで戦術的なものだろう。

● 21世紀に入り、こうした南北朝鮮の歴史的願望が叶う可能性が出て来た。しかも、北朝鮮は核兵器開発に漸く成功し最低限の対米、対中抑止力まで手に入れた

● 一方、米国にトランプ政権が誕生し、半島からの米軍撤退の可能性が出てきた。韓国では文在寅・左派ナショナリスト政権が誕生し、南北に共通言語が戻った。

● 今回の平和攻勢は、最終的にどちらが生き残るかは別にして、南北が戦術的に協力して朝鮮半島への周辺大国の影響力を減らす南北共同のシナリオではないか。

● 文在寅にとって北朝鮮の核は当面気にならない。彼は北が韓国に対し核兵器を使うことはないと信じ切っているだろうからだ。これでは「非核化」が進むはずはない。

● しかし、こうした南北共同シナリオはいずれ破綻する。南北朝鮮には中国や米国の意図を挫くだけの十分な国力・政治力がないからだ。

● 現下の状況はトランプ政権が続く限り変わらないだろうが、トランプ氏が政治の舞台から退場すれば、南北共同シナリオのモメンタムは失われるだろう。

● それが数カ月後か、二年後か、もしくは六年後かは判らない。だが、文在寅政権が続く限り、こうした南北共同シナリオに沿って動き、日韓関係は更に悪化するだろう。

今週は国内移動中につきこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

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