- 2019年02月28日 09:15
患者が激減"東大病院"ブランド失墜の原因
2/2東大病院の不祥事は今に始まったことではない
ここまでの経過を見ると、東大病院の言い分は信頼できそうにない。このような対応を繰り返せば、社会の信頼を失ってしまう。
実は、東大病院の不祥事は今に始まったことではない。
2013年には、血液腫瘍内科(黒川峰夫教授)が白血病治療薬の臨床研究で、患者に無断で、販売元のノバルティスファーマに患者の情報を提供していたことが明らかとなった。
同年には岩坪威・東大教授が代表を務めるアルツハイマー病の多施設共同研究(J‐ADNI)で、データの改竄を指摘された。2014年には、大学院進学を希望する医局員から、教授昇格祝いの名目で100万円を受け取っていた眼科教授が諭旨解雇された。
2015年には、今回医療事故を起こした研究室を主宰する小室一成・循環器内科教授が、前任の千葉大学在籍中に実施したノバルティスファーマが販売する降圧剤の臨床研究で不正を指摘された(ディオバン事件)。千葉大学は調査を行った108例のデータのうち、拡張期血圧の45%、収縮期血圧の44%に誤りがあったとし、東大に処分を求めた。日本高血圧学会は、この論文を撤回した。
不正を指摘された教授たちはどうなったか
2016年には、東京大学や文部科学省などに研究データ改竄を訴える告発文が届いた。その中には小室一成教授の論文もあったが、もっとも多かったのは、門脇孝・糖尿病代謝内科教授の研究室から発表されたものだった。
2003~13年に発表された7つの論文で18カ所の不正の可能性が指摘された。その中には、「データ本体の長方形に、あたかも釘を打ち込むように不自然に下に伸びるエラーバーが隠されていた」、「700日、710日、720日などとキリの良い数字の日に死亡するマウスが不自然に多い」などが含まれていた。
では、このような不正を指摘された教授はどうなったのだろう。驚くべく事だが、諭旨解雇された眼科教授を除き、誰も責任をとっていない。いずれも第三者委員会が設けられたが、黒川教授が文書による厳重注意を受けた以外、不問に付された。定年退職した門脇孝教授を除き、いずれも東大教授の地位にある。
「アルバイトの合間」に病院で働いているのか
彼らの問題は本業である教育、診療、研究に真面目に取り組んでいないように見えることだ。ワセダクロニクルと私が主宰する医療ガバナンス研究所が共同で立ち上げた「マネーデータベース『製薬会社と医師』」を用いて調べたところ、2016年度に小室一成教授は、製薬企業の講演会などを80回こなし、1123万2,334円を受け取っていた。
門脇孝教授は86回で1163万6,265円、黒川峰夫教授は17回で273万791円、岩坪威教授は12回で129万6,963円を受け取っていた。小室教授や門脇教授は「製薬企業のアルバイトの合間に大学病院で働いている」と言われても仕方ない。
門脇教授は2011~14年まで東大病院長を務めた。トップがこのような振る舞いをすれば、組織は緩む。実は東大病院は地盤沈下を続けている。患者は減少し、東大病院の経営は火の車だ。
2017年の入院患者は35万8,923人、外来患者は69万8780人だった。だがこれは2008年の入院患者39万6436万人と外来患者80万931人に比べて、入院患者は約3万8,000人、外来患者は約10万人減っている。その結果、東大病院の財務状況は「すでに経営破綻している」といわれるほど悪化しているのだ。(後編に続く)
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上 昌広(かみ・まさひろ)
医療ガバナンス研究所理事長・医師
1968年、兵庫県生まれ。93年、東京大学医学部卒。虎の門病院、国立がんセンター中央病院で臨床研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究する。著書に『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)など。
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(医療ガバナンス研究所理事長・医師 上 昌広 写真=時事通信フォト)
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