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「大学側は法科大学院の学生たちが置かれた環境を知っていたはずだ」一橋大学アウティング訴訟、きょう判決

 一橋大法科大学院に通っていた男子学生が同性愛者であることを同級生に口外されたことに悩み転落死した事件をめぐり、遺族側が大学を提訴した民事訴訟の判決があす言い渡される。

 発端は亡くなる4か月前、2015年4月のこと。男子学生Aさんが同級生の男性Bさんに思いをLINEで告白したことだった。その2か月後、Aさんは同性愛者であることをクラスメイトが参加するLINEグループで暴露される。本人の意に反して第三者に暴露する行為、いわゆる「アウティング」だ。

Aさんは精神的なショックから、男性を見ると動悸や吐き気などの症状が発作的に出るようになり、差別などの不安から授業にも出席できなくなり、苦しみを抱えながら亡くなった。

 Aさんの遺族を取材した小川彩佳アナウンサーは印象に残った言葉として「Bさんもまた、LGBTやアウティングについて誰も教えてくれなかった、この社会の被害者だと思う」を挙げている。Bさん側とAさんの遺族と男性の間ではすでに和解が成立しているが、Aさんは亡くなるまでの2か月間、大学にアウティング被害の相談をしていたことから、大学側の対応責任を問う民事訴訟を提起。あす判決を迎える。

 最初に打ち明けたのは、授業を受け持っていた教授だった。訴状などによると、Aさんは教授にクラス替えなどの相談をしたりしていたが、教授は「クラス替えをすれば余計大事になる」と話し、最終的には「学生間のトラブル」と結論付け、事案として取り扱わなかったという。

さらにAさんはハラスメント相談室でも4度面談。しかし相談員は「自身が同性愛者であることを受け止めきれていないからアウティングで傷つくのではないか?」と、Aさん自身の問題と認識。男性に恋愛感情などを抱くAさんに対し、心と体の性が一致しない、性同一性障害の医療支援などを行うクリニックの受診を薦めました。同性愛と性同一性障害を混同していたとみられている。

 結果としてアウティングされたことに苦しんでいたAさんの叫びは届かず、大学に相談してから1か月後、Aさんは授業を抜け出し、校舎から転落、亡くなった。

 遺族が追及するのは、Aさんが学校生活で性的指向についてセクハラ被害に遭わないようにするなど、安全に配慮する義務を負う大学の責任だ。リディラバの安部敏樹氏の取材に対し、原告の代理人を務める南弁護士は「日常のコミュニケーションの中で本人が相談してきた内容を踏まえて、自分の身に置き換えて想像すればいくらでも具体的な対応はできたのに、何もしなかった」と指摘。

一方、大学側の主張については「大学の対応には何も問題なかった。今回亡くなったのは、本人が覚悟の上で自分の意思でやったことだ、もうそれだけ。それだけです」と説明する。また、Aさんの遺品の中から"同性愛に関しては悩んではいない"ことを示すメモが見つかったことを挙げ、"同性愛を苦に自殺した"という大学側の説明について「嘘ですよね」と反論した。

 アウティングについて、ゲイであることを公表した上でLGBT支援に取り組むドイツ証券の柳沢正和ディレクターは「一生をかけて守っている秘密が暴露され、人間関係も全てが壊されてしまうと思ったら、恐怖でしかないと思う。

私の場合もライバル企業の人にバラされてしまったこともあったが、そのことを教えてくれたお客さんが、"私は気にしないから"と言ってくれた。そういう信頼関係があるとだいぶ違ってくると思うが、LGBTの人たちは自分の立ち位置や生き方が揺らいでしまうような経験を少なからずしていると思う」と話す。

 その上で、「私も両親も含め、色んな人にカミングアウトして受け入れてもらったが、それが果たして良かったかどうかは正直わからない部分もある。よく、カミングアウトとはバトンを渡す行為だ、という言い方をされる。つまり、本人は自身のセクシュアリティについて何十年もかけて悩んでいるが、カミングアウトされた方は渡されて初めて悩む、そこでヘルプがないのは本当に辛いことだろうと、私も家族や友人を見ていて思った。

Bさんも苦しい状況だったと思う。Bさんの最初の返答は考えに考え抜いた、すごく真摯なものだったと思う。でも、グループLINEへの投稿があまりも唐突で理解に苦しむ。この2か月に一体何があったのか、すごく気になる。その間、Bさんは誰かに相談できたのか。専門家に話すことができたのか。そこにも大学側の環境、対応があれば良かったのではないかと思う」と指摘。

「法科大学院で弁護士を目指している方々にアウティングの自覚がなかったということは、本当にショックだった。日本の法曹界を担う学生には、基礎的な知識としてやっぱり知っておいてほしいと思う。また、一橋大学の相談室のホームページを見ると、今もLGBT関係のホットラインが一つも入っていない。こんな大きな問題になっているにもかかわらず、重大なことだと受け止めていないのではないか。

このような問題には、法律家になるときには必ず勉強するような判例もある。今回が初めてですというのは言い訳にはならないと思う」と厳しく批判した。

 拓殖大学非常勤講師の塚越健司氏は、一橋大学大学院生だった頃、法科大学院に通う学生たちの様子をいつも目にしていたという。「同じ建物で勉強していたが、彼らには24時間365日自習できる部屋もあり、本当に一生懸命勉強していたし、建物の外でも法律の勉強について議論をしているようだった。

そんなめちゃくちゃ濃い関係の中でアウティングしてしまえばどういうことになるか。また、一橋大学の中にはセクシュアリティの問題について専門に研究している人もいるし、学生たちからも声が上がったりしている」と話した。

 裁判を傍聴してきた三輪記子弁護士も「大学側も学生たちが置かれていた状況を知っていたはずだし、合格すればずっと同じ法曹界で生きていくことになる。そんな中での寄って立つ土台を破壊されてしまった。

大学側の対応を見てみると、彼は性別違和で悩んでいたわけではないのに、回答がマッチしていないし、その後の対応も的外れだったと思う。それでも"やるべきことはやった"と主張しているが、Aさんの立場に立って考えるということができていれば、状況は全く違ったと思う。大学側が物を言う人を黙らせることで解決しようとしていなかったか、ということが問われていると思う。

また、教授の認識と大学の運営側の認識にも違いがあったかもしれないし、そこの連携は不可能だったのかという問題もある。B君に対する働きかけや、クラス替え・自習室の席を変えるといった環境づくり、授業を欠席することに対する措置を考えるとか、さまざまな選択肢が考えられたのではないか」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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