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真に子どもを大事にする国を目指して

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去る12日(木)、昨年12月から数えて20回目の「児童の養護と未来を考える議員連盟」を開催、先の船戸結愛ちゃん虐待死事件等を受け、本年5月に「ルポ児童相談所」との著書を出版されたばかりの朝日新聞大久保編集委員から、「児童相談所のあり方について」のお考えを聞く。

その議連会合の冒頭、厚労省子ども家庭局長が、7月6日に都道府県等児童相談所設置自治体に対し、「都道府県社会的養育推進計画の策定要領」(以下「策定要領」)など4種類の局長通知を送付した旨を報告した。
 
今日のこの「独り言」では、極めて大事な問題なので、多少長くなりますが(おそらく、これまでで最長の「独り言」)、ここまでに至った経緯と私の考えについて、まとめて説明させて頂きたい。
 
親からの虐待などを受け、保護を必要とする子どもが昨今増加の一途だが、そうした子どもを救うはずの児童福祉法が長らく十分機能してこなかった。終戦直後、道にあふれる浮浪児、すなわち戦災孤児を収容する発想で昭和22年に制定された。しかし、その後の社会構造の変化に伴う家族機能の変容などから、その制度疲労が指摘されてきた。そうした中、私が厚生労働大臣在任中の平成28年、全会一致で、戦後初めての抜本改正を行った。
 
「子どもの権利」、「子どもの最善の利益優先原則」、「家庭養育優先原則」等の新たな理念を導入し、29年には司法関与を強化、さらにそれら改正法の理念実現のために昨年8月には、いくつかの数値目標も含めた「新しい社会的養育ビジョン」(以下「ビジョン」)を取りまとめた。
 
各都道府県は、旧児童福祉法の下で、それぞれ児童養護に関する計画を作成していたが、児童福祉法改正を受けて既存の計画を全面的に見直す必要がある。その見直しをどのような考えに基づいて行うべきかのガイドラインを示すのが厚労省の「策定要領」だ。
 
昨年12月22日、社会保障審議会児童部会「社会的養育専門委員会」に示された厚労省当初案は、改正児童福祉法における新たな理念や「ビジョン」の考え方から大きく乖離したもので、到底受け入れられない内容であった。戦後初めての抜本的な法改正が全会一致で行われたにも拘わらず、そこに示された新たな理念を踏まえない、これまでの路線を大きく変えようとはしない「策定要領(案)」には大きな失望を覚えた。マスコミでも、「厚労省、都道府県に数値目標要求せず」というように、「ビジョン」で示された里親委託率等の数値目標の都道府県計画における設定を不要、との後ろ向きな部分に関する報道ばかりだった。

以来8か月間近く、私たちは改正児福法と「ビジョン」に則って徹底的に戦った。厚労省や一部議員は、児童養護施設の立場や児童相談所の現場への気遣いなのか、なかなか考えを変えようとしなかった。私たちは、厚労省子ども家庭局との間において、あるいは、議連の議論の場において、長く、熱い議論を行ってきた。
 
しかし、議連所属の多くの国会議員、国会外のこの問題の関係者、関心を持つ皆さま、マスコミ関係者などの粘り強い主張と応援があり、なおかつ特記すべきは、船戸結愛ちゃんの死を受けて人々の心に等しく沸き起こった、これ以上の児童虐待は許せない、との国民的な熱い思いの後押しがあり、厚労省から先週発出された「策定要領」は、当初とは様変わりとなり、改正児童福祉法や「ビジョン」の理念や考え方にほぼ則ったものとなったのだ。もちろん、都道府県は里親等委託率の数値目標、その期限を明確に設定し、国はその進捗状況を毎年フォロー、評価し、公表もされることとなった。
 
この半年間余り、私は自らのエネルギーのおそらく半分程度をこの問題に注ぐほどの長くて険しい道のりだったが、全会一致で成立した立法府の意志が貫徹され、戦後初めて、日本を真に子どもを大事にする国への本格的な脱皮とも言うべき大きな一歩を踏み出すこととなったことを嬉しく思う。

様々な論点があったが、最後まで厚労省などとの間で意見の相違があったのは、主に以下の2点。

最大の争点は、上記の通り、里親等委託率に関する数値目標とその期限の設定の是非、であった。改正児童福祉法が「家庭養育優先原則」を明確に定めたことを受け、「ビジョン」では、「乳幼児に関し、3歳未満は概ね5年以内に、就学前までの幼児は概ね7年以内に里親等委託率75%以上」の実現を目指し、「学童期以降では里親等委託率50%以上を概ね10年以内」を実現する数値目標が提案されている。

これに対し、厚労省の当初案では「国全体としては、できるだけ早く75%、50%以上を実現できるよう、都道府県を支援する」との極めて曖昧な表現にとどまり、都道府県には目標も期限も要求しない、との体たらく振り。立法府の作った法律を粛々と執行し、その目指すところの実現に向け、専ら努力するのが行政であるにも拘らず、だ。
 
平成28年度末の全国平均の里親等委託率が18.3%であることから75%達成は土台無理、との声や、地域性を無視した、全国一律の数値目標設定は受け入れられない、と言った、里親の増加によって入所する子どもが減るかもしれない、との危機感を募らせた児童養護施設や、一層繁忙を極めるであろう児童相談所の現場の声などをバックにした、と思われる慎重論が議連でも繰り返された。
 

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