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なぜサウジアラビアは中国に急接近するか-背に腹はかえられない3つの理由

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アメリカへの牽制

 第二に、中国に接近することで、アメリカに圧力を加えることだ。

 トランプ大統領は歴代のアメリカ大統領のなかでもサウジアラビアとの関係を重視している。そのため、カショギ事件に関してもムハンマド皇太子を擁護し続けてきた。

 しかし、アメリカ国内ではもともとアルカイダなどイスラーム過激派とサウジアラビア政府の結びつきへの警戒がある。さらに、専制君主制のもとで人権が制約されることへの拒絶反応も強い。とりわけ、厳格なイスラーム体制のもと、女性の社会進出が制限されることへの批判は根深い。

 この背景のもと、カショギ事件が引き金となって、連邦議会では民主党だけでなく共和党の間からも、サウジアラビアとの関係見直し、とりわけ武器輸出のキャンセルを主張する声が強くなった。

 アメリカの外交は大統領の専管事項と思われがちだが、実際には議会が大統領にブレーキをかけたり、逆に後押しする法律を作ることは珍しくない(例えば、かつての日米貿易摩擦を主導したのは大統領よりむしろ議会だった)。

 この点で注目すべきは、サウジ政府が2月24日、駐アメリカ大使にリーマ王女を任命したことだ。リーマ王女は長く駐アメリカ大使を務めたバンダル・ビン・スルタン王子の娘で、アメリカ政界に太いパイプをもつ。とはいえ、サウジアラビアの大使に女性が就任するのは初めてのことで、このタイミングでのリーマ王女の起用は、「サウジが変わった」というPR効果を意識したものとみてよい。

 このような懐柔策を用いる一方で、サウジが中国に接近することは、中国への警戒感では共和党に劣らない民主党にも「あまりサウジを追い込みすぎるとまずい」と思わせる手段となる。その場合、アメリカはカショギ事件をうやむやにしやすくなる。

中東での権力闘争への布石

 サウジが中国に急接近する第三の理由として、中東での権力闘争を有利に運ぶことがあげられる。

 サウジにとっての宿敵はイランだが、最近ではトルコとの対立も目立つ。サウジはこれら両国と、シリア内戦やカタール断交をめぐってつばぜり合いを演じてきた(カショギ事件の究明にトルコ政府が熱心なのはこの延長線上にある)が、この構図のなかで中国とサウジは決して友好的な関係になかった。

 1979年のイスラーム革命後、イランは反米で共通する共産主義陣営との協力を進め、中国とも友好関係を築いてきた。また、中国は2015年のイラン核合意にも参加している。

 一方、中国とトルコは新疆ウイグル自治区での(トルコ系の)ウイグル人弾圧をめぐって対立してきた。しかし、その一方で、アメリカとの関係がギクシャクするトルコのエルドアン大統領は、2017年の「一帯一路」国際会議にも出席しており、経済面での協力には熱心だ。また、中国はサウジアラビアが経済封鎖するカタールとの取り引きも急速に増やしている。

リラ急落で中国に急接近するトルコ-「制裁を受ける反米国家連合」は生まれるか

 折しも、イランが支援するシリアのアサド政権が優位を保ったままで、シリア内戦は終結に近づきつつある。また、アメリカはイラン核合意を破棄して、イランへの締め付けを強化している。そして、トルコがカショギ事件をテコにサウジを追い詰めようとしている。

 このタイミングで、サウジアラビアが中国に接近したことにより、中国はこれまでの中東政策を微調整する必要に迫られる。言い換えると、サウジは中国にとって優先度の高い「一帯一路」を承認することで、中国のイランやトルコへのバックアップを減らそうとしているのである。

 こうしてみたとき、中国にサウジアラビアにとって、お互いに接近することにはメリットがある。現状では一時的な協力かもしれないが、トランプ政権のもとで米中対立やイラン包囲網が長期化すれば、サウジと中国の結びつきも恒常化する可能性は大きく、その場合ユーラシアの地政学的条件は緩やかに変化し続けるとみられるのである。

※Yahoo!ニュースからの転載

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