- 2019年02月25日 16:03
【読書感想】日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年
2/2ゴーンがまず取り組んだのがクロスファンクショナルチーム(CFT)の設置だった。日本語に訳すと機能横断チームとなる。日産が経営危機に陥った要因の一つが縦割り組織の弊害だった。それまでの日産は、自動車メーカーにおける主要機能である、開発、生産、購買、販売といった部門がそれぞれ、「車が売れないのは技術が悪いからだ」「いや、コストが高くて営業力がないからだ」などと責任を押し付け合ってきた。
ゴーンが来るまでの日産の経営トップは、部門間の利害関係を調整し全体最適を図る能力に欠けていたと言わざるを得ない。それが原因で意思決定と実行が遅れた。こうした風土にゴーンはメスを入れることにしたのだ。
「財務コスト」「購買」「研究開発」「製造」「組織と意思決定のプロセス」「販売・マーケティング」「一般管理費」「車種削減」「事業の発展」といった解決されるべき課題ごとに9つのCFTを設置。「パイロット」と呼ばれるチームリーダーはほとんど40代の課長クラスに任せた。各チームは関係する複数の部門から人材を集めて構成した。部門最適ではなく、全体最適を目指したのである。後に発表される「リバイバルプラン」の原案は、このCFTが作った。当時を知る関係者はこう語る。
「日産には上層部に行けば行くほど派閥争いがあって、経済合理性に基づく判断ではなく、人間関係に影響された意思決定がおこなわれる傾向があった。競合他社と向き合って現場の最前線で仕事をしている30代や40代からしてみれば、やるべき課題は見えていたが、上層部が改革案を採用しないか、その改革案を骨抜きにしてしまう。中でも若手が怒っていたのは、自分たちが考えたアイデアを『課長ごときが』と言って無視した挙句、高い金を払って外資系コンサルタントに作らせた机上の空論にしか見えない計画を重宝していたことでした」
ゴーンは日産のこうした「病巣」を見抜いて、あえて「課長ごとき」に任せたのである。後の人事でもゴーンは、現場の指揮官ともいえる50代の部長クラスを、入社年次で5~6年の階層ごとごっそり辞めさせるか、関連企業に追いやるかなどして、優秀な若手を引き上げられる素地を作った。
当時、筆者は「パイロット」の一人にインタビューをしたことがある。
「フランス料理を食べながらゴーンと話し合いをしましたが、矢継ぎ早の指示で料理が喉を通りませんでした。世界の企業の事例を挙げながら、こんな取り組みを日産でもできないだろうか、といった具合で、自分で多くの指標を持ちながら改革のネタをみずから提示する姿が印象的でした。これがプロの経営者なのかと思いました。
このCFTはゴーン改革の代名詞の一つにもなったし、企業における課題やプロジェクトを進めていくうえで、各部門や各地域が多面的に議論、チェックする「クロスファンクショナル」という発想は徐々に日産の企業文化になっていった。
ゴーンさんの改革により、倒産寸前といわれていた日産は、わずか1年間でV字回復を成し遂げ、高収益企業となっていくことができたのです。
少なくとも、危機を迎えていた時代の日産には、ゴーン改革が必要だった。
とはいえ、コストカットを極めていけば、現場では人手に余裕がなくなってくるし、研究開発が疎かにされがちにもなってきます。
それでも、ゴーンさんは、「コスカット重視」から、なかなか意識を変えることができなかった。
実績を出していない外国人の社員や幹部が優遇されることで、日本人の社員には不満も蓄積していきました。
ものすごくうまくいった手法だからこそ、それを捨てることができなかったし、独裁的な権力を握り、苦言を呈する人たちを遠ざけて、イエスマンばかりを周囲に集めていくのです。
そして、会社の資産の私物化もひどくなっていきました。
著者は、ゴーン会長を告発し、追い落とした側に対しても、「本来ならば、まず検察ありき、ではなくて、会社の内部からの動議で解任し、その後、司法の判断を仰ぐべきではなかったのか」と述べています。
それができないくらい、ゴーン会長の権力が強かった、ということではあるのでしょうけど、ゴーン会長の意のままに動くことで上層部にのぼりつめた人たちに罪はないのか?と僕も考えずにはいられません。
この本を読んでいると、「カルロス・ゴーンという人は、晩節を汚してしまったなあ」と感じます。
「権力は腐敗する」というのは、本当だよなあ、とも。
日産はゴーンによって見事に甦った。だが、再建を果たして成長軌道に乗った今、日産がサステナブル(持続的)に発展していくためには、コストカットを中心とした短期的な収益を重視するゴーンの経営手法は、もはや通じなくなっていた。それこそが日産の最大課題であり、ゴーンの限界でもあった。端的に言ってしまえば、ゴーンの日産の経営者としての「賞味期限」は完全に切れていたのだ。
カルロス・ゴーンという人は、あのときの日産には、間違いなく必要不可欠だったのです。
ただ、今の日産にとっては、「老害」でしかなくなってしまった。
もう少し早く日産の権力の座から降りていれば、伝説のカリスマ経営者であり続けることができたのに。
自分の賞味期限は、自分自身ではわからないのが人間というものなんでしょうね。どんなに優秀な人であっても。
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