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お客さんを満足させようとして、そこで止まってしまうメディアたち

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2月17日に、タレントのフィフィさんがツイートをした内容とその取り上げられ方が問題になっている。(*1)(*2)

フィフィさんは、千葉県野田市で発生した小学4年生の女児が虐待で死亡したと見られる事件を念頭において、立憲民主党所属の参議院議員である蓮舫氏に向け「私は問いたい」として、「なぜ平成16年の児童虐待防止法改正に反対した蓮舫議員が、今回の虐待死で現政権を責める事ができるのか」と、「あなたは本当に国民の側に向いているのか。同じ親の立場として問いたい」などと、情緒たっぷりのツイートを行った。

しかし調べてみると、蓮舫氏が国会議員として初当選したのは児童虐待防止法の改正の後であり、また改正児童虐待防止法についても、蓮舫氏は賛成票を投じていた。

つまり、このツイートは、さも今回の虐待死が、蓮舫氏の反対票によって引き起こされたかのように印象づけるために、事実を確認せずに行われたデマツイートだったのである。

さて、フィフィさんはタレントとしてニュース番組でコメンテーターをしているが、知識人というよりは「主要なお客さんが喜びそうなことを主張するお仕事」であり、今回のツイートもファンサービスの一環であると考えられる。

今回デマの矛先となった蓮舫氏もそうだが、他にも社民党の福島みずほ氏や、立憲民主党の辻元清美氏といったメンツは、フィフィさんのツイートを喜ぶような人達からは「でたらめな内容で叩いても構わない安牌」として扱われている。

彼女らについてデマを書いたとして、それで盛り上がればOKだし、またデマだと看破されたとしても「(彼女らは)日頃の行いが悪いから、疑われても仕方ない」という言い分でフォローが入る。

フィフィさんが少し立ち止まって確認すればわかる程度のことも調べずにツイートを行ったのも、そうした馴れ合いの状況があったからだろう。

さて、本来であればフィフィさんと彼女のお客さんという、両者間の馴れ合いで終わる話であったはずが、こうして問題視されるに至ってしまったのはなぜか。

その理由は、このフィフィさんの通常運転のツイートを、「フィフィさんがこう主張している」という内容の記事にして、スポーツ報知と日刊スポーツが配信したからである。

この事によって、フィフィさんに内容も確認せずにデマを流したという事実が、多くの人の目に止まることになったのである。

その記事は当初、事実を無視したフィフィさんの主張を一方的に事実であるかのように伝えてしまったために、こうして間違いが指摘されなければ、蓮舫氏に対する誤った認識を流布する可能性が強かった。

デマを流したフィフィさんが批判されたのは当然としても、一介のタレントの発言を事実確認もせずに、記事を垂れ流すメディアは酷いではないか、という批判が巻き起こったのである。

例えばこれが政治学者を名乗り、世間からもそう認められている人の主張であれば、それを記事化する人がチェックせずに流したとしても、その罪は薄かろう。当然、事実確認の責任はその政治学者に多くが帰するといえる。

しかし、ニュース番組などでコメントを数多くしているとは言え、フィフィさんは一介のタレントに過ぎない。こうした人が正しくないことを言っている可能性は少ないとは言えず、記事にするのであれば、最低限の事実確認は必要だろう。そしてその責任は当然、記事を書いた新聞社に帰するはずである。

さて、ここまではBuzzFeedの記事(*1)(*2)でも大方触れられていることである。僕が本当に論じたいのはここから先だ。

BuzzFeedの記事では「スポーツ報知」「日刊スポーツ」という、フィフィさんの個人的なツイートをわざわざ記事にしてしまったメディアの他に「朝日新聞」の名前が入っている。

では、朝日新聞は今回の件で、どのように関与したのであろうか。

それは記事をよく読めばわかるのだが、朝日新聞デジタルにフィフィさんのツイート内容を報じる記事が掲載されたというが、それは「日刊スポーツの記事」なのである。

つまり、朝日新聞デジタルには日刊スポーツの記事も配信されており、日刊スポーツが記事を配信すれば、それが自動的に朝日新聞デジタルに掲載されるようになっていた。

このことをBuzzFeedでは大見出しに「フィフィさんの蓮舫議員に関する誤情報、スポーツ紙や朝日も配信 「事実関係を確認せず」(*1)」と朝日の名前を使ったり、また別のBuzzFeedの記事では中見出しに「日刊スポーツ、朝日新聞などが紹介(*2)」などと、さも朝日新聞がフィフィさんのツイートを記事化したかのように報じている。

だが、事実としてはあくまでもフィフィさんのツイートを記事化したのはスポーツ報知と日刊スポーツであり、朝日新聞デジタルは日刊スポーツの記事を掲載して配信したにすぎないのである。

先程、政治学者とタレントの例えで書いたのと同じように、もし朝日新聞デジタルがタレントのツイートを記事化したのであれば、責任が帰するのは朝日新聞デジタルだろう。

しかし、朝日新聞デジタルに掲載された記事を書いたのは、あくまでも日刊スポーツなのである。この記事はプロの書いたものなのだから、記事の内容に関する責任は日刊スポーツにあるのである。

スポーツ報知と日刊スポーツを同列に並べて批判するのは当たり前である一方で、記事を配信しただけの朝日新聞デジタルそれと同じ列に並べて批判するのは、記事に対する責任を考えればフェアではないといえよう。

さらに話を進めて「配信した朝日新聞デジタルの罪もあるだろう」という批判も、当然考えられる。

契約による自動配信であったとしても、その内容をチェックしてふさわしくない記事を排除できなかったのは、朝日新聞デジタルの責任である。そうした意見が出てくるのは当たり前である。

しかし、それならば、スポーツ報知や日刊スポーツの記事を配信したネットメディアを、朝日新聞デジタルと同じように批判する必要があるだろう。

今回、朝日新聞デジタル以外に、スポーツ報知や日刊スポーツの記事を配信したネットメディアは存在しなかったのだろうか?

さて、最初に僕がフィフィさんの記事を見たのは、しかもフィフィさんのツイートの内容に嫌疑があるというニュースに変わる前、まだ単純にフィフィさんの言い分を垂れ流した記事を見たのは、スポーツ報知や日刊スポーツのWebサイトではなく、また朝日新聞デジタルでも無かった。

それは「Yahoo!ニュース」に掲載されたスポーツ報知の記事だったのである。

現在は消されてしまっているが、ツイートをしたYahoo!ニュースのURLが、僕の見た最初の記事である。(*3)

政治や社会、エンターテインメントに関わらず、あらゆる記事配信において、最も拡散力が強いと言われているのが「Yahoo!ニュース」である。(*4<)

Web媒体で仕事をしたことがある人なら、Yahoo!ニュースのトピックスに掲載されることで、どれだけ記事のPVが跳ね上がるかは知っているはずである。

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