記事

村木厚子さんが上げた静かな声が、検察の「正義の壁」を穿つ日

2/2
検証報告では、逮捕、起訴、公判遂行の各段階における判断の誤りについて率直に認めていただいたものの、そうした取り調べの実態、すなわち、多数の検事により事実と異なる一定のストーリーに沿った調書が大量に作成された過程そのものは検証されませんでした。

取り調べの実態解明には、容疑者や参考人などの関係者から事情を聴く必要があったと思います。私自身も検証への協力は惜しまないつもりでしたが、最高検からの接触は一切なく、事情を説明する機会もなかったことを非常に残念に思っています。検察官からの事情聴取を中心に検証が行われたのであれば、検証が不十分なもの、偏ったものになっているのではないかという疑念をぬぐえません。

また、大坪弘道特捜部長(当時)や前田恒彦検事(同)の仕事の進め方に大きな問題があったことは検証結果からよく分かりましたが、そうした幹部を育ててきた組織の風土・文化、そうした仕事の進め方を許してきた組織の機能の在り方などが十分検証されていないように感じました。こうした点の解明について外部の方々の『検察の在り方検討会議』に大きな期待を寄せています。

また、自らも訴訟という手段を通じこれに関わっていくことを決めました。国民からの信頼を取り戻すための検察のこれからの努力をしっかり見守っていきたいと思います」

村木さんの静かなコメントの中で驚かされたのは、最高検が今回の検証報告作成にあたり、最も中心的な当事者である村木さんに対して聴取を全く行っていない事実が明かされていたことである。最高検が今回の問題の本質解明に及び腰であり、小手先の改善策でお茶を濁そうとしていることはこのことだけをとっても明らかである。

検察の身内の犯罪を当の検察組織が調べられるのか?という声が、今回の検証作業にあたっては、当初から存在していたが、「検察組織は捜査のプロであり、そのプロを調べるのはプロである最高検がやらなければ不可能」というような議論を特捜OBが新聞・テレビマスコミに出てまき散らしていたが、実態はといえば、見てのとおり、村木さんに対する徹底的な事情聴取さえ行われていないという体たらくだ。これで「プロ」とは聞いて呆れる、ちゃんちゃらおかしいとしかいいようがない。

「検察の正義」そのものが問われている

検察、特に特捜部は、過去においてロッキード事件に代表される政治家の疑獄事件を手がけ、この国の「正義」の担い手として国民の喝采を浴びてきた。
しかし、あえていうなら、今問われているのはその「検察の正義」そのものである。
リクルート事件、ライブドア事件、小沢一郎の陸山会政治資金事件など、近年、特捜が主導し捜査・立件した事件を巡り、その強引ともいえる捜査手法や社会の実態とは余りにかけ離れた立件の姿勢に対して批判が巻き起こっている。そうした批判の声は、まだ社会全体の声にはなっていないが、今回の村木さんの厚生労働省文書偽造事件をきっかけに、私たちが行っている運動も含めバラバラだった流れがひとつの奔流となり、現在の状況を根こそぎ変えてしまう力になるだろうと確信している。

この国の人々も何事かあらば水戸黄門のように何処からか正義の味方が現れて巨悪を正してくれるという幻想からは、そろそろ目を覚ました方がいい。というのも、正義とは「○○の正義」というように、誰かの専有物ではなく、市民の絶えざる自問と対話の中からしか生まれてこないからだ。

村木厚子さんが、静かに声を上げたそのことこそが、この国の新たな正義のあり方を模索する第一歩になると信じている。

(カトラーTwitter:  @katoler_genron

トピックス

ランキング

  1. 1

    昭和の悪習 忘年会が絶滅する日

    かさこ

  2. 2

    早慶はいずれ「慶應一人勝ち」に

    内藤忍

  3. 3

    「Mr.慶應」性犯罪で6度目の逮捕

    渡邉裕二

  4. 4

    医師が語る現状「医療崩壊ない」

    名月論

  5. 5

    再び不倫 宮崎謙介元議員を直撃

    文春オンライン

  6. 6

    宗男氏 桜疑惑めぐる報道に苦言

    鈴木宗男

  7. 7

    感染増の原因はGoToだけではない

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  8. 8

    医師 GoTo自粛要請は過剰な対応

    中村ゆきつぐ

  9. 9

    テレビ劣化させる正義クレーマー

    放送作家の徹夜は2日まで

  10. 10

    貯金がない…京都市を襲った悲劇

    PRESIDENT Online

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。