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北方領土「二島返還」合意で、衆参ダブル選挙に突入なのか~田原総一朗インタビュー

日本にとって長年の課題だった「北方領土問題」がもしかしたら、大きく動く可能性がでてきた。北方領土返還の前提となる平和条約の締結に向けて、日本とロシアの双方が歩み寄ろうとしているからだ。安倍首相とプーチン大統領の会談が今年1月に開催され、6月にも日ロ首脳会談が予定されている。両国の交渉の行方はまだ予断を許さないが、田原総一朗さんはどう見ているのか。北方領土をめぐる外交と国内の政治に与える影響について、話を聞いた。【田野幸伸・亀松太郎】

「四島一括返還」か、「二島返還+α」か

AP

北方領土の問題について、マスコミの論調をみると、もともと日本は「四島一括返還」を求めていたのに、安倍首相が「二島返還+α」と言うのはおかしい、と批判が多い。こんなに弱気になったら一島も返ってこないのではないか、と。

北方領土について最初に交渉した首相は、鳩山一郎だ。1956年にソ連(当時)を訪問して、日ソ共同宣言に署名した。この共同宣言では、平和条約の締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す、と明記している。つまり、この時点では「二島返還+α」だったのだ。

その後、冷戦が激しくなり、日本とソ連の平和条約が結ばれないまま、北方領土の具体的な返還に向けた動きは進展しなかった。しかしソ連崩壊後、北方領土返還に向けた機運が再び高まる。2001年の森喜朗首相とプーチン大統領がイルクーツク声明に署名したが、このときの森首相の提案もやはり、「二島返還+α」だった。

ところが、その後の小泉政権で登用された田中真紀子外相が「四島一括返還」を主張し、ロシアを怒らせた。ロシアからすれば、「日本のほうから交渉を壊した」というわけだ。

その一方で、プーチン大統領の信頼が厚く、森首相とプーチン大統領の間を仲介した鈴木宗男氏とその右腕の佐藤優氏が逮捕されるという事件が起きた。このころ急に「四島一括返還論」の論調が強くなったといえる。

しかし、半世紀前から日本政府の本音は「二島返還+α」だったので、安倍首相がロシアに対して「二島返還+α」を提案するのも自然なことだ。

そして、昨年11月のシンガポールでの安倍・プーチン会談で、北方領土返還の前提となる「平和条約」締結に向けた交渉を加速するということで合意した。安倍首相は「二島返還+αならば、北方領土は返ってくる」と自信を深めたはずだ。

「二島返還」で合意できれば「衆参ダブル選挙」も

そのとき、僕は北方領土問題に詳しい事情通から話を聞いたのだが、その事情通はこう言った。

「日米安保条約がある以上、もし北方領土が日本に返還されると、米軍が駐留することになる。しかしそれは、ロシアにとって好ましくない事態だ。安倍さんは、米軍を北方領土に駐留させないということをプーチンに約束してほしい」

このことは、安倍首相に伝えた。おそらく、安倍首相はこの点についてアメリカのトランプ大統領と話し合いをしたのではないかと思う。だからこそ、シンガポールでかなり強気な姿勢が示せたのではないか。

ところが、その後、ロシアの態度が変わった。ラブロフ外相と河野太郎外相の会談で、ロシア側が非常に冷たい態度を示した。今年の1月の安倍・プーチン会談でも、2人の口から「北方領土」という言葉は出てこなかった。

これはどう見ればいいのか。日本の論調は非常に悲観的だ。安倍首相が「二島返還+α」という方針を示したからダメになったという声もある。実際には、北方領土返還は厳しいという見方と、うまくいくのではないかという見方の両方がある。

もしうまくいくとすれば、「二島返還+α」しかない。日本は建前としては「四島返還」という姿勢なので、もし「二島返還+α」になるとすれば、安倍首相は、国民の信を問うために衆議院を解散するのではないか、とみられている。つまり、参議院とのダブル選挙だ。

安倍首相とプーチン大統領は6月に再び、会談することになっている。これがうまくいったらダブル選挙という説と、日ロ首脳会談はうまくいかないという説。この2つの説がいまは五分五分というところだ。

小沢一郎の「3度目の挑戦」

AP

衆参ダブル選挙の可能性が指摘される中で、野党の動きはどうかというと、いまひとつ力強さに欠ける。野党のリーダーたちは誰も、自民党から政権を奪取しようという野心や意欲を持っていないからだ。

唯一、いまも政権を奪取しようという野心と意欲があるのは、自由党の小沢一郎代表だけといえる。これまで、長く続いた自民党政権に風穴をあける「非自民政権」が2度できている。1回目は細川連立政権、2回目は民主党政権だが、2度とも絵を描いたのは小沢一郎だ。そして、彼は「3度目の挑戦」をしたいと思っている。

実は昨年の春、僕は立憲民主党代表の枝野幸男に、小沢一郎を会わせた。2人はあまり関係が良くなかったが、政権奪取をしようという野心と意欲を持っているのは小沢一郎だけだから、枝野に会ってもらった。

ところが、その後の動きを見ていると、2人の話はうまくまとまらなかったようだ。結局、小沢一郎は、国民民主党代表の玉木雄一郎と組むことを選んだ。

ただ、もし自民党が「衆参ダブル選挙」を仕掛けてきたら、枝野も口説くことができる。小沢一郎はそう考えている。彼はそういう男だ。だから、自民党がダブル選挙を仕掛けてくれたほうがむしろ面白いと思っているのだ。

細野豪志の「復活」はあるのか

共同通信社

政界の動きといえば、民進党を離れ、希望の党結成に参加したあと、無所属になった細野豪志が自民党の二階派に特別会員として入会した。

実は先週、細野豪志が「どうしても会ってほしい」というので、会って話をした。

彼は、僕の母校である彦根東高校の後輩ということで、かねてから親交がある。民主党で官房長官を務めた仙谷由人は細野のことを非常に買っていて、「ゆくゆくは党の代表になるべきだ」と言っていた。僕もある時期はそう思っていたが、それは実現せず、細野豪志は党を離れることになった。

安倍政権が安保法制を成立させ、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をしたときのことだ。僕は、民主党の幹部だった枝野や細野、前原誠司に「もし君たちが政権政党を本気で目指すなら、ただ反対だけするな。対案出せ」と言った。

彼らは憲法改正を視野に入れた対案を作ったが、民主党の中でまとまらなかった。結局、共産党に引っ張られて、「とにかく反対」となった。そんなこともあり、細野豪志は民主党を離党することになった。

その後、希望の党の結成と失敗など、いろいろあったわけだが、政治家というのは難しいものだと思う。

細野豪志の自民党・二階派入りに対しては、野党はもちろん、自民党の内部でも相当な批判がある。国民の中にも批判が強い。彼と会ったとき、僕はこう伝えた。

「これから何をしていくのか。国民が納得できるような言葉をきちんと打ち出すべきだ」

彼はうなずいていたが、いったん失われた信頼を再び勝ち取るのは困難だ。今後の細野豪志の言動に注目していきたい。

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