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日本のプライマリーバランスはなぜ赤字になったのか〜平成時代の税収徹底検証


 6日付けの大新聞社説は予算成立を受けての相変わらずのメディアスクラム状態です。

【朝日社説】消費増税と政治―言い訳やめて、本質論を

http://www.asahi.com/paper/editorial.html

【読売社説】12年度予算成立 「赤字国債」で野党と接点探れ

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120405-OYT1T01284.htm

【毎日社説】後半国会 時間を無駄に使うな

http://mainichi.jp/opinion/news/20120406k0000m070123000c3.html

【産経社説】予算成立 「無責任体質」を払拭せよ

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120406/plc12040603070007-n1.htm

【日経社説】予算成立だけでなく財源にも責任果たせ

http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE6E2E0E2EAE1E0E2E2E4E2E6E0E2E3E08297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D


 どの社説も同じ論調ですが、代表して日経社説の結語から。

 今通常国会の最大の焦点は消費増税関連法案の行方である。たなざらしにすることは許されない。早期成立に向けた与野党の協力がここでも必要だ。予算の成立でひと息ついている場合ではない。


 予算の成立でひと息ついている場合ではない、早く消費増税法案を成立させよ、とのことであります。

 このデフレ経済のもとで増税などしたら庶民の生活は本当に追い詰められます。

 増税よりまずデフレ脱却を目指すことがなによりも重要です、財政規律は経済が立ち直り、税収が伸び始めたとき、改めて検討すればいいのです。

 今回は今年度予算の具体的数値から平成23年間での税収の推移まで、徹底的に正確な数値で検証し、政府やマスメディアが進めようとしているデフレ経済下の消費税増税政策がいかに出鱈目なのかを明らかにしたいです。

 まず、今回成立した予算フレームを見てみましょう。

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 予算規模90兆3339億、歳入を見ていると税収は半分に満たない42兆3460億であり、税収を上回る公債金すなわち国債つまり借金で成り立っていることが分かります。また、歳出でも21兆9442億が国債費、すなわち借金返済に回っています。

 単年度の赤字(プライマリーバランス)は歳入・歳出からそれぞれ借金関係を取り除けば、その姿を現します。

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 単年度でも22兆2998億の赤字なわけです。

 消費税を1%UPすると2兆ほど税収が増えると言われていますが、政府が目指す3%や5%の消費税増税では、単年度の赤字ですらまったく解消されないことがわかります、消費税増税分は政府案では社会保障費の財源だと庶民受けを狙っていますが、ぜんぜん足りないわけです。

 さてここで税収42兆3460億の内訳に注目してみましょう。

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■表1:平成24年度租税及び印紙収入概算

税目概算額(億円)
所得税134,910
消費税104,230
法人税88,080
揮発油税26,110
相続税14,300
酒税13,390
印紙収入10,320
たばこ税9,450
関税9,100
石油石炭税5,460
自動車重量税4,170
電源開発促進税3,290
航空機燃料税440
石油ガス税110
とん税100
一般会計分計423,460

http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/seifuan24/yosan016.pdf

 平成24年度、税収42兆3460億の内訳は、所得税13兆4910億、消費税10兆4230億、法人税8兆8080億、その他税収9兆6240億となっています。

 所得税、消費税、法人税の3税で全体の79%を占めていることがわかります。

 それにしても単年度でも22兆2998億の赤字になるほど、なぜ税収は減少してしまったのでしょうか。

 次に、時代をさかのぼり平成23年間でいったいこの国の税収はどう推移してきたのか検証していきます。

 ・・・

 みなさんご存知の通り、消費税は平成元年4月1日に3%で成立し、平成7年4月1日に5%に増税されています。

 ならば平成時代の各税収推移を徹底的に正確な数値で検証していきましょう。

 なおデータソースは以下の国税庁及び総務省の統計データを洗い出し、再編集したものです。

 平成元~22年度は確定ベースの、平成23と24年度は概算ベースの値を使用しています。

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_pdf/H01/T_H01.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_pdf/H02/T_H02.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_pdf/H03/T_H03.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_pdf/H04/T_H04.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_pdf/H05/T_H05.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_pdf/H06/T_H06.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_pdf/H07/T_H07.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_pdf/H08/T_H08.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_pdf/H09/T_H09.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei_pdf/H10/T_H10.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo1999/menu/01.htm

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo2000/menu/01.htm

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo2001/01.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo2002/01.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo2003/01.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo2004/01.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo2005/01.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo2006/gaiyo.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo2007/pdf/gaiyo.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo2008/pdf/gaiyo.pdf

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/gaiyo2009/pdf/gaiyou.pdf

http://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/account/h22.htm

http://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/budget_explanation/008a23a.pdf

http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/seifuan24/yosan016.pdf


■表2:平成時代の税収推移

年度所得税法人税消費税その他合計
平成元年213,815189,93332,699112,770549,218
平成2年259,955183,83646,227111,040601,059
平成3年267,494165,95149,763115,047598,204
平成4年232,313137,18652,409122,594544,453
平成5年236,865121,37955,865127,155541,262
平成6年204,176123,63156,315126,179510,300
平成7年195,060137,35457,901128,903519,308
平成8年189,650144,83360,568125,550520,601
平成9年191,827134,75493,047119,787539,415
平成10年169,962114,232100,744109,382494,319
平成11年169,038107,951104,471105,455472,345
平成12年187,889117,47298,221103,542507,125
平成13年178,065102,57897,671101,168479,481
平成14年148,12395,23498,11596,860438,332
平成15年139,146101,15297,12895,398432,824
平成16年146,705114,43799,74395,005455,890
平成17年155,859132,736105,83496,226490,654
平成18年140,541149,633104,63396,308490,691
平成19年160,800147,444102,71999,219510,182
平成20年149,851100,10699,68993,027442,673
平成21年129,13963,56498,07596,553387,331
平成22年129,84489,677100,33395,014414,868
平成23年134,90077,920101,99094,460409,270
平成24年134,91088,080104,23096,240423,460

 グラフ化してみます。

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 グラフの「税収計」の推移に注目してください。

 この平成時代、消費税を平成元年に3%で新設し、平成7年に5%に増税したにもかかわらず、この23年間ほぼ一貫して税収が下がってきているのが理解できます。

 平成2年の60兆1059億をピークに、増税した平成7年には51兆9308億に、そしてとうとう今年度は42兆3460億まで落ち込んでいます。

 特に消費税を増税した平成7年度以降本年度まで、一度も平成7年度の税収を越えることはできていません。

 まとめると下図のとおりです。

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 上図で赤線で示しましたが、少なくとも過去において、長期デフレ経済のもとで消費税を増税しても税収は減り続けていることがわかります。

 過去の数値で検証する限り、消費税増税は増収には繋がっていないことがわかります。

 税収増どころか税収減が止まらなかったわけです。

 それにしても平成時代にピークの60兆から40兆台と税収が三分の二近くにまで落ち込んでしまったのは、いくらデフレ経済とはいえいかなる理由が考えられるのでしょうか。

 最後にこの平成時代に起こった破滅的ともいえる税収減について検証いたします。

 ・・・

 平成時代にピークの60兆から40兆台と税収が三分の二近くにまで落ち込んでしまったのはなぜでしょうか、名目GDPの動きと対比してみましょう。

■表3:平成時代の税収と名目GDPの推移

年度税収計(億)GDP(10億)
平成元年549,218410,122.20
平成2年601,059442,781.00
平成3年598,204469,421.90
平成4年544,453480,782.80
平成5年541,262483,711.80
平成6年510,300488,450.30
平成7年519,308495,165.50
平成8年520,601505,011.80
平成9年539,415515,644.20
平成10年494,319504,905.40
平成11年472,345497,628.50
平成12年507,125502,989.90
平成13年479,481497,719.70
平成14年438,332491,312.20
平成15年432,824490,294.00
平成16年455,890498,328.40
平成17年490,654501,734.50
平成18年490,691507,364.70
平成19年510,182515,520.40
平成20年442,673504,377.60
平成21年387,331470,936.60
平成22年414,868479,172.50
平成23年409,270469,545.27
平成24年423,460478,936.18

 グラフ化いたしましょう。

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 税収はほぼ右肩下がりなのに、名目GDPは500兆前後で安定的に推移していることがわかります。

 奇妙なことに、例えば平成元年ではGDPは410兆1222億で54兆9218億の税収があるのに、今年度では478兆9362億と元年より70兆近くGDPは伸びていることが予測されているのに、税収は逆に42兆3460億と、12兆5758億も減収になっているのです。

 平成23年間で日本の税収に何が起こっているのでしょうか。

 そこで税収を名目GDPで割った「GDP比税収率」をグラフ化してみましょう。

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 上記の「GDP比税収率」(棒グラフ)に注目してください。

 平成元年に13.4%だった「GDP比税収率」は平成24年には8.8%にまで落ち込んでいます。

 つまりこの平成23年間、この国はほぼ一貫して「減税」されてきたのです。

 そしてその減税分だけGDPが500兆前後で安定していても税収が20兆近く、三分の二にまで減ってしまったのです。

 もし平成元年の税制度ならば、今のGDPであれば実は本年度のプライマリーバランス22.3兆の赤字はほぼ消失可能なのです。

 何の税目が減税されてきたのでしょうか。所得税と法人税であることは明らかです。

 あらためて税収の推移に注目してみます。

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 平成23年間で、所得税はピークの平成3年の26兆7494億から本年度の13兆4910億までほぼ半減しています。

 法人税はピークの平成元年の18兆9933億から本年度の8兆8080億までこちらは半減以上の減り方です。

 2税で約23兆3000億です、偶然でしょうか本年の単年度赤字22兆2998億を帳消しにできる数値です。

 ・・・

 まとめです。

 平成23年間でこの国は、所得税の最高税率を引き下げ、高額所得者を中心に減税を行いました。

 そして法人税も減税を行ってきました。

 それを補うように逆進性の強い消費税を設立、増税してきました。

 しかし今検証したとおり、所得税と法人税の減税が大きすぎて消費税では補えず、毎年度のプライマリーバランスに壊滅的な赤字をもたらしました。

 政府はこれを補うために、さらに逆進性の強い消費税増税を今行おうとしているのです。

 所得税の減税は最高税率に近い高額所得者ほど大きな額となっており、また法人税減税は赤字法人が7割を越す中小零細企業よりも、黒字会社の多いより大企業に大きな減税効果をもたらしました。

 そのしわよせを政府は逆進性の強い消費税増税で補おうとしているのです。

 庶民にとって、なんという出鱈目な政治なのでしょう。

 国民のみなさん、どうか、政府やメディアに騙されないでください。

 ・・・

 今回は平成時代の税制度改革の出鱈目さを検証いたしました。

 この検証が読者の参考になれば幸いです。

 (データ量が多く検証事項まとめるのに少し疲れました。)

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