うず高く詰みあがる…
見まわせば、日本の母親たちのまわりには、そういった「本当はやらなくてもいいこと」があふれかえっていると感じます。
夕飯はなるべく手作りで、買ってきたお惣菜ばかりではいけない。見栄えのいいお弁当をつくらなければいけない。子どもに汚れた服を着せていてはいけない。ママ友をつくらなくてはいけない。家はきれいにしておかなければいけない。子どもにゲームをさせっぱなしにしてはいけない。虫歯にさせてはいけない。PTA活動に参加しなければいけない。毎日子どもを学校へ行かせなければいけない。
その他、父親には求められない「やらなければいけないこと」がうず高く積み上げられているのです。しかもそれらの大半は、じつはやめても問題ないものです。
夫や周囲の批判(の目)さえ気にしなければ、そして一番は、自分のなかにある「母親はこうあらねばならない」という思い込みさえ捨てられれば、やらなくてすむことばかり。
母親たちがいま「やらねばならぬ」と信じている、でもやめてもじつはなんら差し支えないあれこれを、一つひとつじっくり見つめて、「やりたくなければ、やらない」と決め、キッパリと手を引くこと。もしそれができたら、子どもも絶対ラクになると思うのです。
べつにそれで子どもが学校へ行くようになるわけではないと思うのですが、少なくとも、子どもたちが感じている苦しさはそれだけでだいぶ減る気がします。不登校の子どもたちは、お母さんの苦しさを肩代わりしているように思えるからです。
PTAの具体的なやめ方
とはいえ、いきなり「やりたくないことを全部やめよう」というのも無理な話でしょう。そこでまずはPTAから、もしやりたくないなら、やめてみてはいかがでしょうか。
具体的にはどうすればいいのか。現状のPTAは多くの場合、子どもが学校に入学すると保護者を勝手に会員にしてしまうので(これ、個人情報の無断流用になるので本当はダメなんです)、「入らない」とか「やめる」という選択肢が用意されていません。「やめられないのでは?」と思わせるような仕組みになっています。
でも大丈夫、やめることはできます。おすすめは、校長先生(とPTA会長さん)に「やめます」と伝えること。口頭でもかまいませんが、話がこじれないようにするには、お手紙のほうが安心でしょうか。
もし役員さんなどから「やめる前に話し合いましょう!」などと求められても、無理に応じる必要はありません。そもそも加入意思も確認せず会員にすることがまちがっているのです。
冒頭に「PTAをやめると運動会のテントに入れてあげないと言われる」などのケースがあると書きましたが、かならずトラブルが起きるわけではありません。多くの場合は、校長が「子どもは同様に扱うように」と指導して落ち着くので、あまりご心配なく。
あるいは「加入したままでいいから、委員や役員になることだけは避けたい」というのであれば、そのように校長先生に伝えてもいいと思います。「もし活動を強いられるなら退会する」と言っておけば、たいがいの校長先生は退会者を増やしたくないので、裏でうまくとりはからってくれるはずです。
「いや、PTAのやり方には納得いかないけれど、子どもの学校で波風を立たせたくない」というのであれば、もちろん加入や活動を続けるのもいいと思います。ただしそれは、誰かに押し付けられたのではなく、「自分が選択した」ということをお忘れなく。
厳しいかもしれませんが、それを忘れてしまうと誰も幸せになりません。そして「やる」と決めたなら、どうか楽しんでやってもらえたらと思います。誰かが何かをイヤイヤやる姿は、周囲を不快にするだけです。
やめようと思えばいつでもやめられる。それがわかっているだけでも、PTAの憂うつは、だいぶ軽くなるのではないかと思います。(大塚玲子・PTAジャーナリスト)
