- 2019年02月22日 20:15
再生も無理「東芝」消滅へのカウントダウン - 大西康之
2/2「なかりせば」「一過性」「交通事故」
「原発と半導体の会社」でなくなった東芝は、何の会社になるのか。
中期経営計画「東芝ネクストプラン」を発表した昨年11月8日、車谷暢昭会長は「世界有数のCPSテクノロジー企業を目指す」と宣言したが、聞いていた記者は一様に下を向いてしまった。
CPSとは「サイバー・フィジカル・システム」の頭文字で、AI(人工知能)などのサイバー技術とロボットなどのフィジカル技術を組み合わせたものらしいが、「AI・デジタルソリューション」だの「エッジリッチ・デバイス」だの「デジタルトランスフォーメーション」だの、車谷会長が意味不明の造語を並べるたびに会見場は白けていった(復活賭ける新生「東芝」豪華記者会見の「寒々しさ」 2018年11月9日)。
唯一理解できたのは、「2018年度600億円、19年度1400億円、21年度2400億円」の営業利益目標である。「これから3年かけて、10年以上前に出した営業損益の最高記録(2381億円)を上回ります」というのだから野心的でも何でもないが、最高益を更新すれば一応は「復活」と言えるだろう。
しかし、2月13日に発表した2018年度の業績予想は、営業損益が、11月8日時点の目標600億円から400億円も少ない200億円に下方修正された。原因は、グループの半導体装置メーカー「ニューフレアテクノロジー」の「のれん減損」(178億円)と、送変電・配電部門の大型案件における追加コストの引き当て(170億円)である。
決算を説明した平田政善代表執行役専務は、2つの減益要因を「一過性のもの」と説明し、ニューフレアの減損については「交通事故のようなもの」と表現した。
粉飾決算疑惑で決算発表が遅れに遅れた2015年9月の決算発表では、当時の財務部長が、「原子力事業は、米国での原発建設プロジェクトの減損なかりせば増益です」「電子デバイス部門も、減損処理がなかりせば、営業増益でありました」とやって、記者の度肝を抜いた。
減損処理を先送りすることで利益を水増した会計操作が「粉飾」と糾弾されていたのに、逆に「なかりせば増益」と胸を張ったのである。
私は、彼をルール無用の東芝の会計処理の象徴と見て、当時活動していたメディアで「アグレッシブ部長」と名付けた。アグレッシブも度を越し履き違えると、単なる「無為無策」でしかない。そのせいかどうかは分からないが、以来、決算発表の記者会見からアグレッシブ部長の姿が消え、ソツのない平田氏が決算説明を引き受けるようになった。
粉飾決算、ウエスチングハウスの経営破綻、東芝の債務超過転落と修羅場をくぐってきた平田氏は、余分なコメントを一切挟まず、淡々と決算を説明する。だが原発・半導体の「両翼」を失った東芝にとって最重要の事業部門であるエネルギーシステムソリューション(電力事業部門)のコスト増を「一過性」、ニューフレアの減損を「交通事故」と表現するあたりは、「なかりせば」と考え方は同じである。
V字回復も時すでに遅し
債務超過で経営破綻寸前まで追い込まれた東芝は、うるさ型のファンドから6000億円をかき集めた増資と、2兆円のメモリ事業売却でとりあえず九死に一生を得た。
だが、起死回生を狙った再生計画は、発表からわずか3カ月後に営業損益の見通しが400億円も下振れた。もはや経営になっていないと見るべきだろう。
うるさ型の海外ファンドは、車谷会長の取締役不信任をちらつかせて、東芝に自社株買いを促した。車谷会長に抗う術はなく、東芝は7000億円を上限とする自社株買いを決めた。虎の子のフラッシュメモリー事業を売却して得た資金の3分の1は、強引な増資に付き合ってくれたファンドの懐に転がり込むことになった。
ファンドはこれからも「事業や資産を売って株価を上げろ」と要求してくるだろう。これからしばらく、東芝は玉ねぎの皮を剥くように1枚、また1枚と事業や資産を売却していき、最後は消滅してしまう。その前に「売るものがなくなった」と判断した時点で市場は一斉に売り浴びせ、東芝の株価はクラッシュする。
消滅を避けるには、電光石火のリストラでV字回復を演出し、手にした資金を成長部門に振り向けるしかないが、すでにその時期は逸した感がある。新たな投資先が「CPSテクノロジー」では救えるものも救えない。車谷会長率いる現経営陣に東芝再生を望むのは、もはやどう考えても酷である。



