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携帯キャリアの概念を覆す― 「遅れた挑戦者」楽天が見出す勝機

楽天は今年10月の携帯キャリア事業サービス開始に向け、着々と歩を進めている。2018年11月にはKDDIとローミングで提携し、2019年1月には関東などで4G無線局の包括免許を取得。2月に入ってからは「完全仮想化」したというネットワークの全貌が明らかになってきた。

2019年10月に楽天は携帯キャリア事業に参入する

大手キャリアから帯域を借りるだけのMVNOとは異なり、携帯キャリア事業では日本全国のネットワークを楽天が自ら構築する必要がある。無謀な挑戦との声もある中で、楽天が勝機を見出した根拠を探っていく。

後発の強みを活かし、クラウドや仮想化技術を全面活用

楽天が構築を進める携帯インフラの全貌が明らかになってきた。2月3日には二子玉川で実証実験を成功させ、2月20日には都内に試験施設「楽天クラウドネットワークラボ」を設立。2月25日に始まるモバイル業界最大の展示会「MWC 19 Barcelona」にも出展するなど、動きが加速している。

その中でも、楽天が特に強調しているのが「世界初」をうたう完全仮想化ネットワークだ。楽天の三木谷浩史代表取締役会長兼社長は、「これまでの携帯キャリアの概念を根底から覆す」と豪語する。

楽天が設立したラボについて語る三木谷浩史社長

どこが革新的なのか。それは、従来の携帯キャリアが高価な専用ハードウェアを使ってきたのに対して、楽天が専用ハードウェアの機能をソフトウェアで実現し、安価な汎用ハードウェアで動作させる方式を全面採用した点にある。

高価な専用ハードの機能をソフトウェアで実現

また、この手法にはコスト面以外にも、ソフトウェアの更新による機能追加が容易になり、性能向上のためにスケールさせやすいなどのメリットがある。IT企業では当たり前のように使われてきた技術だが、携帯キャリアでは構造的、技術的な問題で難しかったと三木谷氏は説明する。

今、大手キャリアは5G対応を視野に入れ、クラウドや仮想化技術を積極的に採り入れている。だが、3Gや4Gのために構築してきたレガシーインフラも大量に存在しており、改修のためには多大な設備投資が必要だ。

これに対して携帯キャリアをゼロから立ち上げる楽天は、5G時代を前提にインフラを構築し、そこに現行の4Gを載せる形を採っている。過去のしがらみにとらわれず最新技術だけを惜しみなく投入できることが「後発の強み」というわけだ。

迅速な機能改善で「長時間の通信障害」とは無縁?

楽天が構築したネットワークの特徴は、新たに設立した「クラウドイノベーションラボ」にも現れている。まず、雑居ビルの1フロア程度の広さのラボに入って驚いたのは、「使われているハードウェアがシンプル」という点だ。

携帯キャリアを実現するための機能はソフトウェア化されており、目には見えない。一方のハードウェアは普通のデータセンターで使われる汎用品で構成されており、その大半を占めるインテル製のCPUを搭載したサーバーは、技術的には家庭用PCの延長にあるものだ。

PCサーバーやイーサネットスイッチなど汎用ハードウェアを活用

ラボ内には携帯キャリアのすべての機能を再現しており、基地局設備も用意されていた。これらも仮想化技術によってシンプルな構造で小型化されており、他キャリアのアンテナよりもビルの屋上などに設置しやすいという。

基地局設備は他キャリアよりもシンプルで設置しやすいとする

もう一つの特徴が「テストの自動化」だ。シスコなどの機器ベンダーの海外拠点と直結し、できあがった新機能を自動的にテストして運用環境に提供できる体制を整えた。これはIT企業が採り入れる最新の開発手法を、携帯キャリアのインフラに持ち込んだものといえる。

IT企業のソフトウェア開発手法を採り入れたテスト自動化も

消費者にとってのメリットはどこにあるのか。楽天の説明では、他キャリアで発生したような長時間の通信障害は起きないという。問題が起きた場合にはすぐに対策済みのソフトウェアをテストし、アップデートにより問題を解決できるというのがその根拠だ。

また、すべてがソフトウェアで動いていることから、ユーザーが求める新機能をタイムリーに提供できることもメリットだという。5Gが主流になる数年後までには他キャリアも追いついてくることは間違いないが、しばらくは楽天に優位性がありそうだ。

世界初の試みが多いだけに、実際にうまくいくのか不安を感じる部分はあるものの、挑戦者である楽天が他のキャリアの真似をしても勝ち目は薄い。過去のしがらみにとらわれない最新技術で固めた携帯キャリアとして、10月のサービス開始が楽しみになってきた。

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