記事

芸能界に転換点 ZIGGY森重樹一氏登場!

1/2
ZIGGY森重樹一氏 ©田中紀子

田中紀子(ギャンブル依存症問題を考える会代表)

【まとめ】
・芸能界の依存症問題の転換点となる森重さんの体験談。
・依存症やその患者への理解進まぬ日本。
・海外では依存症からの立ち直りは成長であり誇りでもある。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=44271でお読み下さい。】

今年の厚生労働省の依存症啓発事業は、省庁主催の啓発イベントとは思えない豪華で充実したラインナップとなっている。その中でもメインイベントとなっているのが、愛知県、大阪府、東京都で行われる、音楽ライブやトークショーで、2月17日(日)に第一弾となる愛知県でのトークショーが開催された。

出演者は、元Jリーガーの前園真聖さん、ロックバンドZIGGYのボーカル 森重樹一さん、お笑い芸人 濱口優さん、人気Youtuberせやろがいおじさん、国立精神神経医療研究センター精神科医 松本俊彦先生、ギャンブル依存症問題を考える会 田中 紀子、となっており、僭越ながら私も依存症の専門家という立ち位置で、末席に加えていただいた。

このイベントの第一部で、ロックバンドZIGGYのボーカル 森重樹一さんが登壇され、大ヒット曲GLORIAを含む2曲を熱唱された他、アルコール依存症からの回復者として、ご自身の飲酒が止まらなくなった話、γGTPが4ケタまでいったこと、鬱状態となり、どん底を味わったのち自助グループで回復するまでの体験をお話しされた。

▲写真 ZIGGY森重樹一氏 ©田中紀子

この話に、私たちは仰天し、かつ大きな感動を味わうことになった。まさに日本の芸能界の夜明け、大きな時代の転換点を迎えたと思う。かねてより日本の芸能界のターニングポイントはいつ来るのか?ファーストペンギンに誰がなってくれるのか?我々は大きな願いを込めて見守っていたわけだが、それがZIGGYの森重樹一さんだったのである。

日本では、長い間依存症問題について語ることはタブーであった。自分が、依存症者であり、どれだけの問題を巻き起こし、いかに回復していったか?という話は、同じ経験をした仲間内では語られていたが、時々メディアなどに取り上げられることがあっても、特殊な人の特殊な話、まさに「ダメ人間」「だらしのない人」としてしか扱われてこなかった。日本人の間では80年代に流行った人権侵害も甚だしいコピー「人間やめますか?」の価値観が、まさに依存症者そのものの姿と烙印を押され蔓延していったのである。

しかし、不思議なことにこの依存症者を貶め罵倒する日本の風習は、同じ日本人にしか向けられていない。つい最近も、大物芸能人がアルコールで問題を起こしたが、事態が発覚すると、昨日まで仲よしこよしで仕事をしていた芸能人が、急に吐き捨てるように罵倒したり、教育専門家や文化人と名乗るタレントが、「甘えている」「だらしがない」「情けない」などと精神論を振りかざしていた。そして「芸能界でやっていこうなんて甘い」「引退は当然」と居場所を奪い、社会的に抹殺していくのである。

万が一、問題を起こした芸能人が運よく再起を果たせたとしても、一切過去には触れずタブー視されていき、回復のプロセスは一切見えてこないのが常である。

しかしながらこのように同じ芸能界に生きる日本人タレントに対しては声高に罵倒する芸能人やコメンテーターも、海外アーティストやセレブに対しては、決してこのようなことはしない。例えばエリック・クラプトンや、ロバートダウニーJr.などに、「あなたのような犯罪者がなぜ来日してきたのですか?」「あなたはなぜまだ芸能活動をしているのですか?」「あなたのようなだらしのない人間は人前に出るべきではない!」などと言っているのは見たことがないし、そのような記事が配信されたこともない。皆、笑顔で来日を喜び、活動を絶賛し、例えアルコールや薬物依存症の過去があろうとも「それだけストレスがある仕事なのだろう。」「そこから再起したことは素晴らしい。」と善意に解釈するのである。

▲写真 エリック・クラプトン(2008)出典:Wikimedia Commons; Majvdl

このような日本の芸能界の同胞憎悪と欧米人コンプレックスがどこからくるのかわからないが、こういった見せしめや懲らしめ的な姿勢は、長年、我々依存症者とその家族を苦しめ、多くの弊害をもたらしてきた。「依存症だとバレたら社会的に抹殺される。」「依存症者は嫌われる。」「誰にも知られてはならない。」と震えあがり、どこにも相談できず、家族の中で抱え続け、最悪の場合は、自殺や心中、家庭内殺人という悲劇を起こすに至っていた。

▲写真 ロバートダウニーJr.(2014)出典:Flickr; Gage Skidmore

しかし依存症に対する理解が進んでいる欧米諸国では、当事者の姿勢も全く違ったものになる。依存症の当事者となった芸能人や著名人も、自分がリハビリを受けたことを恥じてなどいない。むしろリハビリを受けないことが恥とされる。そして回復へのプロセスが自分を成長させてくれたと誇りにしている。

それゆえ海外アーティストたちは、リハビリ施設に入所することを決めた際にはその旨を公表し治療を受け、再起を果たしたのちは、依存症のことを恐れずに語り、むしろ同じ問題に苦しむ人々の手助けになろうと積極的な活動を始める。

例えば、エリック・クラプトンは、誰でも入寮できるような極力低価格で入れるリハビリ施設を開設しているし、エミネムは自身の病気を作品で表現し「Relaps(再発)」「Recovery(回復)」といったアルバムを制作した。さらに薬物依存症の自助グループにつながって10年の記念となるメダルをSNSで公開もしており、このツイートに対し、ラッパーのロイス・ダ5’9″がツイッターで祝福した。依存症になったからと言って、二度と近寄るなと言わんばかりに突き放す日本の芸能人とは大違いである。

▲出典:エミネムTwitter 

▲写真 エミネム 出典:Wikimedia Commons; Mika-photography

あわせて読みたい

「芸能界」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    森ゆうこ氏への請願黙殺する自民

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  2. 2

    野村克也氏「イチローは超一流」

    幻冬舎plus

  3. 3

    安倍首相の虚偽答弁 新たに判明

    田中龍作

  4. 4

    韓国社会を映す韓流スターの自殺

    渡邉裕二

  5. 5

    「サイゼ料理をアレンジ」は面倒

    fujipon

  6. 6

    出所したら…新幹線殺傷男に衝撃

    文春オンライン

  7. 7

    朝日が早期退職募集 新聞の明暗

    AbemaTIMES

  8. 8

    生理の妻へ食事配慮 批判の声も

    BLOGOS しらべる部

  9. 9

    口座手数料より銀行がすべきこと

    内藤忍

  10. 10

    中村哲医師はなぜ銃撃されたのか

    NEWSポストセブン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。