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大飯原発再稼動問題に見る衆愚政治の姿

 野田政権が、関係4大臣会合の結果、大飯原発の再稼動についての新基準となる3条件を了承したということだ。第1と第2は福島原発並みの地震や津波があっても大丈夫なように安全対策をするということだから、今までと変らない。新しいのは、過酷事故に備える対策で時間のかかるものは、電力会社が実施計画を明らかにすればよいとしたことだ。早く言えば「やります」という返事が信用できると思えばそれでいいとしたことになる。

 この決定が信用に値するどうかは、これから大いに議論されるだろうが、野田首相の「みなさんの意見をよく聞いて、しっかり議論して、最後は私が決めます」ということの典型例になる。原発ゼロは避けたい枠組みの中で相談すれば、何度やっても同じような結論しか出ないだろう。ある予測によると、この夏が原発ゼロで乗り切れてしまうことは、「最悪の事態」なのだそうだ。

 3.11以前の常識で考えたら、あれだけの過酷事故を起こしたのだから、同じ過ちを繰り返すわけがない。1000年に一度の大地震・津波にも耐えられる対策をしてあれば大丈夫だろう。整備の済んだ原発を動かさないのは、もったいないということになる。それを裏付ける「科学的なデータ」は、いくらでも揃えられるだろう。今までの航空機事故などは、そのようにして克服してきた。

 3.11以前と以後とでは、何が変ったのか。ものの考え方つまり「哲学」が変ったのだ。核以外のエネルギー源は、たとえば揮発油でも爆薬でも、大量に集積すれば危険ではある。石油タンクや火薬庫の爆発は大きな災害になるだろう。しかし、所詮はその場で終る。核エネルギーの本質的な違いは、人類社会との「非和解性」にあるのだ。あらゆる想定を超える万年に一度の自然災害があって大量の核燃料が露出した場合、人間はおろかロボットさえも近づけない高温、高線量の異次元空間が出現する。その影響は、間もなく世界の全域を覆うことになる。

 核物質が曲がりなりにも人間の管理下にある今のうちに、採算を度外視して安全な廃棄処分への道筋をつけるのは、科学者にも経済界にも出来る仕事ではない。それをするのが政治判断というもので、そこには哲学が要る。

 際限なく防潮堤を高くする工事をしても、周辺地域の住民全員に沃素剤を配り避難訓練を繰り返してみても、心からの安心は得られないだろう。予算はいくら注ぎ込んでも足りるものではない。

 それよりも考えてみてほしい。原発は止まった、あとは安全に撤収することだけ考えればいいとなったら、どれほど世の中が明るくなることか。人口減少時代の日本を支える主力産業が原発であるわけがない。決断が早いほど無駄を少なくすることができる。

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