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鳩山退陣の深層と崩壊した東アジア共同体構想

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鳩山首相が退陣した。
辞任を表明した両院議員総会の会見の際に、退陣の要因となった問題として「普天間問題」と「政治とカネ」の2点を挙げていた。母親から政治資金の援助を受け政治資金報告書に記載していなかった問題は、いい年をして親の脛かじりかという嘲笑をかったが、有権者の多くはこの問題に目くじらを立てようとは思っていなかった。

鳩山政権の息の根を止めたのは、結局、自身が撒いた種、普天間基地の移設問題であったといえるだろう。
鳩山自身も認めているように、沖縄県民の負担を軽減させたいという意図から始まったこととはいえ、逆に沖縄や徳之島の住民の気持ちを逆なでするようなこととなり、連立政権のパートナーだった社民党を離脱に追い込んだ。
5月末までという期限を切り、最低でも県外と自分で設定したハードルを結局越えられなかったのだから、首相としての政治指導力の欠如や責任を問われてもしかたないだろう。一国のトップが大見得を切って国民に約束した事を反故同然にした責任は重い。

普天間基地問題の腑に落ちないこと

しかし、普天間問題の一連の流れを冷静にふり返ってみると、腑に落ちないことがたくさんある。そもそも、普天間基地の移設問題は、5月末までに結果が出せなければ、政権の命運にかかわる事であることは最初からわかっていたにもかかわらず、何ら進展らしい成果が得られなかったのは何故なのか?鳩山首相や官邸の人々は自らの政権基盤を揺るがすことに対して、どうしてこれほど無能無策、あるいは無頓着だったように見えるのだろうか。

新聞報道などによれば、平野官房長官を中心とした官邸の動きが全て後手に回っており、耳障りの良い情報だけが首相に入っていたため対応が遅れ、結果的に期限ぎりぎりになってからの沖縄訪問になった。しかも、沖縄に訪問する前日に、日米合意の内容がリークされ、新聞報道に書かれた内容を首相の口から沖縄知事が聞くという前代未聞の状況が現出した。

政治コメンテーターは、官邸サイドが、事前に意図的にマスコミにリークし、事態の既成事実化することを狙ったものという見方をしていたが、一国の首相に対して、新聞報道の内容をなぞるだけの子供の使いのような役割をさせることを官邸が自ら主導することが果たしてありえただろうか。

日米安保マフィアとの抗争に負けた鳩山、小沢

鳩山由起夫と小沢一郎が退陣に追い込まれた今、私は全く別の見方をしている。鳩山と小沢は、米国の意志を体現した、いわゆる日米安保マフィア、親米・国体主義者との抗争に負けたのだ。

8ヶ月前、小沢一郎の巧みな選挙戦略で政権交代を成し遂げ、鳩山政権は内閣支持率が70%を越える中、順調な船出をしたかのように見えたが、民主党の政策が圧倒的な支持を得たというより、実際は自民党に対する失望票を集めていただけで、政権の支持基盤は脆弱だった。一方、政権交代によって新たな転換が生じたことを演出するために自民党の政策とは逆行する方針が打ち出され、外交もそうした既定方針に基づき、インド洋沖での給油活動中止の方針などが打ち出された。

政権発足と同時に打ち出された東アジア共同体構想もこうした新たな外交政策の中軸を成すもので、米国一辺倒だった外交軸を成長著しい東アジアにシフトすることを意味していた。小沢一郎が民主党議員団を大挙引き連れて中国の胡錦涛主席を訪問し、記念写真を撮り、宮内庁の役人を恫喝して、習副主席と天皇との会見をセットしたのも、中国との距離を縮め東アジアに新たな外交軸を立てることを狙いとしていた。

米国一辺倒の外光軸を東アジアにシフトする構想

米国はこうした動きに多少は苛立っただろうが、米国自体も日本をパッシングして中国との接近を図っているわけだから、鳩山政権のとった外交方針は、この国の成長戦略を考えた場合は極めて妥当な判断であったといえる。

普天間問題についてもこうした文脈のもとで対応が進められ、政権交代を前提とした民主党による「政治主導」のもと、米国との間でこの問題に対する新しいアプローチの構築が模索されるはずだった。しかし、事態は全く逆の方向に進展した。

日本には親米・国体主義者とでもいうべき勢力が、官僚組織やマスコミの中枢に巣くっている。こうした連中が最悪なのは、国家主義者であるにもかかわらず、「親米」という歪んだ国家意識を持っている点だ。連中の唯一の拠り所は、戦前的な価値観の継続性、正統性を煽ることなのだが、それは反中国あるいは中国、韓国に対する差別意識に裏打ちされていて、その意識の裏返しとして「親米」を言っているに過ぎず、自分がなぜ「親米」なのかについては全く判断を停止している。

インド洋の給油活動停止に過剰反応したマスコミ

インド洋での自衛隊による給油活動中止の問題が俎上にのぼった時には、マスコミも含め、給油中止を公約通り行ったら明日にでも日米同盟が崩壊し、日本の安全保障は危機に晒されるというような論調が垂れ流されたが、実際は止めても何事も起こらなかった。

私はこうした議論を展開することで何も「反米」主義者になれといっているわけではない。日本の官僚やマスコミのように、過剰に米国の顔色を伺うことからは、そろそろ卒業しないと先はないぜと言いたいだけだ。それが、21世紀の多極化した世界に対する正しい戦略になると考えるからだ。

さて、普天間の移転問題に話を戻そう。鳩山政権の中で、先ず米国の意図に過剰反応したのは岡田外相だった。年内には普天間問題を決着しなくてはならないと述べ、辺野古への移転しか現実的な対応策が無いというようなメッセージを折々に発信していた。

圧倒的に不利な詰め将棋に陥った鳩山政権

外務省は親米・国体主義者の巣窟であるから、洗脳されても仕方ないのかも知れないが、これはあまりにナイーブな対応だったと言えるだろう。「年内に決着を」というような圧力をゲーツ国防長官から受けていたのかもしれないが、そんな言葉は「社交辞令」ぐらいに思って受け流しておけばよかった。移転問題の結論を何とか年内に出すという生真面目な空気が出来上がり、それが無理だから5月末にという形で問題解決の期限を区切った時点で、この普天間基地の移設問題は政権にとって圧倒的に不利な詰め将棋になってしまった。

だから、普天間問題の初動における岡田外相の政治姿勢こそが、今回の事態を招いた本質的な原因だと考えている。外交においては、相手の言うことに対して「馬耳東風」を決め込む、自分にとって意味のあることしか聞かないという態度も時に必要である。米国に言われたから、それに対して常に何かしらの答えを用意するというのは、属国のとる態度に過ぎない。

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