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嵐の活動休止宣言で考える「商品戦略」を見誤ったジャニーズ事務所の行く末

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BLOGOS編集部

ジャニーズ事務所所属の国民的アイドルグループ嵐の活動休止宣言は、世間に様々な形で波紋を呼びました。私はアイドルグループ事情にさほど詳しいわけではありませんが、ここ最近ジャニーズ事務所所属グループに絡む出来事が、何かと世間を騒がすケースが多いように感じています。

調べてみると、2016年に起きたSMAPの解散騒動、昨年のTOKIOメンバーの犯罪的不祥事と契約解除をはじめ、他グループでも複数のメンバーの脱退や独立が相次ぐなど、活動歴10年を超えるグループで次々と「事件」が起きているようです。

第三者的に見てこれらは全く関連性のないものではないように思えたので、もしやジャニーズ事務所におけるビジネスとしての商品戦略の行き詰まりではないのか、という観点から少し分析してみたところ大変興味深いことが分かってきました。

活動領域の拡大で延びる「アイドル寿命」

男性アイドルグループ(メンバー3人以上と定義)は、いってみればジャニー喜多川氏が考案し、ジャニーズ事務所が1960年代に世に送り出した、それまで存在しなかった芸能「商品」です。

最初のグループはジャニーズ。1964年のレコードデビューで、約3年間という今思えば短命商品でした。その後、主だったところでは、フォーリーブス(1968年デビュー。実質的活動10年間)、シブがき隊(同1982年。6年間)、少年隊(同1985年。実質20年間)、光GENJI(同1987年。7年間)らが活躍し、1991年にSMAPがCDデビューします。

以降、SMAP(同1991年。25年間)、TOKIO(同1994年。25年間。現役)、V6(同1995年。24年間。現役)、嵐(同1999年。20年間。現役)、関ジャニ∞(同2004年。15年間。現役)、NEWS(同2004年。15年間。現役)、KAT-TUN(同2006年。13年間、現役)。

筆者作成

SMAP以降のグループで、その活動期間が一気に長期化の様相を呈してきているのが分かります。その理由は、アイドルグループが人気のピークにある時に、新たな投資をすることで活動領域を広げ、そのアイドル寿命の延長がはかれるようになったからなのです。

少年隊をきっかけに人気のピークが長期化

ジャニーズ・アイドルを「商品」として考えるなら、必ずや商品ライフサイクルというものが存在します。ならば、商品ライフサイクルを考えるフレームワークとして有名な、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(以下PPM)に当てはめて、考えてみます。

筆者作成

図表のようにPPMは、商品を4つのステージ変遷で考えるフレームワークです。売り出し時期である「問題児」から始まって、人気上昇中のブレイク期「花形」、まさにピークを迎え下降局面に移る「金の成る木」を経て、衰退期である「負け犬」に至るというものです。

それぞれサイクル期間は商品によって異なりますし、ピーク時における人気の高さや途中での投資の有無によってもそれは変わってきます。また一般に、「問題児」から「花形」は積極投資期であり、「金の成る木」以降は非投資期となります。

ジャニーズ・アイドルをこのPPMに当てはめてみると、少年隊を除く初期の各グループは「問題児」期の積極投資の結果人気絶頂期である「花形」に至り、そこで新たな投資がストップして人気がピークアウトし短い「金の成る木」を経て「負け犬」期に移行して解散。

トータルで3~10年という商品としてのライフサイクルを形成していた、と見ることができます。そんな中で少年隊だけは、「花形」期に冠番組担当やミュージカルという新ジャンル進出投資をしたことで「金の成る木」期が長期化し、全体でのアイドル商品としてのライフサイクルも長期化する要因を作ったと捉えることができます。

アイドルグループ戦略の「落とし穴」は飽きとマンネリ

それを受けてジャニーズ・アイドルの商品寿命を大きく延ばすキッカケとなったのは、SMAPにおける戦略転換でした。SMAPのプロダクションは、「問題児」から「花形」に移行すると、それまでの音楽一辺倒の活動から脱して積極的な多角化投資にでました。

具体的には、グループ活動の多様化とそれと並行した個別活動です。バラエティ、俳優、司会等々、それまでの現役アイドルグループでは考えにくかった活動への新たな投資は、「花形」期間の大幅な長期化と長期安定型「金の成る木」をもたらしました。

結果的に、SMAPの20年を超えるグループ活動を可能にし、その後のジャニーズ・アイドルたちの軒並み15年を超える現役活動を可能にしたのは、まさにこの多角化投資戦略だったのです。

しかし、この戦略的成功に溺れたジャニーズ事務所は、商品のライフサイクルが無限化されたという勘違いに陥ったのかもしれません。商品の「花形」期あるいは「金の成る木」期が永遠に続く、という錯覚です。

一般的に「花形」が「金のなる木」を経て「負け犬」になっていく理由は、商品を買う受け手側が人間であるが故の「飽き」とか「マンネリ」が主なものです。一方、商品の送り手側である企業はこの「飽き」や「マンネリ」を先送りすべく、新たな投資による商品のマイナーチェンジを実施するわけです。

一般の商品の場合には、「飽き」や「マンネリ」を感じるのが受け手である消費者サイドに限定されるわけですが、アイドルグループという商品は、商品そのものが生身の人間の集合体であり、商品である彼ら自身にも同じメンバーのグループで活動することの「飽き」や「マンネリ」が、必ずや伴うという特徴的な問題があります。これこそが、ジャニーズ事務所のアイドルグループ戦略の落とし穴であったといえるのです。

すなわちアイドルグループは、どんなに新たな投資を重ねて売り方の工夫をしたとしても、いつまでも「商品」として売り続けることはできないわけなのです。なぜなら、世のどのような商品にも商品ライフサイクルが存在するからであり、さらにいえばアイドルグループという商品自体が生身の人間の人為的な集合体であるからです。

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