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"午後の眠気"を完全撃退するための睡眠術

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仕事中の眠気とどう付き合えばいいのか。スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の西野精治教授は「働き方によって睡眠をコントロールする方法はさまざま。睡眠負債を抱えがちなビジネスパーソンは、体調管理の一環として、積極的に、正々堂々と20分ほどの仮眠をとったほうがいい」と説く――。

※本稿は、西野精治『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

■シフト勤務者の多くが体調不良を抱えている

日本ではいま、交代勤務で働く人の割合が3割近くになっていると聞いたことがあります。その多くが、睡眠障害、めまい、消化器系等の不調、勤務時間中の眠気、倦怠感などの問題を抱えているといいます。


※写真はイメージです(写真=iStock.com/sakkmesterke )

交代勤務に伴うこうした体調不良も、「概日リズム睡眠障害」の一種です。

ただ、交代勤務とひとくちにいってもさまざまな勤務体系があり、産業による特徴もあります。2交代や3交代など夜勤のパターンによっても異なりますが、日本では、月に5~8回(週に1~2度)程度の夜勤が一般的です。

救急指定病院や入院患者さんのいる病院では、看護部門は日勤・準夜勤・深夜勤の3交代制、医師・薬剤部・検査部門は宿直勤務が多いです。

消防署、あるいは、警察署(交番)、警備業の施設警備部門などでは、いつ発生するかもしれない火事・事故・事件に備え、当番者が深夜も含めた24時間待機の体制をとっています。消防署・警察ではそのため、2部あるいは3部勤務が導入されており、この勤務体系も、2交代、3交代とよばれることもありますが、看護部門等の勤務体系とはまったく異なります。

一方、車の製造業では、昼夜の2交代(連続2交代勤務)を1~2週間交代で行なっているところもあります。

■連続2交代勤務は身体への影響は大きい

これら2交代制の利点は、深夜勤務手当を節約できること、また連続2交代勤務では需要の変動を残業(最大3時間×2)で吸収できることがあげられますが、これはあくまでも、従業員の健康問題を度外視して表面上の経済性を目的とした交代勤務です。

こういった1~2週間交代の連続2交代勤務による健康被害や、就業中のパフォーマンスの低下により経済性においてもマイナスの影響を与える可能性が高いので、今後その見直しが迫られると思われます。

身体本来のリズムにそぐわない時間帯の就業であっても、覚醒度を上げ、パフォーマンスを向上させるにはどうしたらいいか。

■ブルーライトの効果的な利用法

対策のひとつに、交代勤務の現場でも、「光療法」の活用があります。

たとえば、夜間に稼働している職場で高照度のライト、特にブルーライトを使うと、メラトニンの分泌を抑えることになるので、勤務中に眠くならないのです。


西野精治『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』(PHP新書)

イメージとして、野球場のナイター照明を思い浮かべてもらえばいいでしょう。ナイター照明は、非常に明るく感じます。暗いと、プレイする選手も、観客もテンションが上がりません。あの煌々とした明るさには、パフォーマンスを上げる効果があるのです。

夜にブルーライトを浴びることは、身体が本来もっているリズムのためにはいいこととはいえません。ただ、現代社会で交代勤務をまったくなくすことは不可能です。交代して夜間でも働かなくてはいけないのであれば、眠くなってうっかりミスが起きてしまうよりは、眠くならず、意識が覚醒しやすい環境をつくるべきでしょう。

その場合、朝に仕事を終えた後、さらに朝日を浴びてしまうと体内時計は完全に混乱してしまい、眠れなくなります。

■体内時計を調整できれば睡眠は取れる

ある事業所では、夜間勤務を終えた人たちに、日中は室内を意識的に暗くして過ごしてもらうようにしたところ、睡眠が改善されたという報告もあります。生体リズムには反していますが、体内時計を完全に昼夜逆転させてしまうわけです。

身体には順応性があります。逆転生活でも、きちんとメリハリをつけて新たなリズムを確立することができれば、睡眠もしっかりとれますし、覚醒時の仕事効率が劣化することもありません。

さまざまな原因で生体リズムがいったん乱れ、脱同調が起こっても、生き物にはそれを再同調させる機能が備わっています。新しい環境になんとか順応しようとするのは、生体としてのホメオスタシス機能によるものです。

■身体の順応性をうまく利用する

これをうまく利用する方法もあります。

たとえば、病院の看護職のような日勤・準夜勤・深夜勤の3交代制の場合、後ろにずらしていくほうが順応しやすいですから、日勤→準夜勤→深夜勤の順でシフトを組み、数日間で交代していくのは比較的同調させやすいのです。

しかし、製造業などに多い昼夜の2交代勤務を2週間サイクルで行うようなシフト勤務の場合、2週間ごとに脱同調を起こしている状態になります。

一方、夜勤を2日やって、休日をはさんで今度は日勤というように、短期間に大きく時間帯が変わるシフトは、身体は対応しにくいものの、脱同調の期間そのものは長くはありません。

もっとも、脱同調に対する許容性、順応性には、当然ながら個人差があります。人それぞれ、再同調のしやすさは異なります。

■健康管理への配慮は組織を映す鏡

無理なシフトスケジュールを続けていると、心身の負担となり、疲れやすく、ミスも生じやすくなります。シフト勤務者は、がん、糖尿病などの生活習慣病、うつなどの精神疾患のリスクが高まることは、厚生労働省の資料などにもはっきりあらわれています。

昨今、シフト勤務者の健康被害の問題がこれだけ取り上げられるようになっている状況のなかで、従業員の健康管理に対する配慮がどれだけなされているかは、その組織の体制を映し出す鏡のひとつともいえます。

交代勤務のために頑固な不眠症状がある際、睡眠薬を服用して眠ろうとする人もいると思いますが、私は薬の服用はあまりお勧めしません。鎮静型の睡眠薬には種々の副作用があり、日常生活に及ぼす影響、QOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)への懸念が大きいからです。

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