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「孤独」とは、生きる上での覚悟です。覚悟の上の孤独死ならば、「大往生」ではないでしょうか - 「賢人論。」第82回下重暁子氏(後編)

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これからの介護施設には、入居者一人ひとりの個性を尊重する空間になってほしい

みんなの介護 本日はいろいろなお話をうかがってきましたが、最後に、わが国の介護の現場を改善するための提言をいただければと思います。

下重 お年寄りを十把一絡げに管理するのはやめてほしいとか、童謡なんて歌いたくないとか、いろいろ厳しいことを言ってきましたが、改めて、介護は大変な仕事だと思います。

少ない人数で大勢のお年寄りの世話をするには、効率が重視されるのが当たり前。介護スタッフの方一人ひとりは、厳しい労働環境の下でがんばってくれていると思います。

ひとつだけお願いしたいのは、一人ひとりのお年寄りの個性を尊重してほしいということ。施設として、スタッフにそういう教育を受けさせていないのであれば、経営者はただちに何らかの手立てを講じるべきでしょう。

みんなの介護 スタッフの教育は、確かに重要なことです。他には何かありますか?

下重 もう少し別の視点からいえば、介護スタッフの待遇もただちに改善されるべきですね。スタッフの働く労働環境が悪すぎるから、入居者一人ひとりに気を配る余裕も生まれない。

国は、企業やお金持ちばかり優遇するのではなく、介護の現場にもっと予算を付けるべきです。

みんなの介護 下重さんによれば、人は年をとればとるほど個性的になる、というお話でしたね。

下重 人生の残り時間が次第に限られてくるのですから、あれもこれもと手を出すわけにはいきません。自分が本当にやらなければならないこと、自分が本当にやりたいことを厳選して行う必要があります。だからこそ、その人らしさが先鋭化して現れる。

私についていえば、やらなければならないのは物書きの仕事であり、やりたいことは旅行とオペラ鑑賞。そして人生の最終局面、私の棺が覆われるとき、最も自分らしくありたいと願っています。

職能別の老人ホームができれば、お年寄りも、もう一度いきいきと輝けるはずです

みんなの介護 政府の「働き方改革」が現在どのように進行しているのか、国民の目にはわかりにくいのですが、介護の現場の働き方を変える、何か妙手はあるでしょうか。

下重 スタッフの働き方ではありませんが、高齢者施設のあり方については、ひとつアイディアがあります。それは、職能別老人ホームを建設すること。

数年前、ダスティン・ホフマンが監督を務めた『カルテット!人生のオペラハウス』という映画がありました。それ以前には、黒柳徹子さん主演で『思い出のカルテット』という舞台になっていたので、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。

みんなの介護 どういうお話なんですか?

下重 物語の舞台は引退した音楽家たちが暮らす老人ホーム。そのホームが経営危機に陥ったため、入居者である元音楽家たちがコンサートを開き、その収益金でホームを救うというお話です。

職能別の老人ホームが現実にどれくらいあるのかわかりませんが、発想自体はとても面白いと思います。入居者が全員、元同業者であれば、会話も弾むだろうし、生活レベルのギャップも生じないはず。

なにより必要とあらば、昔取った杵柄で、みんなで一致団結して仕事もこなせるのですから。レクリエーションで童謡を歌ったり、折り紙を折ったりするのではなく、仕事のコツを思い出すために職業訓練をやってもらったほうが、本人たちもずっとやりがいを感じるはず。

そのうえ、自分の得意な仕事でもう一度社会に貢献することができれば、それが大きな生きがいにもなるし、認知症予防にもつながります。お年寄りは人生の最後に、もう一度いきいきと輝いて良いのです。

みんなの介護 それこそ、入居者の個性を活かした老人ホームになりますね。

下重 職能別の「職能」は、なにも音楽家に限りません。美容関連の美容師、スタイリスト、メークアップアーティストを集めたり、大工さん、左官屋さん、内装屋さんなどに集まってもらったり。職能別といっても、さまざまなグルーピングが考えられますよね。

我こそはと手を挙げてくれる、チャレンジャーの起業家が現れてくれることを期待します。

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