記事

1万円札流通高が初めて100兆円を突破、キャッシュレス化が後退?

 18日付け日本経済新聞によると、1万円札の流通高は2018年末時点で前年比3.5%増の102兆1872億円と初めて100兆円を突破した。その多くはタンス預金として、家庭の金庫などに眠っているとされる。

 ケネス・ロゴフやローレンス・サマーズなどの経済学者が現金廃止のメリットを訴えているが、それは高額紙幣が脱税やマネー・ロンダリングなど犯罪に使われているためとしている。高額紙幣をなくしてキャッシュレス(ロゴフ氏はレスキャッシュと主張)とすれば、そのような犯罪がなくせるとしている。

 高額紙幣の流通量の多さとキャッシュレス化については切り離して考える必要がある。日本ではここにきてキャッシュレス化の遅れなどが指摘され、数々のQRコード決済などが出てきているが、現在ブームとなりつつ日本のキャッシュレス化はあくまで小額取引におけるものである。さらに高額の取引についてはクレジットカードの利用が進んでいる。

 日経新聞によると、電子マネーの普及で小額硬貨は流通高が減っているとしている。2018年末時点で1円玉は前年比0.3%減り、5円玉は0.6%減った。電子マネーによる決済額は2018年1~11月が4兆9496億円と前年同期を5.3%上回って、過去最高となっている。

 つまり小額決済のキャッシュレス化は進んでいる。この流れは今後広がることが予想される。

 高額紙幣の流通量と犯罪の関係をあらためて考えてみたい。高額紙幣の流通量が増加しているのは日本だけでなく、ユーロ圏などでも同様である。これは日本とユーロ圏で国際犯罪が多発しているため、ではないであろう。少なくともドルやユーロではなく、日本円の1万円の札束を海外での闇取引に持ち込んでも、それほど歓迎されないのではなかろうか。

 日本とユーロ圏の高額紙幣の流通量の増加の要因はひとえに金利の低さにある。金利のあまりの低さにより、預金に置くより現金で持つというインセンティブが働く。念のため日本と欧州で預貯金金利がマイナスとなっているのは、欧州の一部の銀行にすぎない。マイナス金利だからというより、低金利であるため、さらに現金の持つ匿名性も意識されて、高額紙幣の保有量が増加していると思われる。

 そういった意味では贈与税なども意識して大量の現金を隠しているのではとの見方もあろうし、そういう意味での脱税を意識した保有も否定はできない。金額が桁違いに多くなればなるほど、自らの金庫に保管したいというインセンティブも働いているのかもしれない。特に金利が付かず、運用するにも将来への不安を意識してそのまま寝かせている現金が多いともいえるのではなかろうか。

あわせて読みたい

「キャッシュレス決済」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    安倍・麻生の色が濃い「岸田内閣」は衆院選でどう評価されるか

    田原総一朗

    10月21日 10:00

  2. 2

    Kindle読み放題に続々参入する出版社 サブスクのビジネスチャンス気づき変わるか

    かさこ

    10月21日 10:39

  3. 3

    原発処理水めぐり枝野代表が「一旦ストップ」を主張 現実的な対案もなく無責任

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    10月21日 09:45

  4. 4

    トヨタの苦渋のEV戦略 2030年以降のビジョンは国内向けと海外向けを使い分け

    ヒロ

    10月21日 10:40

  5. 5

    いまだ人口増を目的にする地方 それが本質ではないと気づけていないのはヤバい

    Qualities

    10月20日 11:49

  6. 6

    最終回目前『おかえりモネ』ヒロインは今までの朝ドラとどこが違ったのか?

    NEWSポストセブン

    10月21日 09:25

  7. 7

    岸田が落胆「自民党調査」が示した「マイナス50議席」危機

    新潮社フォーサイト

    10月21日 10:56

  8. 8

    甘利幹事長、発言すればするほど大炎上…ついに「テレビに出さん方がいい」との声も

    SmartFLASH

    10月20日 13:12

  9. 9

    「プライマリーバランス」を黒字化する方法は1つだけ

    自由人

    10月20日 10:12

  10. 10

    如何にも大きな成果を挙げそうに見える野党候補者の一本化

    早川忠孝

    10月20日 16:46

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。