- 2019年03月27日 07:02
福島第一原発で進められる廃炉 作業員癒やすまさかのスイーツ
2/3調理許されない第一原発 料理は給食センターから1日4回輸送

実は、第一原発構内で行われているのは保温と盛り付け程度だ。廃炉作業が進む第一原発内では調理が許されていないためで、南西に約9キロ離れた福島復興給食センター(大熊町)から調理済みの料理を届ける給食センター方式を採用している。
センターは大型休憩所ができる2カ月前の15年3月に完成。原発事故による避難指示が続く中だったため人集めに苦労したものの、現在は福島県沿岸部出身の人を中心に約90人が働いている。
調理作業は午前5時から始まって、一日当たり2000食を第一原発に提供している。調理開始から2時間以内に食べ終わることが定められているため、毎日4回に分けて第一原発に料理を搬出している。

復興に貢献したいという東電の意向を踏まえて、食材は可能な限り福島県産の食材にこだわっている。コメは県産を100%使用し、トータルでは食材の4割が県産という。昼食で5種類提供するメニューの中でも、カレーには特に力を入れているといい、ポーク、ビーフ、キーマ、バターチキンなど種類が多い。
センター長の渋谷昌俊さんは出身地である名古屋市の会社の業務として、給食センターに携わるようになった。福島には縁もゆかりもなかった。だが、会社にはすでに「福島から戻さないでくれ」と伝えてある。
「ここは日本一注目されている社員食堂。ここがどんな役割を果たしていくか、福島がどうやって変わっていくのかを今後も見届けたい」。作業員の健康を支える業務を通じて、復興に貢献し続けたい考えだ。
構内の96%を簡易な作業服で移動可に 軽装化で安全確保目指す

食事や体を休める環境など休憩時間の快適な過ごし方だけではなく、実際の作業中の環境改善も重要だ。全身を覆う防護服に、息苦しい全面マスクを付けた状態では、作業員同士のコミュニケーションも難しく、夏場には熱中症など健康面のリスクも伴う。
第一原発構内では、除染だけではなく、放射線量が高かったがれきの撤去や地表面をモルタルで覆ってしまう「フェーシング」などによって、広い範囲で放射線量は低減していった。その結果、現在では平服の薄いベストを着用するだけなどの簡易な作業服で移動できる範囲が96%を占めるようになった。
今も、全身を覆う防護服が必要な場所は、放射線量が著しく高い1~4号機内部や、放射性物質を含んだ水が付着する可能性がある多核種除去設備(ALPS)内などわずかな場所に限られる。当初は全エリアで防護服が義務付けられたことを踏まえると、作業の負担は大きく軽減された。
事故直後の厳しい状況経て 注力してきた作業環境の改善
完了まで30~40年以上の長時間を要する廃炉作業では、今後も予想のつかない新たな難題が生じることが考えられる。そのためには、被ばくへの対策など作業員の安全を確保しながら、労働環境をさらに向上させていくことが求められる。東電はどう現状を認識し、作業員の労働環境を維持していくのか。
廃炉業務の責任者にあたる東電福島第一廃炉推進カンパニー・廃炉推進室長の松本純一氏に話を聞いた。

――2011年の事故当時の第一原発構内の労働環境をどう振り返っているか。
今とは比べ物にならないくらい、相当厳しかった。当時は、(第一原発構内立ち入り者の情報や被ばく状況を管理する)入退域管理棟もなかったので、全面マスクとタイベックスーツ(防護服)を着た状態で第一原発構内の現場の作業に行って、帰っていくという状況だった。
被ばくの問題もあるし、そもそもマスクを付けないといけない状況だった。事故直後からしばらくの間は、医務室のようなものもなかったので、万一体調が悪くなったとか怪我をしたという時に不十分だった。今振り返っても、難しい大変な時期だった。
――労働環境について、どういった点を重視して改善を進めてきたか。
最大の目標は安全最優先だ。作業員の皆様にとっての安全な作業現場を考えて取り組んできた。
第一に被ばくという問題が大きいが、事故当時はどんな作業でも被ばく線量が問題になった。地面をコンクリートやモルタルで覆う「フェーシング」で地面に積もった放射性物質の拡散を防ぐとか、付着した放射性物質を除くために木や葉っぱを切るなど、そういった被ばくの低減に関しては徹底して一生懸命やってきた。
さらに当時は、3月に事故が起きてそのまま初夏、真夏という状況だった。全面マスクとタイベックでの作業だったため、熱中症になる方も多く、休憩場の設置も進めた。ご存知のように、熱中症は適度な休憩と水分補給で防げる。タイベックを脱いで飲み物が飲める休憩所とか、保冷剤を付けるような形で休んでいただけるような環境も整備してきた。
最近は、タイベックでの作業量は少なくなったが、依然として何人かが熱中症になる。作業員には、長年勤めている方もいれば、新しく来る方もいる。そういった方には休憩所の活用や、熱中症対策のルールのようなものをきちんと周知していく。
――軽装での作業エリアが広がったことは、作業員の負担の軽減につながった。
安全面からもなるべく軽装が望ましい。今も4%のエリアは重装備で作業する状況が続いているが、地元の企業がガラス面の広いマスクを開発してくださるなど、従前のマスクに比べて視野の広いマスクもできている。重装備のエリアについても改善を積み重ねていく。
――作業員の方への労働環境に関するヒアリングはどう行っているか。
二通りある。一つは毎年9月から10月にかけて、作業員の方にアンケートを実施し、労働環境の良い悪いというところから、どんなところに不便を感じるかも含めて聞いている。その結果は公表させていただいている。
もう一つは、各企業の所長や、管理をしている方に対し、定期的に困っていることや要望を聞いている。労働環境の面はここまで良くなってきたので、実際の仕事の面で今後の見通しを教えてほしいといった要望が大きい。



