- 2019年02月19日 12:17
インフルエンザ対策にこそ「働き方改革」を - 木村麻衣子

(takasuu/iStock/Getty Images Plus)
2019年1月のインフルエンザ患者数は、過去20年で最多を更新した。ここ2週間ほどでピークは越えたとみられているが、B型を中心に春先までは流行が継続するとみられており、今後も注意が必要だ。テレビやネットでも連日「どうしたらインフルエンザにかからないか」といった趣旨の特集を目にしてきた。
もちろん、かからないに越したことはないし、可能な自衛策をとることは重要だ。しかし、なってしまった人を「自己管理がなっていない」と責めたりしてはいけないし、不安から「過剰」と言える対策までしてまうのも考えもの。感染対策コンサルタント・堀成美さんに、インフルエンザ対策の落としどころとなる考え方、現実的な対策について聞いた。
インフルエンザ、どんな対策が有効?
「まず、基本的な感染症対策の考え方は、『バンドル(束)』で行うということです。できることを少しずつ寄せ集めて……というイメージです。ただし、どこまで取り入れるのかは予算含めて現実的に可能かどうかを検討しなくてはいけませんし、不安を煽って物を買わせる「便乗商売」にも注意が必要です。実験レベルの話と、実際の生活や政策に取り入れるかというのも別の話です」と堀さんは言う。
例えば、うがい。日本では慣例的に対策として推奨されてきた印象だが、実は行政や医療界ではその効果はないとされている。「手洗いはもちろん大事ですが、多くの人は結局そのあと持ち物中で一番汚れていると言われるスマホを頻繁に触りますので…」と堀さん。確かに、スマホを触る度に手を洗ったり、スマホをこまめに消毒するか……と言えば限界がある。マスクも、感染させないためにはある程度の効果は見込めるかもしれないが、感染防止という観点からは完璧ではないともよく言われる。
ではワクチンはどうだろうか。堀さんいわく、「他の国をみわたしても、乳幼児、高齢者、持病のある人、職業上のリスクがある人にはワクチン接種がすすめられているものの、国民全員に強くすすめられていないのも事実です。それほどたくさんのワクチンを生産・確保しているわけではありません。
また麻疹風疹のワクチンなどのような、『打てばほぼ確実に感染を防ぐことができる』というほどは有効性が高くないという現実はあります」と。毎年必ず「ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかった」という恨み節も聞こえてくるが、残念ながらワクチンを打っても絶対にかからないわけではなく、インフルエンザ脳症のような「重症化」を防ぐ効果があるとされている。

厚生労働省の咳エチケット啓発ポスター
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簡単にできる対策で、有効性が高いと思われるのは「咳エチケット」だ。行政等、様々な啓発ポスターもあるが、大前提としては人のいない方を向くこと。咳やくしゃみの飛沫は下に落ちるので、しゃがんで下を向いてするのも良い。
間に合えばハンカチなどで覆う、と書かれた資料が多いですが、間に合わないのが咳やくしゃみじゃないだろうか。他にはマスクを正しく装着すること。手にウイルスを付着させないよう、咳やくしゃみの際に手で覆うのはNG。その手で様々な場所を触ればウイルスを広げてしまう。ひじの内側でカバーする方法もあるが(やってみればわかるが)意外ともれてしまうので注意が必要だ。
ちなみに、「普段健康な成人であれば、異変がない限りはインフルエンザにかかっても無理に病院にかかる必要性はない」と堀さんは言う。タミフルやリレンザ、ゾフルーザなどインフルエンザに対する薬はあるが、それらを服用しなければ治らないわけではないからだ。「インフルエンザかも…」と思い受診したが実はそうでなかった、でも待合室で感染してしまった……というリスクもある。
不調時は休める環境づくりを
残念なことに、「どんな対策をしても、人口の5~10%はインフルエンザにかかってしまうのです」(堀さん)ということだそうだ。もちろん個人でやるべき最低限のマナーとして、咳エチケットなど人に感染させないよう努力する必要はある。それ以外の自衛の部分については、(感染症に)弱い立場の人が守られることは前提として、その人自身がどれだけリスクを受容するか、という観点もあり、そこは個人の価値基準に委ねられる。
「ただし、インフルエンザの補助をする企業でも、たびたびアウトブレイクして問題になる麻疹や風疹から社員が守られているか、その確認や接種のための補助をしているかというとあまりされていない。健康支援や危機管理としてインフルエンザ以外のワクチンにも関心をもってほしいと思います」(堀さん)。
大事なのは、かかってしまったら休むこと。職場や集団生活の場に行かないこと。「ちょっと調子が悪いな…」と思ったら遠慮なく休める環境づくりが重要だ。
主に震災対策とされているBCP(事業継続対策)は、インフルエンザ対策としても有効ではないだろうか。在宅勤務ができるよう仕組みを整えることはまさに役に立つ。子どもがかかってしまって親が休まなければならないケースもあるだろう。子どもの場合、インフルエンザの出席停止日数については「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」とされているが、大人は法的な規定もないため、中には無理に出勤してしまう人も少なくないだろう。
どうしても出社しないといけない場合、大勢の人がいるところにはいかない。開いている会議室などで対応するなど「隔離」と同じ工夫をするのも一つの方策だ。「空間を分けることは、お金をかけずにできる有効な方法です」(堀さん)。
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