- 2019年02月20日 12:57
私たちの地球を守れるか「Z世代」の金曜日学校スト、世界に広がる
[ロンドン発]
「地球に代わりはない(プラネットBはない)」「気候が変動するなら、私たちも変わろう」――「Z世代(ジェネレーションZ)」と呼ばれる10代を中心とした若者たちが毎週金曜日、学校や大学を抜け出して地球温暖化対策を求めて抗議の声を上げている。
米国のドナルド・トランプ大統領が新たな温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱。温暖化対策の先頭に立ったエマニュエル・マクロン大統領のお膝元フランスでは燃料税の引き上げに抗議して「黄色ベスト運動」が燎原の火のごとく広がった。
マクロン大統領は電気自動車への切り替えを促す燃料税の引き上げを断念した。
「もう大人には任せておけない」「無作為のツケを押し付けられるのはたくさん」。英国ではロンドンやブリストル、コーンウォール、スコットランドのハイランド地方など60もの都市や街で学校の授業をボイコットした中学生や高校生数千人が集まった。
「大人になってからでは遅い」議会前の路上を占拠した若者
2月15日の午後、英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、喧喧囂囂(けんけんごうごう)の議論が繰り広げられる英議会の前の交差点は子供たちや若者に占拠され、交通が完全にマヒした。


路上に座り込み、信号機の柱をよじ登り、「ダブルデッカー」と呼ばれるロンドンの名物、赤い2階建てバスの上に立ち上がって「今こそ変化を」と連呼した。若者たちは首相官邸前からトラファルガー広場に向かって行進し、中には警察に連行される女子生徒もいた。

首相官邸の女性報道官は「若い世代が自分たちに影響を及ぼす問題に関わることを皆が望んでいるが、混乱は教師の負担を増やし、教師たちが準備した授業の時間を無駄にする。若者にとって時間は貴重だ」とストライキを直ちに止めて学校に戻るよう解散を促した。
「学校の授業よりもっと大切なことがある。大人になってからでは遅いわ。今、行動しないと私たちの地球を守ることはできない。私たち若者の意見を示し、もっと大きな行動につなげていく必要がある。それがすべての意味を持っている」

中学生のオフィリア・ストロスさん、エラ・エマセンさん、ヘレナ・オニールさん(いずれも14歳)の3人は議会前広場でこう話した。
「私たちの政府は地球を守るために十分なことはやっていない。先生も、学校を抜け出して行動に参加することに理解を示してくれているわ」と話すのは高校生メグ・メイラーさん(17)と中学生ネッド・メイラー君(12)の姉弟だ。
フランスからロンドン芸術大学に留学中のジーン・ブリアンドさん(21)とマリー・シャックさん(19)は「フランスでは『黄色ベスト運動』が広がっているが、同時に温暖化対策に真剣に取り組もうという運動も起きている」と話した。
昨年、英国で女性参政権が認められて100年が経った。議会前広場には女性参政権運動に取り組んだ「穏健派サフラジスト」ミリセント・フォーセット夫人(1847~1929年)の銅像が建てられ、若者たちは銅像の周りで10代の若者に参加を呼びかけた。

金曜日に授業をサボって座り込み
世界に広がったキャンペーンを始めたのはスウェーデンのグレタ・トゥンベリさん(16)。昨年8月から毎週金曜日に学校をサボって、スウェーデン議会前に座り込んでいる。最初グレタさんは独りぼっちだった。しかし座り込み運動はオーストラリアやベルギー、ドイツ、米国、日本など十数カ国に広がった。
グレタさんは昨年9月「金曜日を未来のために。学校ストライキを継続中」とツイートしている。世界的な講演会「TEDトーク」の中でこう呼びかけている。
「スウェーデンのような富裕国は毎年少なくとも15%のペースで温室効果ガスの排出を減らし始める必要がある。そうして初めて(パリ協定で定められた)気温上昇を産業革命前と比べ摂氏2度未満に抑えることができる」
「ほとんど語られていない事実がある。我々は6回目の大量絶滅の危機の最中にある。最大で200種の生物が毎日絶滅している。今日の絶滅率はこれまでノーマルとみられていたレベルの1000~1万倍に達している」
「今日の温室効果ガスの排出量からすると、富裕国は6~12年のうちに排出量をゼロにする必要がある」「2078年、私は75歳の誕生日を迎える。私の子供や孫たちが、なぜ、今(18年に)、行動を起こさなかったのと私を問い詰めるかもしれない」
「希望より行動を。今こそ行動を起こそう。行動を起こせば希望は現実になる」
米フロリダ高校銃乱射事件が発端で世界に広がる
気候変動で最も大きな影響を受けるのはグレタさんらZ世代である。グレタさんは昨年12月、ポーランド南部カトヴィツェで開かれた第24回気候変動枠組条約締約国会議(COP24)でこう訴えている。
”You are not mature enough to tell it like it is. Even that burden you leave to your children.”
— Greta Thunberg (@GretaThunberg) 2018年12月14日
Here’s my full speech in front of the UN plenary at #COP24 .https://t.co/f0gxp0h3i2#ClimateStrike #FridaysForFuture #SchoolStrike4Climate #ClimateJustice pic.twitter.com/aDhqNrlSIp
「あなたは自分の子供たちを何よりも愛していると言うかもしれない。にもかかわらず、あなたは子供たちの目の前で彼らの未来を盗み続けている」
米シンクタンク、ピュー研究所は米国の世代を次のように区分する。
グレート世代(1927年以前生まれ)
サイレント世代(28~45年生まれ)
ベビーブーマー(46~64年生まれ)
X世代(65~80年生まれ)
ミレニアル世代(81~96年生まれ)
Z世代(96年以降生まれ)
米フロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で生徒や教師ら17人が殺害され、19歳の卒業生が逮捕された銃乱射事件を契機に昨年3月、高校生らが銃規制の強化を求めるデモ「私たちの命のための行進」を世界の主要都市で繰り広げた。
トランプ大統領が「教師が特別な訓練を受け、銃を持って学校にいれば学校は銃器所有が禁止された場所ではなくなる」と教師による銃武装を求めたことに反発。半自動小銃を含め攻撃用兵器や大量の弾丸を装填できるマガジンなど殺傷能力の高い火器の販売禁止を求めた。
人種差別撤廃に取り組んだ黒人公民権運動指導者マーチン・ルーサー・キング牧師(故人)の、9歳になる孫娘ヨランダ・リネー・キングちゃんも参加した。
政治家をロールモデルと考えるZ世代はわずか
ピュー研究所の調査ではZ世代とミレニアル世代はそれより上の世代と全く異なる価値観と考え方を持っていることが分かる。少子高齢化が進む日本と違って、移民社会の米国ではZ世代の人口が一番多い。

Z世代の多くが2001年の米中枢同時多発テロのあとに生まれ、08年の世界金融危機を体験。インターネットのない世界を全く知らず、ソーシャルメディアに慣れ親しんでいる。だから共感がアッと言う間に広がるのだ。
政治家を自分のロールモデルと考えているZ世代はごくわずかだ。銃規制の抗議活動を見てもZ世代が世界を変えていく大きな可能性を秘めているのは明らかだ。

英議会前を占拠した10代の子供や若者たちと話していて、随分しっかりしているなという手応えと無尽蔵のエネルギーを感じた。「大人にはもう任せておけない」と行動を始めたZ世代が温暖化対策でどのようなインパクトを持てるのか注目したい。



