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大坂なおみの拙いスピーチに感動するワケ

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テニスの四大大会連覇と世界ランキング1位を達成した大坂なおみ選手はスピーチが苦手だ。2018年3月のBNPパリバ・オープンでの優勝スピーチでは、緊張のためスポンサーへの謝辞を忘れそうになり、「史上最悪の優勝スピーチ」と自嘲したほどだ。だがそのスピーチに対して会場からは拍手が起きた。トップ・プレゼン・コンサルタントの永井千佳氏は、「プレゼンで緊張を克服する必要はない。むしろ緊張を活かせば、成功することも多い」という――。

※本稿は、永井千佳『緊張して話せるのは才能である』(宣伝会議)の一部を再編集したものです。


2018年3月18日、BNPパリバ・オープン女子シングルスでツアー初優勝を果たし、スピーチする大坂なおみ(写真=AFP/時事通信フォト)

プレゼンのゴールは「人を動かすこと」

これから立ち向かうプレゼンは、社内の企画会議でしょうか? それともマスコミを呼んでの記者発表でしょうか? 聴き手の規模は大小があると思いますが、「プレゼンのゴール」は共通しています。

それは、人を動かすことです。

ここで私が実際に見た、2人の経営者を紹介させてください。

日本を代表する、ある製造業の社長さんのプレゼン。満面の笑みに、自信満々の足取りで舞台を練り歩き、難しい言葉もスラスラと立て板に水のように出てきます。

「世界では競争がますます激しくなっています。我が社はさらなる経営変革を推し進め、グローバル企業を目指すべく邁進していく所存でございます」

まるでアナウンサーのように言葉は完璧。ただ客席を振り返ると、寝ている人がチラホラいました。

一方で勢いよく舞台に駆け上がった、ヤマダ食品(仮名)の新社長のプレゼン。

「み、みなさん、こんにちは! ヤマダシャ? ヤマダッ! 食ッ、品ッ! の鈴木です!」

お世辞にもスマートとはいえません。マイクを持つ手は小刻みに震え、気の毒なほど緊張しています。しかしプレゼン後、新社長の前に名刺交換の列ができました。不思議なことに極度に緊張していた新社長の話は、聴き手を揺り動かしたのです。プレゼンは大成功。

その後、この会社の業績は上がり続けています。

緊張は「才能」である


永井千佳『緊張して話せるのは才能である』(宣伝会議)

プレゼンの目的は「上手に話すこと」ではなく「人を動かすこと」。緊張しても、話し下手でも、人は動かせるのです。

私は経営者のプレゼン・コンサルタントとして、講演会でお話しする機会があります。講演後にこっそりいただく質問で一番多いのは、これです。

「プレゼンで緊張しないようにするには、どうすればいいですか?」

人前で緊張しながら話すことは、すごく辛いもの。でも本当は、緊張は自分の才能を引き出すために必要なものなのです。むしろ緊張を活かせばプレゼンで伝えたいことが伝わり、聴き手の心を動かせます。

緊張は、克服するものではなく活かすもの。

緊張は才能である。

こう言うと「なにそれ?」「まさか!」と驚かれます。子供の頃から「緊張しないでリラックスして」と言われ続けて、「緊張を克服しよう」と考えている人が多いからです。

世の中では「緊張は悪いもの」と思われていて、多くの方々が「緊張しない方法」を教えてもらおうと相談に来る方もいます。ですから「緊張していい」と言うと驚いてしまうのです。

緊張が「悪者」になっている

確かに緊張すると、「身体が硬くなる」「手足が震える」「手が冷たくなる」「頭に血が昇る」「しゃべりにくくなる」「集中力が散漫になる」「呼吸が苦しくなる」「心臓がドキドキする」「喉がカラカラになる」などの症状が出てしんどいものです。

ですから誰も「緊張は良いものだから、どんどん緊張しなさい」とは言いません。

緊張するとテストで失敗したり、スポーツで良い成績が出せなかったりすると思われているので、学校では、「緊張しないようにリラックスしなさい」と教えます。「緊張して受験やオーディションに失敗しては大変」と本気で心配してくれているのです。

緊張は「悪者扱い」なのです。

オリンピックのテレビ番組でも、メダル期待の選手に解説者は「4年に1度の大舞台ですし緊張しているようですね」「リラックス。集中です」とコメントします。また、メダルをとった選手もインタビューでは、大抵「あまり緊張しなかったですね」「リラックスして楽しめました」と言います。

緊張は悪いもの、避けるべきもの、ということは、今や常識なのです。

私もある時期まではそう思っていました。でもその考えは大間違いだったのです。

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