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NHK組織大改変で“反権力”職員72名が提出した反論意見書

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【組織改編で騒動が勃発(時事通信フォト)】

【NHKの組織改編案】

「安倍一強」と言われる政治状況は、権力とメディアの関係性もがらりと変えた。露骨な圧力など加えずとも、メディアの側が権力にすり寄る構図が鮮明になっている。NHKの「組織大改編」をめぐる騒動は、その一面を露わにした。

【図解】NHKの組織、こう変わる(改編案)

◆部の全員が声を上げた

 ここに「要望書」と題した一通の書面がある。差出人は、NHKの文化・福祉番組部職員一同。宛先は同局の制作局局長だ。要望書にはこうある。

〈今回の組織改正案について、文化・福祉番組部では1月31日・2月4日に、〇〇(注・原文では本名)部長より説明会が開かれました。(中略)福祉と文化が切り離されることについて驚きと強い懸念を抱いています〉

〈現在部員の全員(管理職を含む)が、現状の説明では納得がいっていないと考えています〉

〈NHKの番組全体の多様性が失われることを懸念する〉

 要望書の中で、局長に対し、〈意見交換の場を求める〉とした部員は72名。海外留学中の部員を除く全員である。NHK局員が語る。

「現在、NHKでは番組制作体制の大幅な見直しを進めています。すでに上層部は組織改編案を作成しており、今年6月から新体制をスタートする方針です」

 NHK(EテレやBSを含む)の自局番組制作は、政治部や社会部、経済部などニュース系番組を担当する「報道局」と、ドラマやバラエティ、情報番組を担当する「制作局」の2局によって行なわれている。今回、“改革の本丸”となったのが後者の制作局だった。

 改編案には、制作局の8部署(青少年・教育番組部、文化・福祉番組部、経済・社会情報番組部、生活・食料番組部、科学・環境番組部、ドラマ番組部、エンターテインメント番組部、音楽・伝統芸能番組部)を全て廃止し、新たに6つの「制作ユニット」に再編するとの計画が示されている(図参照)。

「『従来の組織は縦割りで、専門性は身につくものの、幅広い制作スキルが育たず、局員の柔軟な運用もできない』という説明です。各ユニットには部長に相当するジャンル長がいて、人事発令がなくても、それぞれのジャンル長の判断でユニットをまたいだ異動ができるようになる」(NHK制作局の局員)

 縦割り体制の見直しを目的とした組織改編という理由はもっともに聞こえるが、今回の改編には、それとは“別の意図”が見え隠れするという。

「改編と言っても、旧来のほとんどの部署は横滑りで新ユニットに移行する。例えば、『青少年・教育番組部』は第1ユニットの『教育・次世代』に、『エンターテインメント番組部』と『音楽・伝統芸能番組部』は第5ユニットの『音楽・芸能』に改編されるので、業務内容はこれまでと大きく変わらない。

 しかし、『文化・福祉番組部』だけは複数ユニットに分割されることが提案されており、事実上の“解体”です。それについては明確な説明がなく、文化福祉の職員から不満の声が上がり、反論の意見書を出すことになった。70名以上の部員全員が声を上げるのは異例のこと。この改編は文化福祉の解体を狙い撃ちにしたものだったのではないか、との疑いが部員たちの中にあるのです」(文化・福祉番組部に在籍経験のある局員)

 リストラ部署の恨み節にも聞こえるが、文化・福祉番組部の置かれた状況を知ると、背景には複雑な構図が浮かび上がる。

◆加速する「安倍シフト」

 文化・福祉番組部の主な制作番組には様々な社会問題を取り上げるドキュメンタリー番組『ETV特集』や、LGBTや障害者の悩みなどマイノリティに寄り添う『ハートネットTV』などがある。そうしたテーマを扱う中で、時に「反権力」を強く打ち出すことも厭わない──というのが局内での評価だ。

「『ETV特集』では、憲法九条や日本の戦争責任、女性の権利などを重点的に取り上げています。政権のスタンスと真逆の番組も多く、局内有数の“反権力部署”とも呼ばれます」(同前)

 2011年3月の東日本大震災後は、福島第一原発事故による放射能汚染の実態や、反原発報道に力を入れ、同年9月に放送したETV特集『シリーズ原発事故への道程』は2012年の科学ジャーナリスト大賞を受賞した。

 文化・福祉番組部が“反権力”の姿勢を見せる一方で、2012年12月に第二次安倍政権が誕生すると、局としてのNHKは「政権寄り」に傾斜していった。

 安倍首相の就任1年目となる2013年10月には、小学校時代の安倍首相の家庭教師を務めたJT顧問の本田勝彦氏をはじめ、小説家の百田尚樹氏、海陽中等教育学校長の中島尚正氏ら“安倍シンパ”がNHKの経営委員に次々と就任。翌年1月には、籾井勝人氏がNHK会長に就き、「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」発言が物議を醸した。

「第二次安倍政権の誕生以降、NHKでは政権に近い政治部出身者の声が大きくなり、2017年4月に政治部長経験者の小池英夫氏が報道局長に就任して『安倍シフト』に拍車がかかった。昨年4月には“安倍番”を長く務めた政治部の岩田明子記者がNHK会長賞を受賞するなど、官邸との距離の近さが際立つようになっている」(NHK社会部記者)

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