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ゴーン後の世界自動車産業の勢力図を占う



 日産のゴーン元会長は11月の逮捕以来、東京拘置所に勾留されたままだが、市場はいつまでも日本の人質司法などと付き合っていられないと判断したようだ。

 ゴーン自身は依然として容疑の不当性を訴え、弁護人を「無罪請負人」の異名を取る弘中惇一郎弁護士に代えるなど、全面対決の姿勢を崩していないようだが、いくら推定無罪と言っても、競争の厳しい自動車市場で、いつまでもこの事件の帰趨を待っていられなかったのはやむを得ないことかもしれない。

 今週、ゴーン氏の後任としてルノーのCEOに就任したジャンドミニク・スナール会長が来日し、14、15の両日、日産の西川広人、三菱自動車の益子修両CEOと協議を始めるなど、ゴーン後を見据えた動きがいよいよ本格化してきた。

 今回のゴーン氏の容疑の真偽については、いずれ公判の場で真実が明らかになるだろう。現役の経済人をこれだけ長期にわたり勾留し、事実上失脚させておいて、万が一無罪となった場合、国は想像を絶するほど巨額の損害賠償責任が問われそうだが、それもこれも現時点では裁判を見るまでは何とも言えない。現実がもはや市場はその帰趨を待っていられないと判断し、動き出しているということだ。

 現在、世界の自動車産業において、ルノー、日産、三菱の3社による「ルノー・日産・三菱連合」は、グループ別自動車販売台数でフォルクルワーゲン・グループ、トヨタ・グループに次いで世界第三位の地位にある。1,000万台あまりを売り上げ、世界の自動車市場の10%のシェアを誇る。

 1999年に破綻寸前の状態にあった日産を救済した経緯から、現在ルノーが日産の株式の43%を持っており支配的な地位にある。しかし、自動車メーカーとしての力は、ゴーン氏の元でV字回復を果たした日産とルノーの力関係は完全に逆転している。また、3社の提携関係も、あくまでカルロス・ゴーンというカリスマ経営者が3社のトップを兼務しているために成り立っている緩やかな連合に過ぎない。

 今回の日産と特捜部の司法取引によるゴーン追い落とし劇の背後では、フランスのマクロン大統領とゴーン氏の間で、2022年までルノーのCEOの地位に留まる条件として、ゴーン後も連合が続くような態勢を作ることが約束されたという。ゴーン個人の力に頼らずに日産を傘下に収めておくためには、ルノーが日産の50%超の株式を握るか、持ち株会社を作り、それをルノーが支配できる形を取る必要があった。

 自動車メーカーとしては自分たちよりも格下と見ているルノーの傘下に恒常的に組み込まれることを嫌った日産が、独裁的な立場の乱用が目に付いていたゴーンを後ろから刺したのが、今回の事件の真相だったのではないかと考えられている。日本政府も、日産の国産技術やノウハウをフランスに持って行かれることをよしとせず、日産と特捜部によって描かれたこの事件の捜査にゴーサインを出したとしても不思議はない。

 しかし、ゴーン氏の類い希なキャラクターに依存した連合は、要を失った今、それを束ねる力が弱まっている。だが、その一方で、現在の厳しい競争にさらされている世界の自動車市場では、ルノーも日産も三菱も、とても単体で生き残っていける力はない。そのため、当面は連合を維持されるものと見られている。

 しかし、経済ジャーナリストで世界の自動車産業に詳しい井上久男氏は、ルノー、日産、三菱の3社はどれも競争力に欠けるため、この連合は弱者連合になり、いずれ草刈場にされる可能性が高いのではないかと語る。

 世界はCASEの頭文字で表される、インターネットによってつながれた(Connected)、自動運転(Autonomous)、シェア(Shared)、電気気動車(Electric)の時代に急速にシフトしている。EVに特化したテスラの他、自動運転時代を見据えて、グーグルやアマゾンといったIT企業の参入が相次いでいる。彼らの研究開発費はトヨタのそれを遙かに凌ぐレベルで、現在の業界の秩序がこのまま維持されるとはとても思えないと井上氏は語る。

 ゴーン氏の失脚によって世界第三位の自動車販売台数を誇るルノー、日産、三菱連合はどうなっていくのか。そもそもこの連合にはどういう意味があり、これが解体した場合、世界の自動車市場にどのような影響が出るのか。現在の自動車メーカーはCASE時代に生き残れるのか。経済ジャーナリストとして長年にわたり世界の自動車産業をウオッチしてきた井上氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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