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統計不正、特別監察委員会は即解散せよ - 中西 享 (経済ジャーナリスト)

厚生労働省による「毎月勤労統計」の不正調査を検証する特別監察委員会について、いくつもの第三者委員会を担当してきた久保利英明弁護士(日比谷パーク法律事務所)は15日に日本記者クラブで講演、「特別監察委員会の委員長が厚労省から補助金をもらっている外郭団体理事長なのは問題だ。この委員会は真相究明から逃れるための『隠れ蓑』で、即刻、解散すべきだ」と厳しく指摘した。

(JaneUk86/gettyimages)

報告書を格付け

また「毎月勤労統計」の調査が不適切だった問題で、総務省が厚労省から経緯や今後の対応などについて聞き取りを行ったことについて、役所が違っても同じ中央官庁の官僚が調査することは手心が加えられる恐れがあるため、好ましくないとの認識を示した。

久保利弁護士は1998年から企業不祥事などの原因を究明するいくつもの第三者委員会の委員長などを務めてきた。しかし、21世紀に入ってからも企業不祥事の頻発に伴い、第三者委員会が利用されるようになった。経営者の依頼により、その責任を回避し、隠ぺいするものが散見されるようになったため、多くの第三者委員会の主要な構成メンバーとなっている弁護士や弁護士会の信用を損なう結果になるとして、久保利弁護士が中心となり2011年3月に第三者委員会のガイドラインを公表した。

それでも企業不祥事に関して、実態の伴わない名ばかりの第三者委員会報告書が多く出されるようになったことから、14年に第三者委員会報告書の内容を格付けする「第三者委員会報告書格付け委員会」を作り委員長を務めている。既に約19件の報告書をチェックして格付けを行い、今後も続ける。調査に数カ月もの時間をかけ、真相を究明し、再発防止策も明示した報告書もあるが、そうでない報告書もあるという。最近は、「報告書を公表しない第三者委員会もある」と指摘、これでは何のための委員会なのか理解できないとの見方を示した。

中立性に疑念


 久保利 英明(くぼり・ひであき)氏 1967年司法試験合格、68年東大法学部卒、89年度の第二東京弁護士会副会長、97年日弁連研修委員長、98年日比谷パーク法律事務所開設、2001年度の日本弁護士連合会副会長、04年~15年大宮法科大学院大学教授、15年桐蔭法科大学院教授(写真・日本記者クラブ提供)

久保利弁護士は第三者委員会の役割について(1)調査を徹底して行う(2)本当の原因が何だったのかを究明する(3)再発防止策の提言―の3点を挙げた。勤労統計の不正についての厚労省職員に対する聞き取り調査で、厚労省幹部の官房長が同席していたことは「厚労省は第三者委員会がどういうものなのかまったく分かっていない」と述べ、調査の中立性に強い疑念を示した。

特別監察委員会のメンバー構成について、委員長が厚生省所管の外郭団体の理事長をしていることを問題視、理事長である以上は、特別監察委員会の委員長の資格はないとの見方を示した。久保弁護士は、第三者員会である特別監察委員会の委員長が厚労省の外郭団体の理事長が就任していては、独立性、中立性を確保した調査ができないとみており「特別監察委員会は即刻、解散すべきだ」と切り捨てた。

国会も調査を

その上で久保利弁護士は「世の中は第三者委員会に対して厳しい内容の報告書を求めており、第三者委員会が調査対象を厳しく批判するような報告書を出すことで、調査対象の組織や会社は出直すことができる。しかし、第三者委員会が厳しい報告書を出さないと、真相究明から逃げようとしてしまう。厚労省の特別監察委員会は真相を隠すための『隠れ蓑』になっており、『隠れ蓑』をはがすためにマスコミはもっと追及してほしい」と述べ、特別監察委員会が本来の役割を果たしていないとの見方を示した。

また久保利弁護士は「民間の場合、不正を行った社員は罰則が適用されるが、国家公務員の場合は適用する罰則がない」と述べ、今回の統計不正問題について誰も責任を取らないことへの懸念を示した。

また福島第一原発事故を検証した国会事故調査委員会を例に挙げ、今回のような統計調査不正問題では立法府である国会も立ち上がるべきで、「政局に絡めるのではなく、国会としても不正を正すべきだ」との考えを明らかにした。

重要なビジネスに

食品偽装や検査データの改ざんなど企業不祥事が後を絶たないことから、不祥事が表面化する度に弁護士を構成メンバーとする第三者委員会が立ち上げられている。企業のM&A(買収・合併)の件数が減る中で、久保利弁護士によると、弁護士にとって第三者委員会の報告書をまとめる業務は期間が長期になることから重要なビジネスになりつつあるという。その一方で、第三者委員会の依頼者である会社側に意に沿うような報告書を出していては、弁護士として中立性を疑われることになる。弁護士は今後、第三者委員会報告書の作成に当たっては、第三者委員会の役割をどのように見るかが問われそうだ。

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