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それでも、前を向くJT

日本たばこ産業(JT)のコーヒー製品の最新CMが面白い。
CMキャラクター・竹野内豊の格好良さとコピーのゆるさが生み出すギャップが結構笑える。

通勤車内などで見た方の多いだろうが、一例を挙げるとこんな感じ。

・まさにサプライズだった。         うれしくない方の。
・今日の占いが1位だった。          知ったのは夜だったけど。
・やまない雨はない。            傘を忘れるたびに思う。
・いいか悪いかは別にしてと前置きされて   悪いことばかり言われる。
・やらずに後悔するくらいならやって後悔する方がいい。       
                      どちらにしても後悔するのだが。
・誤解を恐れずに言った。          誤解しかされなかった。
・泣く彼女を振り切るように別れた      振り返ると彼女が笑って電話をしていた。
・「結果より過程だ」            と悪い結果が出た時は誰も言ってくれない。
・画期的なアイデアが浮かんだ。       昨日終わった案件の。
・告白された。               過去形で。

さてそのJTだが、5日付の日経新聞によれば、M&Aを軸に海外展開を加速、株式市場では時価総額がNTTに急接近しているとのこと。JTは国内でのたばこ市場の縮小を見据え、米RJRナビスコの海外たばこ事業、英ガラハーなど、90年代半から計3兆円以上を海外企業の買収に投じ、海外の事業基盤を拡大。経営の国際色を強めるとともに、海外で収益のほぼ半分を稼ぐ体質にしたことなどが評価されているらしい。
企業の勢いが、CMの出来にも影響しているのか。

奇しくも、同じ5日付の日経新聞では「のれん代、経営への影響増大 償却負担に減損リスクも」という記事で、M&Aの結果膨らむ「のれん」への対処が重要な経営課題となっていることを取り上げている。記事中に、のれんの金額が多い企業をランキングしており、JTは堂々の1位(2011年12月末)。

JT      9,931億円
パナソニック 8,834億円
ソフトバンク 7,923億円
NTT   7,525億円
キリンHD  7,137億円
武田     5,220億円
ソニー    4,523億円
富士フィルム 3,349億円
日立     2,329億円
NTTドコモ 1,973億円

偶然にも昨日の私の記事で、JTはIFRSの任意適用によりのれんの定時償却を停止。年間830億円もの償却費が浮く話をご紹介したところ。のれん最大のJTにとってIFRS任意適用は非常に納得的でもあり、株価はこうした取組も評価しているのであろう。

ところがそのIFRSだが、JTのように適用メリットが顕著に出る企業では任意適用に向けた準備を進めるのだろうが、日本における強制適用はどうかと言うと以前から見てかなりトーンダウンしている感じがする。

次のリストを見て欲しい。

・ 利益概念;ノンリサイクリングによる当期純利益の概念の変質など
・ 注記及び開示;過大な注記及び開示の要求
・ 従業員給付;数理計算上の差異のノンリサイクリング処理など
・ 無形資産;開発費の資産計上
・ のれん;非償却
・ 外貨換算;機能通貨の規定は、企業によっては、多大なコスト負担の懸念
・ 有形固定資産;減価償却(取替法を含む)や減損の戻し入れなど
・ 金融商品;非公開株式の公正価値測定など
・ 収益認識;出荷基準での収益認識ができなくなる懸念や、
  プロジェクト管理と整合する工事進行基準が適用できなくなるなど
   実態に合った会計処理が困難になる懸念など
・ 財務諸表の表示;キャッシュフロー計算書の直接法表示強制等についての議論再開への懸念など
・ リース;全リースに対して、ビジネスの実態を勘案せずに、一律の処理(BS計上やPL処理)を要求する提案への懸念など

これは今年の2月29日付 (社)日本経済団体連合会 企業会計委員会企画部会「国際会計基準(IFRS)に関する調査結果の概要」にあった、関係企業/団体から寄れられた「IFRSで懸念される基準」のアンケート結果。
要するに、IFRSの特徴と思われるほぼ全ての項目に対して、日本の産業界から拒否反応が示されていると言って過言ではない。

こんな話を持ち出すまでもなく、IFRSへの風圧は強まりつつある。最近はこんな本も出版された。

リンク先を見るIFRSはこうなる―「連単分離」と「任意適用」へ
 
東洋経済新報社

私はどちらかというとIFRS導入に対して消極的な立場を取っているが、この本では私が漠として抱いているIFRSへの「違和感」を具体的な事例をもとにわかりやすく解説してくれている。結論を急げば、本の副題にあるように著者は今後IFRSは「連単分離」と「任意適用」となると見ている。

IFRSそのものに対する風圧は高まっているが、それでも任意適用で前を向くJT。
缶コーヒーでも飲みながらIFRSの行く末を案じるのも一興かも知れない。

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