- 2019年02月15日 09:15
豚コレラを日本に持ち込む中国人のモラル
2/3■なぜ「ワクチンは最後の手段」と考えられているか
昨年9月の岐阜県での発生では、清浄国の認定が一時停止になった。この一時停止では最後の発生から3カ月間、発生がなければ清浄国に復帰できるが、ここでワクチンを使うと、輸出禁止が長期化し、日本の養豚業界は大きなダメージを受ける。ワクチン接種は長い目で見た場合、リスクが高い。
ワクチンを打たれたブタの肉に私たち消費者が食欲や購買欲を感じるかどうかという問題もある。
ワクチンはオールマイティーではない。農水省は、ワクチン接種を最後の手段として考えているが、沙鴎一歩はその考え方に賛成する。
農水省によれば、いまのところブタの殺処分は計1万6000頭で、これは全国で飼育しているブタの0.2%に過ぎず、需給や価格への影響もないという。何とかワクチンを使わずに今回の豚コレラ禍を鎮圧したいものである。
■「ワクチンの経口接種」の効果は疑わしい
豚コレラのワクチンは、病原体の豚コレラウイルスの毒性を弱めた生ワクチンだ。病原体を分解して作る不活化ワクチンとは違う。生ワクチンは実際にウイルスに感染させるわけだから、完璧な免疫(抗体)ができ、二度と感染しなくなる。しかし、弱毒化してあるとはいえ、病気を発症する危険は常にある。
知り合いの感染症学者から聞いた話だが、養豚業界からは今回の感染の背景にある野生のイノシシに対し、「ワクチンを経口接種すべきだ」との声も上がっているという。イノシシの好む香りを付けたワクチン入りのえさを土中に埋めて食べさせようというのだ。養豚場のブタなら注射できるが、野生のイノシシへの注射は難しいからだ。
ただ実際にワクチンの経口接種を試みたヨーロッパの国では、そんなに効果が上がらなかったそうだ。やはり野生動物は人の思い通りにはならないのである。
感染している野生のイノシシがえさを求めて養豚場に侵入し、ブタが感染した後、感染はどう広がったのだろうか。一度、豚コレラが発生すると、複数の養豚場で次々と発生するためにその感染ルートの割り出しが困難になる。だからと言って感染ルートを突き止める疫学調査をあきらめてはならない。感染ルートが分かれば、それを遮断することで感染を予防できるからだ。
■「豚コレラ」での消費者離れを食い止める方法
豚コレラの発生は今年2月6日には、愛知県豊田市の養豚場と、この養豚場から子豚が出荷された長野、滋賀、愛知、岐阜、大阪の5府県の養豚場で確認された。5府県の養豚場での感染の発生もとは、豊田市の養豚場だ。この養豚場には先月、感染が確認された岐阜県内の2軒の養豚場と取引のある飼料会社の車両が出入りしていたという。農水省はこの車両にウイルスが付着していた可能性があるとみている。
豚コレラウイルスの感染力は強く、車のタイヤや人の靴底に付着したウイルスによって感染が広まるケースがある。今後は全国の養豚場で車や人に対する消毒を徹底したい。
さらに養豚業者にとって豚コレラ感染と同じくらい怖いのが風評被害である。鳥インフルエンザが流行すると、トリ肉や鶏卵の消費が落ち込み、養鶏業者に大きな痛手となる。かつて政府は「トリ肉や鶏卵を食べても大丈夫です」と呼びかけたが、消費者離れは止められなかった。
豚コレラも同じである。政府はブタ肉の消費が落ち込まないよう対策を練る必要がある。幸いなことに、豚コレラ禍による風評被害の実害はまだ出ていない。いまがチャンスだ。消費者に豚コレラの正しい知識を学ぶよう早急に呼びかけたい。その際、豚コレラウイルスは、変異を繰り返して人の新型インフルエンザウイルスとなる鳥インフルエンザウイルスと違って、人には感染しない旨を重ねて訴えてほしい。とにかく先手、先手と対策を打つことが、感染症との戦いには欠かせない。
■獣医師らがすぐには豚コレラを疑わなかった
新聞各紙の社説はどう書いているか。
「防疫態勢に甘さがあったと言わざるを得ない。関係機関は、感染ルートの解明や養豚場の衛生管理の徹底を急ぐ必要がある」
こう書くのは2月10日付の毎日新聞の社説だ。見出しは「豚コレラの感染拡大 防疫態勢の甘さが招いた」である。この防疫態勢の甘さとは何を指すのか。
「岐阜と愛知では、豚を診た獣医師らがすぐには豚コレラを疑わず、初動が遅れた。愛知の養豚場では、豚の体調の異変を認識しながら出荷が続けられ、感染を広げてしまった」
感染拡大を許さないためには、何よりも初動が大切だ。
「豚コレラの初期症状は発熱や食欲不振などで、他の病気と区別しにくいとされる。だとしても、愛知の事例は理解に苦しむ。隣の岐阜で豚コレラが発生したことに県や農家が危機感を持っていれば、もっと迅速な対応ができたのではないか」
初動の遅れを防ぐには、日頃からの危機管理が重要となる。
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