記事

安易な理由は少ないが、障害児は続々

赤ちゃんポストに81人、安易な理由も続々(読売新聞)

 親が養育できない子供を匿名で託せる慈恵病院(熊本市)の「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)について、熊本市の専門部会は29日、運用状況の検証報告書を公表した。

 2007年5月の運用開始から11年9月までの約4年半に預けられた子供は81人(男児40人、女児41人)で、うち8人は障害児だった。報告書は、子供の遺棄防止などの効果を認める一方、「留学」など安易な理由で預けるケースもあるとして対策を求めた。

 報告書によると、預けられた81人のうち、病院の調査や連絡で67人の親が判明、13人は家庭に戻った。

 67人の親の居住地は熊本県内6人、同県を除く九州20人、関東18人、近畿8人、中部8人、中国5人など。母親の年代は20歳代が34人で最も多く、30歳代(18人)、10歳代(10人)の順だった。

 この2年間に預けた30人の親に理由(複数回答)を聞いたところ、「生活困窮」「未婚」が各9件、「世間体・戸籍に入れたくない」「パートナーの問題」が各6件、「不倫」が4件だった。

 報告書は、ゆりかごで救われた子供が多いことを認める一方、「仕事をする上で預ける施設が見つからない」「留学のため子供を育てられない」といった安易な理由で預けたケースに触れ、親が事前に相談できるような対策を求めた。

 さて、「安易な理由も続々」と見出しには銘打たれて報道されているわけですけれど、実際のところはいかがなものでしょう。まず4年半で81人という数値はどうなのか、1年で約20人弱、半月に一度あるかないかという頻度です。子供を預けることを「あってはならないこと」と考える人にとっては多いと思えるものなのかも知れません。しかるにこれが役所の仕事であったなら、半月に一度くらいしか利用されない代物なんて予算の無駄と切って捨てられるのが常でもあります。これといった比較対象を挙げにくいものではありますが、一概に多いとも言えないのではないでしょうかね。

 判明した親67人の居住地は熊本県内6人、同県を除く九州20人、関東18人、近畿8人、中部8人、中国5人「など」と伝えられています。所在不明の2人分が気にならないでもありませんが、ともあれ利用者は地元や隣接する県に止まっていないことが分かります。「安易な理由~」との報道ですけれど、わざわざ遠く離れた居住地から熊本まで子供を託しに行った親の気持ちが「安易」であるとは、私にはとうてい思えません。事情を知らない赤の他人には安易に見えることがあるとしても、当事者たる親には相応の事情があったものと推測されます。

 率直に言えば、処分に困った子供を戸塚ヨットスクールなど自立支援施設の類に捨てる親に比べれば、この「こうのとりのゆりかご」に子供を預ける親の方が256倍くらいマトモに見えるのですが、世間的には反対のようです。まぁ、日本は若ければ若いほど優遇される社会ですから、生まれたばかりの子供ほど尊いものはないのでしょう。子供を守れと喧しい人は多いですけれど、おっさんを守れ、おばはんを守れと声を上げてくれる人なんていないですから。それだけに子供を「捨てる」ことには相応の厳しい視線が待っています。

 なお子供を預けた理由は「生活困窮」「未婚」が各9件、「世間体・戸籍に入れたくない」「パートナーの問題」が各6件、「不倫」が4件とのこと。経済的な貧しさや今なお残る婚外子差別等々、こういった問題を放置してきた社会に、この赤ちゃんポストの利用者を責める資格はないと言いたいですね。これに加えて「『仕事をする上で預ける施設が見つからない』『留学のため子供を育てられない』といった安易な理由で預けたケース」が紹介されています。おそらくは1件か2件しかないであろう「安易な理由」を持ち出して「続々」と見出しに掲げてしまう読売記者の感性には恐れ入るばかりです。

 それ以前に「仕事をする上で預ける施設が見つからない」「留学のため子供を育てられない」は本当に安易な理由なのでしょうか。子供を預けることができなければ仕事などできるはずがない、だからといって病気でもなければ生活保護を受給するのは極めて難しいのが日本の現状です。収入がないのに、どうやって子供を育てろというのでしょう? 「仕事をする上で預ける施設が見つからない」とは至って深刻な問題に見えます。「留学のため~」だってそう、子育てと両立するのは著しく困難なはずです。

 じゃぁ留学を止めろと世間は安易に迫るものなのかも知れません(日頃は若者の内向き志向が云々と嘆いてみせるくせに!)。しかし、何でもかんでも子育て優先で親(だいたいの場合は母親)が子供のために自分を犠牲にしなきゃいけない風潮というのはどうなのかと思います。親が独占的に子供を育てるのではなく、もうちょっと社会が子供を育てていく姿勢があっても良さそうなものではないでしょうか。それが許されないのであれば、子供を産む資格があるのは子育てを全てに優先して他の諸々を諦める覚悟のある人だけになってしまいます。それじゃぁ、少子化が進むのも当たり前ですよね。お気楽に子供を作っても、その後は何とかなる社会じゃないと少子化は止まりません。

 預けられた子供の内訳は男児40人、女児41人とのことで、性別による扱いの違いは生じていないものと推測されます。一方、81人のうち8人は障害児だったそうです。これは、明らかに多いです。発達障害とか、かつては障害と見なされてこなかったものでも障害として認知されることが増えてきた昨今、いずれは完全無欠な万能超人以外は誰もが障害者になってしまうのではないかと思えないでもないのですが、ともあれ81人中8人が障害児というのは、割合として目立ちます。見出しにピックアップするとしたら、こちらでしょう。安易な理由云々と憤ってみせる暇があるのなら、子供に障害があっても何とか育てられるような支援体制の構築とか、そういうものを考えるべきではないかと。

あわせて読みたい

「赤ちゃんポスト」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    アビガン承認煽る声に医師が苦言

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    賭け麻雀苦言の労連トップが朝日

    和田政宗

  3. 3

    外国人選手が逮捕 試合なく薬物

    阿曽山大噴火

  4. 4

    安倍首相の言葉と行動大きく乖離

    畠山和也

  5. 5

    羽田で4人感染 ブラジルから到着

    ABEMA TIMES

  6. 6

    布マスクは金の無駄 飛沫防げず

    諌山裕

  7. 7

    森法相の国会答弁ねじ曲げに呆れ

    大串博志

  8. 8

    誹謗中傷の規制急ぐ政治家を危惧

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  9. 9

    森法相の迷走 元凶は安倍首相

    猪野 亨

  10. 10

    慰安婦団体 真の目的は日韓分断

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。