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すべてのパンを国産小麦で作るチェーン店

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すべてのパンを「十勝産小麦」で作るチェーン店がある。北海道帯広市を中心に7店舗を構える満寿屋商店だ。パン用小麦における国内産の割合は3%という状況の中、なぜ十勝産小麦100%を実現できたのか。現地を訪れたノンフィクション作家の野地秩嘉氏は「独自のカイゼンを繰り返しているのが強みだ」と分析する――。

■すべてのパンを十勝産小麦で作るチェーン

満寿屋商店の店内(撮影=岡村隆広)

日本全国にパン屋は約1万店ある。加えて、コンビニ、スーパーにも必ずパン売り場がある。店舗を持たずにネット上で販売している人もいる。

それらのパンのなかで、原料が国内産小麦だけというのはまずない。パン用小麦における国内産の割合は3%。あとはすべて輸入小麦に頼っている。

そのような状態にもかかわらず、販売しているすべてのパンを国内産、それも地元の十勝産小麦で作っているチェーンがある。北海道帯広市にある満寿屋(ますや)商店がそれだ。同チェーンは帯広市内に6店舗、東京の都立大学駅近くに1店舗の計7店舗を展開し、年商は約10億円。従業員は160名(2018年12月現在)。

平均的なベーカリー1店舗あたりの年商は約5000万円とされているから、満寿屋は平均の3倍弱を売り上げる優良ベーカリー・チェーンなのである。

なぜ国内産の小麦はパンに使われていないのか。それは日本で栽培されている小麦は昔も今もうどん用が大半だからだ。

■うどん用の小麦でパンを焼いてもおいしくならない

弥生時代から国内の冷涼な土地では麦が育てられていたが、それは麦切り用、つまり、うどん用だった。幕末にパンの製法が国外より入ってきてパン作りが始まる。当時の製造業者は、うどんを作るための小麦をパンに転用してみた。しかし、うどん用小麦には粘り気があって、餅のような食感になってしまう。麦の性質が違うから、うどん用でパンを焼いても、おいしくはならなかった。

また、パンの製造レシピの問題もある。幕末から始まったパンの製造はカナダもしくはアメリカから輸入された小麦が原料だった。加水料、発酵時間などの製造レシピは北米産パン用小麦を基準としたものだったので、製造業者はそれに従うしかなかった。

しかし、満寿屋は四半世紀をかけて、輸入小麦を使うことをやめて、国内産小麦に切り替えた。

それはどうしてなのだろうか。

社長の杉山雅則はこんな説明をする。

「亡くなった父が『地元にはいい小麦がある。これを使ってパンを焼こう』と決めたのです。品質がいいだけではなく、体にもいい。だから、十勝産の小麦にするんだ、と。

以来、地元である十勝の畑に小麦を植えるところから始めて、すべてのパンを国産にするまでに25年、かかりました。

当社のパンは小麦だけでなく、副原料も十勝産もしくは北海道産です。水は大雪山系の雪解け水、牛乳、バター、チーズ、砂糖、玉子、小豆、じゃがいも、すべて地元で穫れたものばかりを使っています」

■業界では革命的なことだった


満寿屋商店 杉山雅則社長(撮影=岡村隆広)

地元産小麦で商品すべてを作ったというのは業界では革命的なことだった。達成した年、帯広の地方紙、十勝毎日新聞は次のように報じている。

「パン製造販売の満寿屋商店は(2012年10月)28日、全6店(当時)で使用する原料の小麦を全て十勝産にする。今年産から栽培が増えた超強力小麦『ゆめちから』と同品種を混ぜてパン向けの小麦粉にするための他品種の作柄が良く、小麦粉を確保するめどが立った。同社の小麦粉使用量は小麦生産量換算で年700~800トンあり、地場産小麦を地元で消費する地産地消の好例として注目される。

同社は1990年に十勝産をわずかに含む北海道産小麦の使用を開始。2005年に十勝産に取り組み、麦音店と芽室店では十勝産100パーセントを達成した。

ただ、全店での使用はパンに合う原料の確保が難しく、小麦粉の品質がパンの色や膨らみに反応しやすい食パンが最後まで残り、カナダ産『1CW』を使用していた」

記事にあるように、2012年以後、同社のパン原料、副原料は酵母まで含め、すべてが十勝産となっている。

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