- 2019年02月14日 09:15
"転職に9回成功した人"が語る転職のコツ
2/2転職できないヤツはダメなのか
Gさんの素晴らしい転職歴については私も素直に称賛の声を送りたいが、一方で、一般論としては「焦って転職という道を選択してほしくない」と考えている。
とりわけ若い方に顕著なのだが、新卒で入った大企業に身を置き続けていると「この環境は“ぬるま湯”だ」などと感じ、過剰に危機感を抱いてしまう人がことのほか多い。そして、社歴2年目、3年目で転職した大学の同期のことを「厳しい環境に身を置くスゴいヤツ」といった調子で“特別な人”扱いをしたりする。
「自分は、出身大学が偏差値上位だったがゆえにこの人気企業に入れたが、転職を成功させた偏差値下位校出身の同期のほうがよほど向上心を持っていて、ビジネスマンとして優秀なのではないか」「転職をしない限り、私はここで“ぬるま湯サラリーマン”としてぬくぬくとしたビジネス人生を送り、いつしかこの会社でしか通用しない無能になるのでは」――そんなふうに考えて、不安を募らせてしまうのだ。
同じ会社で働き続けることも「能力」
そうした気持ちになるのもわからなくはない。しかしGさんにしても、ことさらに転職をすすめているわけではないし、以前、私に「転職はしないに越したことはないですよ」「自分はたまたま転職の回数が多いだけ」とも語っていた。
ここで強調しておきたいのは、Gさんが持っているような高い「転職能力」は確かに素晴らしいものだが、その能力を持っていないとしても、社会人としての評価が下がるわけではないという点だ。
仮に一度も転職しないまま、ひとつの会社や役所に勤め続けて定年を迎える――そんな人生を送ったら、その人のことはどう評価すべきなのだろうか。言うまでもなく、それはそれで素晴らしいことだ。ひとつの組織で粛々と業務にあたり、無事にその職務を全うした。これは十分、称賛に価する。
コミュニケーション能力が苦境を救うこともある
対して、私のようなフリーランスの場合は、基本的には雇い主(発注者)も自分も「ゆるい付き合い」で繋がっているケースが多い。担当者と気が合えば長く続く関係が培われたりもするが、その人が転職してしまうと、わりとあっさり付き合いが終わってしまうことも少なくない。
お互い気が合わなければ一回きりの仕事で簡単に縁が切れたりする一方、しばらく付き合いが途絶えていた人が転職をしたり、社内で出世したりして、久しぶりに仕事を振ってきてくれたりすることもある。
結局のところ「仕事がうまくいくか、いかないか」というのは「人間関係が良いか、悪いか」が最も大きなファクターになっていることが多い。人材の評価基準として賛否両論ある「コミュニケーション能力」だが、私は案外、重要ではないかと考えている。
「コミュ力が高いだけで実務能力は大したことがない人材」などと揶揄する向きもあるが、実際のところ、コミュニケーション能力が高ければ、難局に陥っても乗り越えられる場面はかなり多い。
仕事は「能力」だけでなく「相性」「好き嫌い」も大きく影響
世の中の大半の仕事がチームプレイである以上、コミュ力の高さはやはりメリットだろう。前述したGさんの回答からも、それが見て取れる(もちろん、Gさんは実務能力もかなり高い方だが)。
また、手前味噌になるが、私がフリーランスとして生き残ってこられたのも、信頼できる相手には私なりに誠実にお付き合いし、拙いながらもコミュニケーションを厭わず過ごしてきたことが、多少は影響していると思われる。いや……私の場合は「相性」だけで生き残ってきたかもしれないな。とにもかくにも、長いご縁を築いてくれた取引先の皆さまには、感謝しかない。
仕事は「能力」だけでなく、「相性」「好き嫌い」がかなり影響するもの。そのあたりは意識しておいて損はないだろう。「オレはこんなに立派なキャリアを持っているのに、なぜこんにも冷遇されるのだ」みたいなことを転職先で思う場面もあるかもしれないが、単にその場のエラい人と相性が悪いだけなのかもしれない。だからこそ、どんな転職先でも活躍できるGさんのような人を、私は尊敬するのだ。
そう考えると「転職回数が多いから雇うのは危険かな……」などと考えて一概に採用を控えるような人事部は、見方を改めたほうがいいのかも。もちろん、それまでの経歴や転職理由を踏まえる必要はあるだろうが、転職経験の多さを理由に「不採用」としてしまうと、優れた人材を逃してしまうかもしれない。
【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・転職に成功する人には共通するのは「仕事に関わる人間関係への配慮」がきちんとできることである。
・仕事がうまくいくかどうかは「実務能力」だけでなく、「人間関係の良し悪し」も多分に影響する。
・何度も転職に成功する人は確かに素晴らしいが、同じ職場で働き続けることができるのも同じくらい素晴らしい。
・「転職=ビジネスパーソンとしての成功」と単純に捉えないように。転職に迷うくらいなら、同じ職場で働き続けるほうが賢明だ。
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中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。
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(ネットニュース編集者/PRプランナー 中川 淳一郎 写真=iStock.com)
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