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【福島原発かながわ訴訟】横浜地裁は低線量被曝のリスクと区域外避難の合理性を認めるか。提訴から5年半、20日に判決言い渡し~弁護団が解説する訴訟のポイント

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【「国の指示無くても避難の合理性はある」】

 判決で大きな注目点となるのは、低線量被曝や避難の合理性についてどのように判断されるか。そして、国の原子力損害賠償紛争審査会が定めた中間指針などにとらわれない賠償が命じられるか、だ。

 低線量被曝について担当し、同僚弁護士から「エキスパート」と称される小賀坂徹弁護士は「今回の横浜地裁での判決は、これまでの賠償水準にとどまってしまうのか、それを抜本的に大幅に引き上げる事が出来るのかというところが最大の課題だと思っています。そのために、低線量被曝の健康影響をどのように考えるのかという事をかなりしつこく主張立証して来ました」と語る。

 「避難をやめて戻り滞在するという事は、被曝し続けるという事を意味するわけです。長期間、被曝し続ける事の意味をどう考えるのかという事を相当詳しく、空間線量や土壌汚染など具体的な数値を提示しました。原爆被爆者研究の蓄積の中で、同じ放射線量であれば短期被曝も長期被曝も影響はほとんど変わらないと考えて良いという知見もあります。つまり低線量であっても、長期間滞在する事での被曝影響を見ないといけないという事を強調して来ました。

その意味では、他の地裁での訴訟よりも踏み込んだ主張をして来ました。そこを裁判所に十分に分かっていただければ、今までの判決の水準を大きく超えるんじゃないかと思っています。それは区域外避難に限らず、避難指示区域であっても基本的にはどの地域での同等の扱いをされるべきだと考えています。それについてどう判断されるのかについても非常に大きな問題です。

低線量被曝の健康影響について裁判所が科学的に決着をつけるという問題では無くて、科学的知見を前提にして避難をする事、避難を継続する事が法的に見て原発事故と因果関係があると言えるかどうかを見極めてもらいたい」

 「今回の原発事故は『未曽有の大災害』などという言葉で表し切れるかさえ分からないほどの大きな災害でした。昨年2月には、裁判官を連れて〝現地進行協議〟ということで浜通りに行ってきましたが、今も日本の国土の中に、立ち入るのに許可証や線量計、防護服が必要な場所があるんです。10年前を思い返してみてください。10年後に、こういう場所が国内に存在する事になるなど、誰も考えていなかったと思います。それほどの大事故なんです。国土の一部が失われてしまった。それほどのレベルであるという事を、心に留めておいてください」。そう語るのは山野健一郎弁護士。

 「損害論から見た訴訟の争点は①賠償額の不十分さ②避難指示区域割りの不合理さ③区域外避難の問題─です。避難指示区域の設定と賠償額が見事にリンクしていますが、そもそも線引きをしたのは誰か。国です。では、国から避難指示が出されなかった区域は全て安全なのか。われわれはそんな事は無いと考えています。避難指示が出されなかった区域でも避難の合理性はありました。

避難のつらさは、避難指示の有無とは関係ありません。避難の合理性があるものについては避難慰謝料というのは避難指示の有無にかかわらず一定であるべきと考えます。ですので、私たちは〝自主避難〟とは言いません。避難の必要が無いのに勝手に逃げたというニュアンスが出てしまいますから『区域外避難』と呼んでいます。区域外避難、避難指示解除区域からの避難継続の合理性が認められる判決を求めています」





(上)浜通りで〝現地進行協議〟として実施された現地検証。被告国や東電の代理人だけ防護服を着用しない場面もあった=2018年2月8日撮影
(中)低線量被曝の専門家として尋問に応じた、内科医で生協きたはま診療所長の聞間元(ききま・はじめ)さん(ビキニ水爆被災事件静岡県調査研究会代表)。法廷で「年20mSvを下回る低線量であっても、放射線のリスクは決して消えないという事を強調したい」、「被曝リスクを避けるには放射線から遠ざかるしか無い」などと強調した=2017年7月12日撮影
(下)弁護団事務局長の黒澤知弘弁護士らが開いたレク。主に異動で新たに訴訟を担当する事になった大手メディアの記者を対象に、訴訟の意義とポイントを理解してもらおうと行われた


【「被害の大きさ、賠償額を加害者が決めるな」】

 「福島原発かながわ訴訟」は2013年9月11日に横浜地方裁判所に一次提訴。提訴は四次にわたり、結審(2018年7月19日)時点の原告数は60世帯175人(うち自主的避難等対象区域からの避難者は16世帯50人)。提訴後、6人の原告が亡くなっている。結審後にも1人の訃報が原告団に伝えられ、7人に増えた。

 これまでに29回の口頭弁論が開かれ、原告に対する本人尋問や専門家に対する証人尋問(国の責任低線量被曝)、現地進行協議という形での事実上の現地検証も行われてきた。被告は国と東京電力。避難慰謝料(月額35万円)やふるさと喪失・生活破壊慰謝料(2000万円)が主な請求だが、金額は原告によって異なる。請求額は計約53億9000万円。

 判決が言い渡される20日は、午前9時すぎから支援者たちが入廷行動を展開し、結審時と同様に歌や音楽で原告団、弁護団を見送る。報告集会を経て、正午過ぎから記者会見。判決に対する想いを原告たちが語る予定という。会見では、原告団と弁護団連名の声明文も発表される予定になっている。

 原告団長として走り続けてきた村田弘さん(福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難継続中)は、「放射線の被害に関しても賠償に関しても、加害者が決めてそれに被害者が従わなければいけない。それはおかしな事ではないか。これが私たち原告に共通する気持ちです」と語る。結審後も横浜駅前に毎週立ち、裁判への理解と署名を呼び掛けてきた。「被害者に笑顔の戻る判決を」と横浜地裁に要請する署名は2万8000筆を超えた。

 1月30日に付で発行された「訴訟団資料集Ⅱ」(税込1620円で頒布中。希望者は村田団長09027425572へ)にも掲載されている弁護団の最終準備書面(2018年7月19日付)。その中で弁護団は、次のような言葉を綴っている。私たちはこの言葉を胸に刻んだ上で、20日の判決言い渡しに臨みたい。

 「原告ら被害者以外の者にとっては、7年以上の時の経過の中で、福島第一原発事故はすっかり過去の出来事、既に終わった問題として整理しているのではないか。
 そして被害者に対し、もう7年以上も経っているのにまだ騒いでいるのか、放射線などという目に見えないものは気にしなければ良いのだ、等と考えているのではないか。
 被害者にとっての7年は正反対である。ふるさとと、ふるさとでの生活基盤を奪われ、長期にわたる避難生活の中、必死の思いで生活再建を進めなければならないという焦燥感はあるが、思う通りにはならず、7年の歳月の中、苦しみは時を追う中で深まる一方である」

(了)

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