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韓国国会議長による「天皇謝罪」発言の裏側 日韓関係の構造的変化を考える(1) - 澤田克己 (毎日新聞記者、元ソウル支局長)

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韓国大統領の支持率調査に出てこない「日本」

では実際には、韓国の世論はどうだったろうか。

防衛省が「韓国の駆逐艦から火器管制レーダーの照射を受けた」と発表したのは12月21日だった。韓国ギャラップは毎週金曜日に大統領支持率を発表している。ちょうど21日は金曜日で、この日発表された支持率は前週比1ポイント増の46%だった。間の悪いことに年末年始は調査を休むので、次の数字は3週間後の1月11日で48%。上がっているとはいえ誤差の範囲内だ。

その間、防衛省は12月28日に動画を公開し、韓国国防省は1月4日に反論動画を公開した。その後も防衛省が探知音を公開したり、二国間協議での日本側の対応を韓国国防省の報道官が「無礼」と言ったことで感情的な反発を日本側に生んだりと対立は深まった。2月5日には防衛省が、4月に予定していた海上自衛隊護衛艦「いずも」などの釜山港寄港を見送ることを韓国側に通知したと発表した。

そして文氏の支持率は48%(1月11日)→47%(18日)→46%(25日)→47%(2月1日)だった。ほとんど変化なしである(旧正月連休のため2月8日は発表なし)。

同社の調査は自由回答で「支持理由」と「不支持理由」を挙げてもらう。いくつか理由を挙げてもらった上で、同社が分類して発表する形式だ。それぞれ20項目くらいずつにまとめ、前週からの増減が大きいものには表示がされる。文政権の場合、いつも「北との関係改善」が支持理由、「経済・民生問題を解決できない」が不支持理由のそれぞれトップになる。

理由に「日本」が出てくるのは今まで見たことがないのだが、1月25日発表では支持理由に「外交をうまくやっている10%(前週比3ポイント増)」とあった。同社に電話して具体的に聞いてみると、担当者は「米国と北朝鮮の間をうまく仲介して2回目の米朝首脳会談を実現させたという回答がほとんどですね」。よく見たら不支持理由に「外交2%」というのがあったのだが、これには「外交がらみのいろんな回答を集めて2%ですからねぇ。日本がらみがないわけではないけれど、少なすぎて意味のある数字として出せません。韓国の外交にとって重要なのは、圧倒的に米国と中国です。日本との関係も特別なイシューがあれば回答に入るかもしれないけれど、日常的にそうしたことは起こりません」という答えが返ってきた。

韓国メディアの報道を見ていても同じことだ。日本側がレーダー問題で大騒ぎしていても韓国側では小さな扱いが続いた。こうした光景は、近年の日韓関係では珍しくない。世論を強く刺激する慰安婦問題についても同じことで、韓国世論の関心は日本で考えるほどには高くない。韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協、日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯に改名)が昨年初めに青瓦台(大統領府)サイトで行った電子署名は、1カ月で1919人しか集められなかったほどだ。慰安婦問題への韓国社会の関心という問題については、「『慰安婦の日』が騒ぎにならなかった理由」(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13713)や毎日新聞サイトのコラム「挺対協は過大評価されていないか」(https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20180727/pol/00m/010/004000d)で詳しく紹介した。

日韓の温度差を生んだ冷戦終結とグローバル化、そして…

ここで挙げた事象について韓国世論や政治家が熱くなっていないというのは、落ち着いているとか冷静というのとは違う。政治家などはマイクを向けられたら強硬発言をしてしまいそうだから、まったく当たらない。そうではなくて単純に、「考えていない」というに尽きるから始末に悪いのだ。日本政府の対応も満点とは言い難いが、韓国側対応の「軽さ」には目を覆いたくなるものがある。

こうした状況が生まれた背景にあるのは、30年前の冷戦終結であり、その後のグローバル化の進展だ。さらに韓国の経済成長と民主化、日本のバブル崩壊という要因が重なっていった。韓国にとっての日本の重要度は低下し、冷戦下の韓国には許されなかった「ジャパン・パッシング」すら可能になった。

それまでの韓国では日本の存在感は圧倒的に大きかった。植民地支配された歴史を考えれば韓国側には面白くなかったことだろう。それだけに現在は反動で、ことさらに日本を「軽く」見ようとしているように感じられる。それが、この30年間に相対的な国力低下に見舞われた日本側を強く刺激してしまう。現在の日韓関係はこうした構造に入っているから、簡単に好転はしない。相手との新しい関係性に互いが慣れていかねばならないからだ。その手始めとして、この30年間に何が起きたのかを改めて考えてみるべきだろう。

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