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急所を突かれると興奮する安倍首相の性癖

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■新聞の読者は「調査報道」を期待している

朝日社説は次に厚労省の特別監察委員会を槍玉に挙げる。

「厚労省の特別監察委員会がわずか1週間でまとめた報告は、その後、第三者性が疑われ、再検証を余儀なくされている。誰が検証を急がせたのか、この間の経緯も焦点だ」

「予算委には、監察委の委員長を務める樋口美雄労働政策研究・研修機構理事長が出席したが、野党の質問に『独立行政法人の理事長として招致された。答弁は差し控えたい』と繰り返した。監察委の委員長として改めて証言を求める必要がある」

当然、だれがなぜ検証を急がせたのかについての解明は必要だし、拒む監査委の委員長に証言を強いることも重要だろう。ただ、朝日新聞自らが取材力を駆使した調査報道によって解明する努力も怠ってはならない。新聞の読者はそこに期待しているからだ。

■形ばかりの検証で幕引きを急いでいるのではないか

不正調査問題を追及する朝日社説は、攻撃のその手を緩めない。

2月8日付社説でも「統計不正検証 この態勢では不十分だ」との見出しを掲げ、真相解明のために政府が総務省に新たに発足させた検証チームをこう批判する。

「できるだけ大ごとにしたくない。そんな意識で、場当たり的に対応しているように見えてならない。検証態勢の根本的な見直しが必要だ」

「政府自体が真相究明に後ろ向きではないかと見られている時に、違う役所とはいえ、職員同士による検証にどこまで理解が得られるだろう。形ばかりの検証で幕引きを急いでいるのではないか、とみられないやり方を考えることが重要だ」

「根本的見直し」といい、「幕引きを急ぐ」といい、手厳しい批判の言葉が並ぶ。安倍首相を嫌う朝日社説は、とことん統計不正の問題を追及する気なのだ。

■安倍政権批判を続ける朝日社説の絶好の攻撃材料

朝日社説は2月9日付けでも「統計不正審議 国会は責任を果たせ」(見出し)と主張する。

朝日社説は「統計不正問題をめぐる国会審議で、野党側が求めてきた厚生労働省の大西康之・前政策統括官の衆院予算委員会への招致が実現した」と書き出しながら、「大西氏の招致は真相究明の一歩に過ぎない。過去の経緯を知る当事者なども呼び、国会は引き続き解明に努めるべきだ」と訴える。

そのうえでこれまでの経緯を簡単に説明する。

「今回の統計不正が発覚したのは昨年12月13日、総務省の統計委員会が、毎月勤労統計で本来は全数調査のはずの大規模事業所のデータに不審点があることを指摘したことがきっかけだ」

「厚労省の統計部門の責任者だった大西氏は、この時期に不正を把握し、5日後に次官級の幹部らに報告したことなどを説明した」

朝日社説は「ならばこの頃には、問題が単なる統計調査のルール違反にとどまらないことを厚労省は認識できたはずだ」と指摘し、「雇用保険や労災保険の過少支給の可能性に気付いたのは年末の27日になってからだと言うが、本当なのか。この間の対応に問題はなかったのか。引き続き解明が必要だ」と主張する。

統計不正問題は、安倍政権批判を続ける朝日社説の絶好の攻撃材料となっている。それだけ問題が大きく、根深いからである。

■アベノミクスに成果があったのか、なかったのか

その勢いに乗せられ、朝日社説を2月5日付から9日付まで4本も取り上げてしまった。最後は2月9日付の読売新聞の社説を取り上げてみよう。

読売社説はその後半部で次のように解説している。

「政府は18年1年間の毎月勤労統計を発表した。賃金の伸びに物価変動の影響を加味した実質賃金は、前年比0・2%増だった。東京都で行われていた不適切な抽出調査の数値を補正している」

「野党は、調査対象の事業所を入れ替えなければ、実質賃金はマイナスのはずだ、と主張し、共通事業所に絞った調査結果を公表するよう要求している」

「取りようによって統計は様々な見方ができるだろう。経済の実態を客観的に把握し、冷静な政策論戦を心がける必要がある」

要はアベノミクスに成果があったのか、それともなかったのかだ。実質賃金がマイナスでなく、本当に伸びているのか。野党の言い分が正しいのか。野党の求める共通事業所に絞った調査だと結果はどうなるのか。

■「不正調査」と書かずに「不適切調査」とする読売らしさ

疑問が次々と湧いてくる。そこを読売社説は「取りようによって……」と逃げてしまう。新聞の顔である社説である以上、きちんと解説して説明してほしいと思う。

読売社説は中盤で「勤労統計の調査・検証は、厚労省の特別監察委員会が引き続き行い、新たに問題が発覚した賃金構造基本統計の検証は、総務省が担うことになった」と書き、その後で主張する。

「なぜ不適切な調査が長年続いたのか。隠蔽はあったのか。政府は態勢を整え、過去の経緯や背景を解明した上で、再発防止策を講じねばならない」

この主張にはうなずける。

しかし読売社説は、朝日社説のように「不正調査」とは書かずに「不適切調査」と書く。その辺りに「安倍政権擁護の新聞だ」と批判される読売らしさがにじみ出ている。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)

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