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嵐の活動休止、門外漢は哲也になるべし。 - カレー沢薫

驚いた。

私が驚いたぐらいだから、皆さまにおかれましては、尻から心臓が飛び出すぐらい驚いただろう。尻子玉の正体はそれかもしれない。

「嵐活動休止発表」だ。

我々の界隈で言えば「Fate/Grand Order」や「刀剣乱舞」が突然「サービス終了のお知らせ」をしたに相当にするだろう。

三次元の辛いところは、いつ推しの解散、引退、熱愛、結婚、逮捕が来るかわからないところだ、と再三書いてきたが、災害レベルのそれが来てしまった。

嵐休止の報せはニュース速報にもなっていたが、その時Jアラートが鳴らなかったのが不思議なくらいだ。

しかし、突然現行犯で逮捕されたりする人に比べれば、嵐はファンや関係者に活動休止まで約二年という、心の準備や、身辺整理、辞世の句をしたためる時間を与えてくれている。

その後の会見などを見ても、報せ自体は急だが、相当な準備とファンへの配慮をしての休止発表であることが伺える。
だがそれは、どんな説得にも曲げられない、主にリーダーの「嵐を休みたい」という意志が強かったということでもあるだろう。

これはとても辛いことである。
ファンは当然、ずっと嵐に活動をしてほしいと思っている、しかし本人たちは、そう思っていなかった、ということだからだ。
自分が望むことが推しの望んでいないことであり、むしろ自分たちの望みに応えることが推しにとっては苦痛だったのかもしれない、と思わざる得ない状況は何より辛いことだ

このように「推しにもリアルな感情、そして人生がある」というのは、二次元と三次元の決定的な違いである。
だが、本人の感情を無視して、ファンのために無理やり続けさせると、最終的にファンにとっても良くないことが起きる。

漫画でも、完全にストーリー消化が終わった物を「人気があるから」という理由で無理に続けさせた結果、ファンからも「あの「ローション相撲編」が始まる前に終わってくれていれば…」と言われることになるのである。

それを考えれば、今回の休止は本人の意思が尊重され、他のメンバーもそれに応じたという形で「ベスト」だったのではないか。

そう頭ではわかっているが、全身は血を噴き出している。

ファンと言うのはそういうものである。
推しの熱愛や結婚だって推しにとってはハッピーなことなのだから、本当なら自分も喜んでいいぐらいなのだ、しかし頭ではそう思っていても、体は会社に有給申請をしているのである。

私が今言っていることも、オタクとしての一般論であり、嵐が休止した悲しみは、嵐ファンにしかわからないし、その悲しみ方、辛さも一人一人違う。

よって、ファンでもない人間が訳知り顔で「わかり」とはあまり言えない、言えるなら「哲也」ぐらいだ。
しかし、もっと言ってはいけないのは「たかが芸能人のことでそこまで悲しむことか」と相手の悲しみを軽視することである。

またこの場合、「下手な慰め」も逆効果な場合がある。
今回の場合嵐自体は休止するかもしれないが、他のメンバーはこれからも個々で活動していくはずである。
つまり今までとそんなに変わらないのだからいいだろう、と言う人がいるかもしれない。

しかし先日ツイッターで横綱稀勢の里引退に対し「親方としての稀勢の里じゃなくて土俵に上がる稀勢の里を見続けていたかったんだ」と嘆く若い女性相撲ファンの嘆きを見た。

これはとてもわかりやすい話である。
「土俵で相撲をとる稀勢の里」と「親方として指導にあたる稀勢の里」が全く違うもの、であることは、誰にでもわかるだろう。
それと同じようにファンからすれば「嵐のマツジュン」と「松本潤」は全く別物であり、前者を愛していた者からすれば「これからも松本潤は見れるんだから」という慰めは見当違いなのである。

二次元でも「妖怪ウォッチ」の主人公は小学生の「ケータくん」だ。
そして続編の「妖怪ウォッチ シャドウサイド」では、ケータくんは成長し二児の父になっている。

この成長したケータくんは「小学5年生のケータくん」が好きだった人間からすると、悲しい、見たくない存在だったかもしれないのだ。

それに対し「同じケータくんなんだからいいじゃん」と言うのはあまりに無神経だ。
つまり「嵐じゃないメンバー」はショタコンにとっての「成長したショタ」のように「むしろ辛い存在」と感じるファンもいるということである。

もちろん、わからない人からすれば「そこまで知るかボケ」であり、それに対し「わかってない!」と怒り出すオタクも悪い。

よって、推しに何かあって悲しんでいるオタクがいたら、その悲しみを否定するでなく、必要以上にわかったフリをするでもなく、ただ黙って「哲也」という顔をするぐらいにしておこう。


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