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仮想通貨を煽った人より非難されるべきは宝くじであると思うこと

投資でもうすぐ大損確定の予定です。

事の顛末はこの記事に詳しく書きましたが、簡単に言うと、シンガポール水インフラの花形企業で、故リー・クワンユー元首相のペット・プロジェクトの事業化もした会社が昨年経営破たんし、もっていた社債の返済額が大幅に減額されそうなのです。

銀行の現段階の見積もりですと損金は現在の私の年収の3年分ほど。債務返済の優先順位が低いため損害割合が私より大きく、債務者数が非常に多い永久債と優先株式の所有者たちは「これだけしか戻らないのだったらいっそ倒産させてしまえ!」と息巻いているので、最悪の場合は、年収4年分くらいの損になるかもしれません。

痛恨の極みは損切して売り抜けなかったこと。破たんの少し前、この会社が利払いのための永久債を追加発行し、そのため「危ないぞー」という声があちこちから上がり、私が買った当時には大株主だった政府系投資会社Temasekも知らないうちに株を手放していたという事実を把握していたにもかかわらず、私は「あと数か月で満期だから大丈夫だろう」と呑気に構えて放置したのです。

あー、間違えた! この怠慢のせいで大損です。

なぜこんなことを書いているかというと、先週の文春オンラインで、吉本ばんびさんという若いライターの方の「情報弱者の貧困層をバカにする人、搾取する人 オンラインサロン界隈を眺めていて思うこと」という記事を読んだからです。

吉本ばんびさんは、かなり大変な家庭環境で育ち、紆余曲折を経てライターになられたようですが、20代で文春のような一流メディアに記事を執筆されているところや、シャープな論理展開をみていてもかなりの才能をお持ちと見受けました。また、他のメディアでも積極的に取材や執筆されているようで、あー頑張ってるんだなー、応援したい、と素直に思います。

が、一方で感じたのは、イケハヤ氏レベル(失礼!)に怒りの矛先を向けても意味がないのではないかということ。

冒頭の私の投資の話に戻ると、すべて私の自己責任であることは火の目を見るより明らかです。投資する商品を選んだのも、それがどのような状態になっているかをチェックし、売り時を勘案するのも自己責任、経営破たんが明らかになった後、債務清算の会社側提案を受け入れるのか、それとも会社を相手取って役員の責任を問う訴訟を起こすのか、すべて自己責任です。

しかし、前述したように、債権者のマジョリティである優先順位の低い債権などの持主たちの主張は私とまったく違い、「国の財産であるインフラ株なんだから政府が責任をもつて会社を救うのは当たり前」とか「こんな財政状況だったのに永久債の追加発行を許可した証券取引所が悪い」とか「銀行は会社の財務状況をわかっていながら何も知らない私たちに買わせたんじゃないか」とか、「一時年金のすべてをつぎ込んだのにこの仕打ちはひどい」とか、自分自身の情報弱者の立場や、年金生活者という立場を前面に押し出した不服申し立てをしています。

日本でいえば、東芝や東電を考えてみたらいいでしょう。

「原子力発電は絶対安全でクリーンなエネルギー」という日本国政府の言葉を長い間信じこまされてきた年金生活者をはじめとする個人投資家たちは、東芝が米国の原発買収に巨額の資金をつぎ込み、東電が現在はほとんど稼働していない原子力発電プラントを次々と増設するのをみつつ、これらの会社の株を買ってきました。どちらも国の政策が後ろ盾になった優良インフラ株です。

その結果、どうなったでしょうか? これらの株を買った人たちは「情報弱者」や「年金生活者」として保護されたでしょうか?

もちろん答えは「ノー」です。

いっぽう、競馬や競輪などの公営ギャンブル。これらのギャンブルが元で貧困に陥る家庭は決して少なくありませんが、売上のかなりの部分が農水省や経産省など所轄官庁の経費として使われます。ギャンブル中毒者から搾り取ったお金で、国は政府の運転資金をまかなっているのです。

公営ギャンブルとしては最も購入者の裾野が広い宝くじも同様。ネットで公開されている〇〇ジャンボ宝くじの2017年の売上を調べて足してみたら3,258億円もありました。このうち半分近くが国庫交付金となり、国に納められます。宝くじで1等が当たる確率は1,000万分の1だそうですから、仮想通貨取引で億り人になるよりはるかに低いと思われますが、私にはただの浪費にしか見えない宝くじを巨額の広告費を使って国は庶民に買わせ、なけなしのお金を搾取しています。

煽るだけ煽って何も言わずに「まだ仮想通貨やってないの?」の看板を降ろしたイケハヤ氏に憤慨する気持ちはわからないでもありません。ただ、あれだけ大騒ぎしていたわけですから、ただのポジショントークではなくご自身もそれなりの損害を被ったのではないかと推察します。「残念でしたね、お気の毒さまw」というところです。

他方、イケハヤ氏だけでなく他のマスコミにも煽られて億り人をめざし、仮想通貨を買った人、FXを始めた人などは、それがギャンブルであることはいくら情報弱者でもある程度は認識していたはずです。実際に、中国をはじめ規制や禁止している国はいくつもあります。購入しても使える店などはほとんどないわけですから、20年以上前に香港で大流行して日本でも売り切れ店が続出した「たまごっち」のような投機対象とたいして変わりません。

しかし、当時、たまごっちを香港政庁や日本政府が規制したかというとそんなことはありません。あくまでもギャンブル好きな一部の人たち(大半は子どもでしたが)が楽しんでいるに過ぎない、という認識だったのでしょう。政府が率先して宝くじなどのギャンブルを国民に推奨しているわけですから、こんな一部のギャンブル好きだけがとびつく投機をいちいち規制したりしないのです(香港でも宝くじや競馬は政庁が元締めです)。

要約すると、投機性の高い商品取引をどの段階でどこまで規制するのか、また、その前段階として「情報弱者」や「貧困層」がギャンブルの泥沼にはまらないようにするための教育をどうするか、という議論しかこの問題の根本的な解決策はないはずなのですが、公営ギャンブルを堂々と運営かつその収益に依存し、さらにカジノまで作ってギャンブル依存層を広げようとしている日本国政府にこのような問題を真剣に考える意思がないことは明らかなのです。

イケハヤ氏がひっそり仮想通貨をやめ、これに懲りてこれからあまり投機を煽らなくなったとしても、第二第三のイケハヤ氏はこれからも現れるでしょうし、実際に経済界にも仮想通貨をあきらめきれない人たちがまだまだいるようです。本気で日本から仮想通貨のようなギャンブルを追放したいのなら、まず、公営ギャンブルの廃止から訴えるべきではないでしょうか?

もう一つ。

大学を辞めて有料サロンに入会し、プロブロガーになるよう煽っているという話。

何にお金を使うかはその人が何に価値を置くかの問題に過ぎず、毎日私たちは膨大な量の無意味なお金を使っています。イケハヤ氏のサロン入会もその一つで、ペットボトルの水を買ったり、宝くじを買ったりするのと根本的な違いはありません。無料の水道水とたいして変わらない水を数百円も出してわざわざ買ったり、当たるはずのない宝くじを買う行為と、ほとんどの人がなれないプロブロガー目指して有料サロンの会費を払うことは、あくまでもその人のもつ価値感をお金によって表現しているからにすぎないからです。

もしその女性が私の娘だったら、どうでしょう? 私はそういう選択もありかなと思います。

今までのように大多数の人が大学や専門学校を卒業して会社員になり、日々会社で生産活動をして定年まで給料をもらい続けるという未来はどう考えても私には描けません。本人がそれでも従来と同じコースを歩みたいといえばそれでいいでしょうし、ほぼ100%近い確率で失敗するであろうプロブロガーやユーチューバーなどのコースに進みたいと言って挑戦してみるなら、失敗してもその経験はその先の人生で活かせるだろうと思います。

私は決してイケハヤ教信者ではありませんが、それでも彼は自分でリスクを取り、「こういう生き方もできるんだよ」というメッセージを同時代の人々に強烈に発信し続けています。もちろん彼の利益追求や野心の実現が彼の活動の最大の目的でしょうが、いっぽうでそれだけにとどまらないもの、何とか日本人の意識や、ひいては日本の社会を変えていきたいというモチベーションも感じとれます。

彼や彼のフォロワーさんたちが成功するにせよ、失敗するにせよ、現状を変える努力を何もせずに唯々諾々と宝くじを買い続けるよりはましなのではないかと思うのです。

吉川さんやイケハヤ氏のような次の世代の担い手の方々が、好き勝手に言いたいことを言う人(そしてたいてい自分は何も行動を起こさない)からのさまざまな非難を恐れることなく行動し、それに続く私の娘の世代に自分の可能性を信じて行動するモチベーションを与えてくれるよう期待しています。

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