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今や誰も死ぬ気配がない「まんぷく」を楽しめるか?――青木るえか「テレビ健康診断」 『まんぷく』(NHK総合) - 青木 るえか

 やはり愛は冷めるのか。永遠の愛などないのか。ええ、あんなに愛していたはずの『まんぷく』さん。

「一回も見逃すわけにはいかぬ!」が、「あ、今やってるけど……いいか」に。NHKオンデマンド会員にまでなったのにそもそも予約録画もしようとしなかったのは最初から虫が知らせたのね……。

 しかしこうなってみると「何が私を『まんぷく』に惹きつけ」たのかわかった。

 哀愁だ。

『まんぷく』が始まった時に見えたのは、「この朗らかな良い人たちが悲しい運命に翻弄され、何もなくなった風景だけが残り、もう決して戻ってこない笑顔が次々に浮かんで消える」という幻想の最終回。

 そういうストーリーでもっとも泣けるようにセレクトされた俳優陣だったのである。要潤、大谷亮平、桐谷健太、浜野謙太……と、こう並べて別にそんな涙をそそるメンツではないが、実は哀しみがすごくよく似合う、ということを気づかせる役が当てられて意表をついた。

世良勝夫を演じる桐谷健太 ©文藝春秋

 私は最初の頃、桐谷健太が出てくるたびに、彼(の役)のかわいそうな最期と、オーバーラップする笑顔が思い浮かんで泣いていた。いい加減でテキトーで調子がよくて、困った時にはスタコラサッサと逃げちゃうような男だけど、底抜けに明るく、ちょっとした時に主人公のことをなぐさめてくれたりする。こんな健太がインスタントラーメン成功のお祝いをパーッとやってくれて、別れたあとに酔っ払って川に落ちて1人で死んじゃうの。いや勝手な想像です。浮世離れした要潤もやさしい大谷亮平も、みんなきっと死んでしまうんだ……! そんな哀しみを秘めたドラマなのだ。

 それがどうだ。今や誰も死ぬ気配がない。全員ピンピンしてる。哀しみというものがキレイさっぱり拭いとられ、何かコント要員のようになってしまった。

安藤サクラと長谷川博己の「哀愁」は?

 そんな中、番組開始からぜんぜん「哀愁」面を担当していなかった安藤サクラと長谷川博己。長谷川博己の萬平さんは、なんだか前よりいっそう目がコワく澄み渡ってきて、なるほど発明家というのは迷惑な存在だと思わせるし、安藤サクラの福ちゃんも、夫につられてか狂信者の目で子供を諭したりしている。最近登場した喫茶白薔薇店主の加藤雅也と牧瀬里穂も、本来哀愁で行ける役者なのに、マンガの悪魔夫婦みたいな見た目と言動だし。

 萬平さんがインスタントラーメンをつくるのに成功したあと、めでたしめでたしで終わるんですかねえ。哀愁連がいない(いるけどもう別人)大団円では感動も薄い気がするけど、まだ一波乱あるのかなあ。私は桐谷健太(の役)が笑いながら死んでいく場面をまだ思い浮かべつつ、ボチボチ見ていこうと思います。

▼『まんぷく
NHK総合 月~木 8:00~8:15
https://www.nhk.or.jp/mampuku/

(青木 るえか/週刊文春 2019年2月14日号)

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