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習近平の台湾政策演説に拒否反応を示した台湾 - 岡崎研究所

1月2日、中国の習近平国家主席は、台湾政策について包括的な演説を行い、その中で、台湾統一は「一国二制度」によるという方式を打ち出した。「一国二制度」は、香港が中国に返還された際に中国が50年間の香港統治のための方式として約束したものである。

(borzaya/maxicam/Irina Griskova/Lubo Ivanko/iStock)

蔡英文総統は、同発言に対し、直ちに「台湾の大多数の民意が『一国二制度』を受け入れることは絶対にない」と断言した。さらに、野党国民党支持者などで受け入れる人の多い「92年コンセンサス」(「一つの中国」の内容は中台それぞれが解釈する。台湾にとっては「一つの中国」は「中華民国」を意味する)に関しては、北京当局によって「一国二制度」と実質的に同じものと定義されたため、これまで期待されていた同床異夢の曖昧さがなくなったとして、もうこれを口にするはやめるべきだと訴えた。

「一国二制度」は、かつて鄧小平によって台湾統治の方式として検討されたことはあったが、実際には香港統治に利用された。今日の民主化した台湾の人たちが受け入れる余地のほとんどない方式であり、今日の状況下でこのような方式を打ち出したこと自体、中国がいかに台湾の現状を知らないかの証左と見られても不思議ではない。

この習近平発言の結果、昨年11月の統一地方選挙において大敗を喫した蔡英文への支持率が逆に増え始めたように見える。蔡英文の支持率は、蔡の慎重な対中態度やいくつかの国内問題への対応ぶりから低迷していた(19%といった数字も見られる)が、習近平発言後の世論調査によると、支持率急上昇、61%に上昇した調査もあるようである。これは、主として蔡が「一国二制度」を拒絶し、民主主義下の「台湾の主権」に言及したことによる。

「一国二制度」の台湾への適用については、民進党、国民党の支持者の区別なく台湾人の大多数がこれに反対しているが、他方、「92年コンセンサス」については、国民党のなかに依然としてこの方式によって中台関係を規定したいとの考え方が見られる。

特に馬英九政権下では中国と交流する際には、「一つの中国」の内容は中台それぞれが解釈し、台湾にとっては「一つの中国」は「中華民国」を意味する「一中各表」が前提となっていた。ところが、今回の習近平発言の結果、中国の台湾政策の核心が「一国二制度」であることが極めて明白となったことにより、「一中各表」を掲げる国民党としても新たに複雑な課題に直面することとなろう。

呉敦義・国民党主席、朱立倫・元国民党主席、そして、蒋経国元総統の孫で蒋介石の曾孫である蒋萬安・立法委員らも習近平の「一国二制度」による台湾統一の提案には反対を唱えているという。1月15日付けの台北タイムズ社説‘Tsai must back words with actions’は、蔡英文に対して、こういう稀有な挙国一致的反対を好機として捉え、中国に対する強硬な主張を如何に実行に移すかが次の重要な課題である、と述べている

蔡英文は、最近日本側関係者に対し、台湾としてはTPPに参加したいので日本の支持を得たい、と述べた。また、習近平が「中国としては台湾に対する武力行使の可能性を排除しない」旨の発言をしたことに関連して、台湾の防衛のために、米国のほか日本を含む各国との協力に期待すると述べ、安全保障の面において中国への警戒感を一段と強めている。

こうした動きは、台北タイムズ社説がいうところの「強硬な主張を如何に実行に移す」行動の一環と見てよいであろう。蔡英文政権の中国への対応が、今後、より強硬かつ対立的になることが十分に予想される。

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