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叱られると自動的にごめんなさいしか言えなくなる人達

 叱られたり注意されたりしたら、自動的にごめんなさいしか言えなくなる人って、見たことありませんか?

 より正確に書くなら「『自分は叱られている』と感じたら機械的に謝るごめんなさいしか言えなくなる人」となるでしょうか。このタイプの人は、しばしば、相手には叱る意図も怒る意図も無いのに叱られていると勝手に誤解し、やたらごめんなさいを連発して相手を当惑させてしまうこともあります。

 話に聞く限り、どうやらこの“ごめんなさいモード”は一種の視野狭窄状態に近いらしく、相手の振舞いの理由について考える能力が大幅に下がってしまい、後日の教訓にも生かしにくいようです。そのためか、似たような失敗を繰り返してしまうリスクも高く、「あいつは口ではごめんなさいばかり言うが、何も学習できない・行動を変えられないやつ」というレッテルを貼られがちです。

どうして叱られ下手になってしまうのか?



 なぜ、こんな風になってしまうのでしょうか?

 もちろん人それぞれによって、背景となる事情も、そうなってしまった時期も様々でしょう。とはいえ、叱られると思考停止してしまうという適応上の弱点が、一朝一夕に、大人になってから身に付くと考えるよりは、もっと幼い頃の体験の積み重ねによって、行動のテンプレートが形成されたと考えるほうが、説得力があるような気はします。

 人間は、小さい頃から大人(特に親)に叱られたり注意されたりしながら成長していく生物ですし、それらは成長に欠かせない体験です。例えばコンセントのコードを口に入れてはいけないことを覚えたり、お店に並んでいるお菓子をその場で開封してはいけないことを覚えたりする際に、まったく叱られずに済む子どもは稀でしょう。もし、やってはいけないこと・やっては危険なことに際しても、大人によって叱られたり躾けられたりしなかった子どもは、そうしたことを身につけにくいことでしょう(*1)。

 しかし、「なぜ叱られたのか」「どういうことをしたら叱られるのか」が理解できないような叱られ方が続けば、子どもとしては、叱られた理由や、叱られないようにするための行動が、学習できません。例えば、「ある時には何をやっても甘やかされ許されるけれども、別の時には何をやっても怒鳴られる」ような、“叱る”というより“単なる親の気まぐれ”のような場合などは、子どもが学習するのは、せいぜい「考えるのをやめて、ごめんなさいを言い続けて嵐が去るのを待つ」ぐらいのものでしょう。また、三歳の子どもに対して、小学生ぐらいの理解力を要するような理由で叱っているような親のもとでも、似たようなことが起こるでしょう。理解しようのない叱られ方を続けていては【「叱られる」→やってはいけないこと・やったら危ないことに気付く必要がある】というスタイルは身に付きようがありません。

 このような、小さい頃の何百回〜何千回の積み重ねによって「どうして叱られたのか」「叱られないようにすればどうすれば良いのか」に関する処世術は、自分のものとして染みついていきます。1.子ども自身にも理解しやすい叱られ方が多かった子どもと、2.叱られた理由がさっぱり理解できない状況下で育った子どもでは、身に付く「叱られたら後の対処行動」の方向性は全く違ったものにならざるを得ません。
 

「叱られ下手」が蒙るディスアドバンテージ



 そしてどのような叱られ方で幼少期を過ごした人も、やがては思春期を迎えます。以後、先生・上司・先輩・友達に叱られたり注意されたりした時の振る舞い次第で、損をしたり得をしたりする機会も多くなります。

 叱られるたびに理由と対策を考える習慣が身に付いている人は、叱られた時、一時的に落ち込むとしても、自分なりに考え、叱られないように行動をアレンジしやすいでしょう。けど、叱られたら思考停止して謝る癖が身に付いてしまっている人は、思考停止してしまうために行動をアレンジできないばかりか、その結果として何度も叱られやすく、ストレスが溜まりやすいことでしょう。

 しかも、叱られた理由が思いつける人なら、「この人は私のために叱ってくれたんだな」と連想しやすいぶん、善意で注意してくれる人に感謝するチャンスが得られますが、叱られる理由に気が回らない人は、どれほど善意にみちた叱られ方をしていても、感謝のしようがありません。いくら頭を深く下げていても、せいぜい「なんだか分からないけれども私は駄目なんですね、はいはい」で終わってしまいやすいのではないでしょうか。こんなことでは、善意で直言してくれるような人はどんどん離れていってしまいますし、善意のアドバイスすら耳に届かないぶん、弱点や欠点を改める機会も逃げていってしまいます。その代わり、身の回りには毒にも薬にもならないようなことしか言わない人物や、イエスマンがはびこることになってしまいます。

 だから逆にみれば、「叱られ下手である」という兆候は、その人がどんな人間と、どんな付き合いをしているのかを反映する、無視できないファクターとも言えます。叱られ下手な人を一人見かけたら、たいてい、その人の周りには同じタイプの人間が芋づる式に見つかることでしょう。おそらく、ある種の詐欺師的な連中は、こうした傾向を見抜いたうえで、人間関係を換金する術を心得ているのではないかと推定します。
 

チャンスは「上手に叱ってくれる人との出遭い」



 以上のように、一度身に付くと厄介な「叱られると自動的にごめんなさいしか言えなくなる」癖。

 では、もっと叱られ上手になるには、どうすればいいのでしょうか?

 このような癖は、一人でどうにかしようと思っても非常に難しそうです。誰か、叱られたり注意されたりする理由を納得しやすく・わかりやすく伝えてくれる人に叱られた際に、思考停止せずに理由を考えて対処しようとするしか無いんじゃないかと思います。

 このとき期待されるのは、理不尽な理由で叱られないという当たり前のことだけでなく、情緒的に受け止めやすいメッセージであることや、短期的な関係ではなく長期的な信頼関係をベースにしていることもたぶん同じぐらい重要です。叱られる理由がいくら正論でも、刺々しすぎる言葉で、短い付き合いの人間からの叱責されたのでは、同じパターンを繰り返すだけです。

 だから、叱られると思考停止してしまいやすい人は、叱る理由・注意する理由が自分にも理解できるタイプの人に出会ったら、その幸運な出遭いをなるべく手放さないことでしょう。叱られ下手な人にとって、「この人が叱る理由ならよく分かるし納得できる」という相手との出遭いは非常に貴重です。叱られたら思考をロックされる癖を緩和したいなら、そういうコミュニケーションを積み重ねていったほうが良いように思います。


*1:時々、実際にそれに近い育てられ方をして、酷い適応上の障害を起こしてメンタルヘルスを損ねた人が精神科にかかる、というパターンをみかけます。

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