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株価維持に使われた"日本人の年金"の末路

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■「日本で取締役は危険」が欧米の常識に

もうひとつ。昨年11月に突然逮捕され、今も勾留が続くカルロス・ゴーン日産自動車前会長の問題も、多くの海外投資家に「日本は異質だ」という印象を与えている。ゴーン前会長が日産自動車を私物化していた点は庶民感情を刺激するには十分だが、それが本当に特別背任罪となるだけの犯罪行為だったのか。ゴーン氏は無実を主張し、すべて合法的に社内決裁を経ているとしている。

本人が罪を認めず長期の拘留を続ける手法を、「前近代的」だと感じている欧米人は少なくない。「日本で取締役になるのは危険だ」という見方が、今や欧米ビジネスマンの間では常識になりつつあるという。

海外投資家に見放された日本株市場は、そう簡単には「上値を追う」展開にはならないだろう。アベノミクス開始以降に買い越した分を、今後も海外投資家が売ってくれば、日銀や年金マネーが買い支えるのにも限度がある。

■年金マネーによる株式投資の結果

GPIFが2月1日に発表した2018年度の第3四半期(10‐12月期)は、期間収益が14兆8039億円の赤字となった。収益率としてはマイナス9.06%という、大幅な損失である。日本を含む世界の株式相場が下落したことで、資産の評価額が大きく目減りした。

安倍内閣は年金マネーによる株式投資を推進したため、今や150兆円あるGPIFの資金の半分は国内外の株式で運用されるようになった。第2次安倍内閣が発足した2012年12月段階では112兆円の資産の60.1%は国債を中心とする「国内債」で運用され、「国内株式」は13%にすぎなかった。

それが、今や国内株式で24%を運用、国内債券は28%にまで減っている。外国株式も10%未満から24%へと大きく増やした。

安倍内閣は「デフレからの脱却」を掲げ、デフレからインフレへという経済構造の転換を目指してきた。このため、金利が上昇すれば価格が下落することになる債券を持ち続けるよりも、成長が見込める株式にシフトすることが、ある意味合理的だったともいえる。

だが、当然、株式は債券以上に価格変動リスクが大きい。四半期ごとに10兆円を超す損益が出て、それに一喜一憂する体制になったわけだが、そうした年金資産の増減を国民が納得しているのかどうか、今ひとつ判然としない。

■債権中心への「逆戻り」は難しい

GPIFは米国のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)などを例に、株式投資が世界の流れだと説明してきたが、米国の社会保障信託基金は全額米国債で運用されている。150兆円をマーケットで運用している基金というのはGPIFがダントツで大きいのだ。

問題は、GPIFが今後、株式から債券中心に「逆戻り」することが難しいことだ。35兆円を超す金額を日本の株式市場に投じてしまったGPIFは、「池の鯨」状態。身動きをすれば池の水があふれるように、影響力がデカすぎるのだ。保有株の1割を売ろうと思えば、株価を大きく下落させることになってしまう。そうなれば自らのクビを絞めるから、売ろうにも売れないのだ。

海外投資家が見限った日本市場を、GPIFも日銀も見限ることができなくなっているということを、国民は覚悟すべきだろう。

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磯山 友幸(いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

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(経済ジャーナリスト 磯山 友幸 写真=iStock.com)

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