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「子供の命」を守れない安倍政権

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ただ虚しさに包まれて、この文章を綴っている。1月24日、千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)ちゃん(10)が自宅で父親・栗原勇一郎(41)に殺された事件は、単なる「虐待死事件」ではない。行政の不作為によって発生した殺人事件である。

わかりやすく言えば、安倍晋三首相、加藤勝信・前厚労相、森田健作・千葉県知事らによる「怠慢」と「不作為」がもたらした事件だと、私は思っている。

「きょうよりか あしたはもっともっと できるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください」――悲痛な文章を残して昨年3月に殺害された東京・目黒区の船戸結愛ちゃん(5つ)の事件を思い出して欲しい。

私は、あの時も「NPO法人シンクキッズ 子ども虐待・性犯罪をなくす会」代表理事の後藤啓二弁護士と共に「虐待案件の警察との全件情報共有」を訴えた。

新聞や月刊誌、テレビ等々で、そのことを訴え、講演などでも折に触れて、この虐待問題を取り上げさせてもらった。しかし、安倍首相をはじめ、自治体の長も、高知、大分、広島、岡山、茨城、愛知、埼玉、岐阜、群馬、大阪、岩手、神奈川の12府県を除いて、いまだに警察との全件情報共有を実現していない。今回の千葉県の森田健作知事も、これを“拒否”しつづけている一人である。

学校のアンケート調査に「お父さんにぼう力を受けています。先生、 どうにかできませんか」と書いてSOSを発していた心愛ちゃんは、虐待をおこなっている当の父親にその文章を見せられ、虐待の中、息絶えた。

2017年には、地元千葉の「要保護児童対策地域協議会」のリストにも載っていたのに、大人たちは心愛ちゃんの「生」へ、誰も手を差しのべなかった。そして、最後まで警察との「情報共有はなされなかった」のである。

こういう鬼畜のごとき人間は、何千人、何万人の中には、必ず存在している。行政をはじめ、私たち大人は、こういう悪鬼が「存在していることを前提に」子供たちの命を守らなければならない。

しかし、安倍首相も、加藤前厚労相も、森田健作千葉県知事も、もちろん、東京都の小池百合子知事も、「虐待案件の警察との全件情報共有」に背を向けてきた。つまり、大人に裏切られて結愛ちゃんも、心愛ちゃんも「死んでいった」のだ。

父親・栗原勇一郎は、児相や教育委員会という大人たちが威圧を感じ、恐怖を感じるほどの虐待男である。しかも、その間に「結愛ちゃん殺害事件」も起きている。それでも、児相や教育委員会は、警察にこの案件を通報さえしなかった。もし、「全件情報共有」の制度が実施されていたら、警察は心愛ちゃんのことを「把握していた」ことになる。

もちろん、警察が情報を知っていたとしても、必ず「子供の命が救える」というわけではない。しかし、救える可能性が増えることは疑いがない。児相の職員には、また教育委員会の人間には、「身体を張って」子供の命を守ることができる職員、あるいは、そのことに使命感と意欲を持つ職員がどのくらいいるのだろうか。

申し訳ないが、私は児相の職員が「子供の命を守ることができる」とは思っていない。なかには、そういう人もいるだろうが、あくまでそれは「例外」であろうと思う。それは、「遺伝子の違い」による。

私は昨年7月6日、後藤弁護士と共に櫻井よしこ氏の「言論テレビ」に出演し、安倍首相と当時の加藤勝信厚労相に「虐待案件の警察との全件情報共有」を訴えた。その時、私は警察と児相との“遺伝子の違い”を語らせてもらった。

警察は「命を守る」遺伝子を持つ組織であり、児相は、「親子関係、あるいは家族関係を守る」という遺伝子を持つ組織である、と。両者は、何から何まで違うのである。これは、全国に先がけて児相と警察との虐待情報の全件共有を実施した高知県の児相の担当者から取材で聞いた話である。

栗原のような凶悪な殺人者であろうと敢然と立ち向かえるのは、「命を守る」警察である。私は、昨年、月刊『Hanada』8月号の「現場をゆく」に、結愛ちゃん殺害事件を受けて、こう書かせてもらった。

〈そもそも児相と警察とでは「遺伝子」が異なる。警察は「命」を守る組織であり、児相とは「親子や家庭」を守る、つまり、親子関係などを「修復する」組織である。
 児相への虐待相談件数が10年で3倍、約12万件にまで急増する中、圧倒的に人員が不足し、「命を守る」という遺伝子が希薄な児相に、なぜいつまでも虐待案件を「抱え込ませる」のだろうか。
 品川児相が、品川、目黒、大田の三区を管轄するように、そのエリアは広大で、全国どの地域でも、目は全くと言っていいほど「届いていない」のが現状だ。それでも児相は「増員」を要求するだけで、警察との全件情報共有に否定的だ。
 しかし、住民にとって最も身近な存在である近くの交番のお巡りさんが、毎日のように「結愛ちゃん元気ですか」「結愛ちゃんの顔を見せて下さい」と訪問してくれるようになったら、虐待死は、どのくらい防がれるだろうか。
 少なくとも、児相が抱え込んでいる現状よりも、救われる命が一つでも二つでも増えるのは間違いない。
 児相の言い分にばかり耳を傾ける自治体の首長を含む政治家たちの危機意識の欠如が、今も“明日の結愛ちゃん”を生み続けている。行政の目が届かない中で、ただ虐待死を待つ子供たちが哀れでならない〉

まさに〈政治家たちの危機意識の欠如〉が哀れな“明日の結愛ちゃん”である「栗原心愛ちゃんを生んだ」のである。安倍首相が、全国の自治体に向けて「あらゆる行政機関で虐待情報の全件共有を実施せよ」と号令を発すればいいだけの話なのに、しかし、首相はそれを「しない」のだ。

昨年7月8日付の産経新聞(「新聞に喝!」欄)に私が書いたマスコミ批判の文章の一部も再掲させていただく。

〈私は、同様の事件はこれからも起こり続けると思っている。なぜなら「児相の職員を増やせ」「専門性のある職員をもっと」と、同じ意見が“いつものように”叫ばれるだけだからだ。
 新聞はなぜ問題の本質を突かないのだろうか。それは、「もはや児相には期待できない」ということだ。児童虐待防止法には、児相による自宅立ち入り調査も認められており、その際、警察の援助を求めることもできるようになっている。だが、児相はそれを活用しない。なぜか。
 それは職員の能力と意欲の問題であり、一方で「プライバシー侵害」やら「親の権利」を振りかざす“人権の壁”への恐れがあるからだ。子供を虐待死させるような親は、人権を盾に抵抗し、あらゆる言辞を弄して子供への面会を拒む。この壁を突破して子供の命を守るには、逆に、児相に「案件を抱え込ませてはならない」のである。
 警察を含むあらゆる行政組織が全情報を共有し、例えば“街の灯台”たる交番のお巡りさんが、絶えず訪問して子供の顔を確認するようなシステムを構築しなければならない。しかし現実には、児相や厚労省は、職員の増員を求めるのに必死で、虐待情報の共有に否定的だ。彼らにとっては、自らの権限拡大の方が大切なのだ。こうしたお役人の言い分に目を眩まされているのが、小池都知事であり、安倍首相にほかならない〉

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