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「女湯にいる男児が苦手」は、過剰な防衛なのか - 網尾歩 (コラムニスト)

「裸の付き合い」という独特の文化。

(miller2/iStock/Getty Images Plus)

「9歳までは混浴OK」は1964年基準

1月末に、ツイッター上に投稿されたある漫画に賛否両論が集まった。「女湯にいる男児が苦手」という漫画だった。

描いたのは、息子と娘のいる女性。漫画では、育児サークルで母親たちの尻を叩いて喜ぶ3才男児がいたことや、女湯で6、7歳頃の男児が女性たちの裸をガン見していたこと、夫にコメントを求めたところ「保育園まではしめしめと思いながら女湯に入ってた」と返答されたことを挙げ、男児は男湯に入れてほしい(無理なら家族風呂や内風呂の利用を)と締めくくられていた。

非常にさまざまなことを考えさせられた。

たとえば女児の場合、父親と一緒に男湯に入って盗撮されてしまったというニュースはときどき報じられる。その際、ニュースのコメント欄では「連れて入るなんて危機感がない」と書かれることがある。このようなニュースを聞くと、女児は何歳であっても女湯に入れることを規則にした方が良いのではないかとさえ思う。

だが一方で、男児の場合だって女湯に入る男児を盗撮する、あるいは見て楽しむ女性がいる可能性はゼロではないのだ。ゼロではないのに、そちらの方向での検討は行われない。もちろん、男湯に入った女児が男性を性的な意味でガン見する可能性も顧みられることはない。ガン見されて嫌な思いをする男性も今のところ考慮外だ。大人の危険な思い込みがここにある。さらに、その子どもの性自認がどうなのかという、複雑な問題もある。

また、自分の性と異なる湯に入れられるということは、それが男児であっても女児であっても、ある年齢を超えれば強烈な体験だ。自分以外は自分とは違う体なのだ。意識するなという方が無理で、子どもに対する虐待に近いとも思う。数年前、女性アイドルが裸の胸を後ろから男児に手で隠させた一枚を写真集で披露し、虐待にあたると批判を浴びたことは記憶に新しい。あれを「男児へのご褒美だから」という時代ではないのだ。

地方によって基準が違うようだが、東京都の場合は条例に「10歳以上の男女を混浴させないこと」とある。9歳って、もうかなりモノがわかる年齢ではないだろうか。銭湯や温泉は日本の素晴らしい文化の一つだが、それはそれ。裸の子どもが別の性の見ず知らずの大人と一緒に湯に入ることについて、大人はもう少しナイーブに考えた方が良いのではないか。

東京都の「公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置等の基準に関する条例」は1964年にできた。1964年といえば、前回の東京五輪が開催された年だ。2020年の五輪を機に検討し直してはいかがだろうか。

ちなみに、たとえ同性であっても、子どもが人の裸を凝視していたら注意するのが保護者の役目だし、他人から注意されたとしても仕方ないことだ。銭湯や温泉で他人の裸体を凝視するのはそもそも失礼なのだから、「子どもだから」で放っておいていいことではない。

子どもに性欲はない、わけがないのだが……

この漫画は結局、投稿主により削除されてしまった。投稿には男児の母たちからの批判も多かった(投稿者自身も男児の母なのだが)。批判の内容は、「3歳児までエロ扱いするなんて」「ヒステリー過ぎる」といったもの。RTやいいね、賛同のコメントが多く集まっていたことで、余計腹が立った人もいたのかもしれない。

恐らく女児を男湯に入れることについても、ロリコンなんて身近にいるはずないから大丈夫と思う人と、そうでない人がいるだろう。

子どもに性欲はないから性的配慮は不要と思う人と、そうでない人。子どもに対する性的な視線に危機感を感じる人と、感じない人。その間の溝は深い。

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