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48歳暴力息子を追い出した78歳親の決断

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■「わが家はそこまで緊迫した状態なんですね」

※写真はイメージです(写真=iStock.com/SmokedSalmon)

私の言葉にさらに驚いた表情をした父親でしたが、ボソッと「わが家はそこまで緊迫した状態なんですね。先生に言われるまで、そこまでひどいとは気づきませんでした。長男には毎日外出を強制され、どこで時間をつぶせばよいのかを考えるだけで、精いっぱいでした。私が家を空けているときに妻が迷子になったらどうしようかと、それも心配でしたし」と言いました。

「息子さんの暴力がひどくなっているようですし、お母様の状態が今より良くなる可能性は低いと思います。お父様が動けるうちでないと、全員の引っ越しはできなくなるので、気はすすまないとは思いますが、覚悟を決められてはいかがでしょうか。お母様の住み替え先の候補となる介護施設探しは、私のほうでもお手伝いしますから」

3人で別世帯になるためには、母親の介護施設への住み替えだけではなく、自宅の売却、父親と長男がそれぞれ住むマンションの購入が必要になる。

とはいえ、母親は現時点で介護認定を受けていないため、早急に介護認定を受ける作業が必要だ。さらには介護認定を受けたとしても、要介護3以上でないと原則として特別養護老人ホームには申し込めないことも懸念材料。介護認定で要介護1、あるいは要介護2の判定が出た場合は、介護専用型のケアハウスにいったん入所して、待機するのが現実的だと思われた。

また要介護3以上と認定されても、すぐに特別養護老人ホームに入所できるわけではない。特別養護老人ホームによっては、100人単位の待機者がいるケースもあるからだ。介護施設が決まらないと、父親の住み替え先となるマンションエリアも決められないため、介護認定を受けたうえで、いったん介護型ケアハウスに住み替えて、特別養護老人ホームの入所を目指すのが現実的なプランのように思われた。

■母親が介護施設に入所後、父親は賃貸住宅に住み替える

以下に、今回のケースにおいて、これから必要な作業を書き出してみた。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/XiXinXing)

(1)母親が介護認定を受けるための申し込みを行う。

(2)介護認定が要介護3以上であれば、特別養護老人ホームに入所を申し込む。空き状態はホームごとに異なるため、複数箇所への申し込みをおこなう。

(3)要介護1、あるいは要介護2と認定された場合、介護型ケアハウスにいったん住み替える。介護型ケアハウスに住み替えて時間がたち、介護状態が重くなったら特別養護老人ホームへのさらなる住み替えをおこなうか、そのまま介護型ケアハウスに住み続けるかは、入所後の様子を見て決める。介護型ケアハウスでは待機もできるため、急ぐ必要がないのは安心材料となる。

(4)母親が住み替える介護施設が決まったら、父親の引っ越し先を探す。長男が自発的に引っ越すことは考えにくいため、父親が先に引っ越すのが現実的である。また母親の最終的な住まい(特別養護老人ホーム)が決まるまでは、いったん賃貸暮らしを選択したほうが安全かもしれず、この辺りは介護施設と物件探しを並行しながら決定する。

(5)父親の住み替え先を見つけて引っ越しが完了し、新生活にも慣れてきたら、長男のマンション探しをおこなう。ここは時間がかかりそうな作業だが、父親の年齢を考えると、3年以内には決着をつけたいところである。

■長男の引っ越し完了後、自宅の売却作業をする段取り

(6)長男の引っ越しが完了したら、自宅の売却作業をおこなう。長男が住み替えを断固拒否した場合は、自宅を保有したままの可能性も残る。

仮に長男が自宅に住み続けたとしても、父親亡き後は父親が購入したマンションを賃貸に出して、収入を得られる。長男の老後は、国民年金に賃貸収入を足せば、生活は継続できることが計算上(キャッシュフロー表による収支状況の計算)、つかめた。

また、自宅を手放さない場合、将来的に自宅の土地を担保にして、リバースモーゲージなどの利用も検討できそうである。いずれにしても、本来はじっくり検討すべき「働けない長男の生活」は、父親に危害を与えて警察沙汰などの問題を起こさない限り、成り立つと思われる。

(7)母親の入居費用は、住み替え先候補として私が名前を挙げた介護護型ケアハウスの場合、ひと月20万円くらい。この介護型ケアハウスについては、「介護認定が受けられれば、入所は可能」との返事をもらう。

ただし現在は満室なので、数カ月程度の待機期間は必要とのこと。待機者はいないそうなので、介護認定を受けるまでの時間を考えれば、待機期間はそれほど問題にならないと考えられる。懸念されるのは、介護認定を受けて、母親が申し込めるようになるまでのあいだに待機者が発生すること。確実に入所するため、仮申し込みをしてしまうかは検討中。

特別養護老人ホームに入所できるまで、自宅で待機する方法もあるが、今回のケースでは早い住み替えを優先すべきだと考える。ちなみに特別養護老人ホームに住み替えた後の費用は、母親の場合はひと月8万~11万円くらいと想定される。

(8)母親が介護型ケアハウスへ住み替え、さらに父親と長男が別々に生活すれば年間収支は赤字になるが、貯蓄が底を突くほどの心配がないことを、キャッシュフロー表で確認。特別養護老人ホームに住み替えられれば、赤字は抑えられ、キャッシュフローは改善する。

■同時期に問題発生「ひきこもりの子供の高齢化と親の要介護」

私はひきこもり家族がいるご家庭向けのセミナーでは、必ず親の介護問題について話をしている。自分の足で探せる健康状態のうちに、各家庭が持つ資金の範囲内で住み替えられそうなところを探してほしいからだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/bee32)

ところが、介護の話をすると、多くの親御さんが嫌な顔をする。「自分たちの介護のことよりも、親亡き後の子どもの生活についてもっとアドバイスをしてほしい」という気持ちからだろう。

だが、今回のケースのように、資産的にも年金額でも余裕があるケースでなければ、父親か母親のどちらかに介護が必要になった時点で、資金繰りが行き詰まるケースは多くなる。介護にかかる費用をきちんと見積もっておかないと、親が亡くなった時点での資産額が見積もりとは大きく外れてしまう可能性があるからだ。

■長男が警察のお世話になることのほうが悲しいはず

相談者の中に、父親、あるいは母親に介護が必要になったケースが出てきている。実際に介護が発生すると、それ以降はじっくりと施設を見学する余裕がないこともリスクになる。そのため、私が見学したことのある施設をご紹介する機会も増えている。

「ひきこもりと介護」といってもピンとこない方がほとんどだが、「ひきこもりの高齢化と親の介護問題」という言葉に置き換えると、イメージできる人は増えるのではないだろうか。

ひきこもりのお子さんがいるご家庭では、親が介護認定を受けて、ホームヘルパーが来るようになったのに、自宅に他人があがり込むことを嫌い、追い返すケースも出てきている。介護認定は受けているのに、介護サービスは受けられず、困り果てているご家庭も知っている。ひきこもりのお子さんがいるご家庭で親が要介護状態になった場合は、介護施設へ住み替えないと、介護放置状態になってしまう可能性が高いのではないだろうか。

今回は、母親の認知症に加え、「長男の暴力から逃げて身を守る」ことを考え、住み替えの提案をした。70代後半の父親に、住み慣れた家から離れてもらう提案をするのは酷だと思うが、長男から傷つけられてしまい、長男が警察のお世話になることのほうが悲しいはずだ。時間は相当かかることを覚悟したうえで、慎重に実行支援をしていこうと考えているところである。

(ファイナンシャルプランナー 畠中 雅子 写真=iStock.com)

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