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Appleの最新決算にみる2つの疑問、脱iPhoneシナリオの現実感

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次に、この各エリアでの四半期の業績を、売上(Revenue)と営業利益(Operating Income)の両面からみていく。一般に、ハードウェア製品は部材調達や製造、流通コストなどを含めて間接経費が多く、ソフトウェアやサービス事業などと比べて利益率が低い。そのため、いくら売上が大きくても、営業利益そのものは少なくなる可能性が高い。Appleが優秀といわれる所以は、この関連コストをギリギリまで削減しつつ、商品をより高い価格で販売することでより多くの利ざやを稼げる点にある。

今回の決算で、エリアごとの売上と営業利益に注目すると、売上の増減だけでは見えない傾向が見えてくる。例えばAmericasでは売上が前年同期比で5%上昇する一方で、営業利益そのものは落ちている。理由はさまざま考えられるが、その1つは「利益率の低い製品の販売割合が増えている」ことにあると予想する。また日本では売上が5%減少しているものの、営業利益そのものは2%強しか下落していない。先ほどサービス販売増がiPhone減少分を補ったという説明があったが、それを補強する材料となっている。


米Appleの2019年度第1四半期におけるエリア別売上と営業利益

営業利益は研究開発費のほか、営業やマーケティング、会社運営にまつわる諸経費を差し引いた数字だが、純粋に製品提供にあたって費やしたコスト(Cost of sales)を売上から引いた数字をグロスマージン(Gross margin)と呼び、これが売上に対してどの程度かを知ることで一種の利益率が割り出せる。

IT系企業の場合、ソフトウェアやサービス事業を展開する企業のグロスマージンは60-80%も珍しくない一方で、ハードウェアを製造・販売する企業のグロスマージンは20-30%程度になることが多い。

Appleのグロスマージンは今四半期の決算で38%であり、ハードウェア系企業としては極めて優秀だ。だが実は、Appleが現在のような高いグロスマージンを達成できるようになったのはiPhone発売以降のことで、16年前の2003年度第1四半期決算では27.6%iPhone登場前夜の2007年度第1四半期決算では31.2%といった具合だ。

なお2011年から2012年ごろにはグロスマージンで40%水準を突破しており、iPhone販売が軌道に乗り始めた状況を反映した結果であることがよくわかる。

さて、このグロスマージンを製品ごとに眺めていくとさらに興味深い。製品部門とサービス部門でのグロスマージンを比較してみると、両者の性質の違いがよくわかる。注目すべき点として、製品部門での売上減少幅が前年同期比で7.2%なのに対し、グロスマージンでは減少幅が12%とより大きくなっている。

単純にいえば利益率が悪化しているわけで、理由としては「iPhone以外の利益率の悪い製品の販売比率が増えている」「iPhoneそのものの利益率が低下している」の2点が考えられる。


米Appleの2019年度第1四半期における事業領域別でのグロスマージンの比較

Appleが前四半期よりiPhoneの販売台数の公表を差し控えたため、追跡が難しくなっているが、過去の経緯からみてハードウェアとしてはiPhoneの利益率が最も高く、次いでiPad、それにMacや各種周辺機器などの製品が続く。iPhoneが優秀といわれたのはその高い売上だけでなく、サービス部門を除く他のカテゴリの製品と比べて、原価が低い割に高い値段での販売が可能だからであり、そうした高額商品を販売推奨金(Subsidy)による割引を使って携帯キャリアのチャネルで販売したことが、今日のAppleを支えている。

製品カテゴリ別の売上の変化を見ても、製品部門でグロスマージンを若干だが圧迫した理由の一端が、Apple Watchを含む周辺機器カテゴリにあるのではないかと推察できる。


米Appleの2019年度第1四半期における製品カテゴリ別での売上の変化

もう1つ注目したいのがiPhoneそのもののグロスマージンの悪化だ。これまで50%台後半だったiPhoneのグロスマージンは2013年度に急激に低下し、2017年度以降は40%を切る水準まで下がっている。2013年度に何が起きたのかを振り返ると、これは「iPhone 5」が発売された年に該当する。iPhone 5では従来のデザインを見直し、アルミ削り出しの金属筐体を採用して軽量性と強度を両立させた高級感溢れる外観になっている。

一方で作業工程の難易度が高く、これが利益率低下の一因になっていたことが指摘されている。AppleがiPhoneに上位モデルを用意して高級路線をさらに志向するようになったのは次々モデルにあたるiPhone 6世代以降で、この頃からiPhoneが高コスト体質になったのではないかと考える。Appleは他社との差別化のための高コスト路線を取りやめるつもりはないようで、さらなるグロスマージンの悪化は避けられないと推察する。


Statistaの示すiPhoneのグロスマージンの推移(推測値)

昨年2018年にAppleInsiderが報じた記事では、iPhoneが全スマートフォンの利益の86%を占めているというデータを紹介していた。iPhone Xに至っては、その販売価格から35%を占めているというものだ。仮にも10万円の値付けでグロスマージンで40%近い製品が数千万台規模(おそらく2,000万台前後だとみられる)も販売されれば、それだけで膨大な利益を生み出す。

ライバル他社の製品が多くの最新機能を詰め込んでグロスマージンを圧迫させる一方で、iPhoneは従来ながらのスタイルで高利益体質を維持してきたから、少なくとも昨年時点までは顕著な差となって現れていた。だが今後、Appleがライバルと共通のフィールドに突入して機能競争へと走った場合、さらなるグロスマージンの悪化は避けられない。

Apple自身が公表していないため筆者自身の情報ソースからの判断だが、2018年に発売された新モデルは以前ほどの勢いはなく、むしろ旧モデルがその減少分を補う形となっている。旧モデルはラインを新規に立ち上げる必要がない点でコスト削減になるが、同時に販売価格は低く抑えざるを得ず、やはりグロスマージンを圧迫する理由になる。2019年以降もこの傾向が続く限り、iPhoneが以前ほど美味しいビジネスではなくなるのは時間の問題ではないかと予想する。

iPadを含む他の製品はiPhoneほど高い利益率ではないため、少なくともハードウェア企業としてのAppleは(利益率という面で) 10年以上前のiPhone登場前の水準へと落ち着くことになるのかもしれない。

コンテンツ配信プラットフォームとしてのApple

ハードウェア企業としての天井が見えつつあるAppleが、次なるフロンティアとして着目したのがサービス事業だ。今年、北米で開催されたCES 2019では、TVセットメーカー向けのiTunesアプリを介したコンテンツ配信サービスが発表された。その他、携帯キャリアとの提携によるApple Musicライブラリなどの提供、現在Appleが準備中のニュース記事サブスクリプションサービスなど、サービス部門での取り組みが数多く登場してきている。

従来、Appleが用意するコンテンツやサービスというのは、同社の製品を購入したユーザーへのプレミア的な扱いだった。豊富なコンテンツが比較的リーズナブルな価格で入手できるというのも、ハードウェアを購入したユーザーへのインセンティブの一種で、Appleがあくまでハードウェア購入へとユーザーを誘導していくのが目的だと考えられるからだ。

だが状況は変化している。こうした戦略が採れるのもハードウェア販売が右肩上がりだからこそ成り立つもので、ユーザー数の伸びがピークアウトし、買い換えサイクルも鈍化しつつある状況では維持することが難しくなる。そこでコンテンツ販売を外販にも切り替えることで、少しでも収益源を増やそうというのだ。

実際、CNBCは「サービス部門の利益率をAppleが公表したのは初」と今回の四半期決算を評価しており、Appleとしてサービス部門での健全性と成長性をアピールする狙いがあるのだろう。

とはいえ、Appleのサービスが単体でビジネスとして成り立つほどどれだけ魅力的かは、実際に外販がスタートして1-2年ほど経過した後のユーザー数や売上の変化を見てみないと判断できない。下記はサービス部門に含まれる内容の内訳だが、デジタルコンテンツを除いたサービスのほとんどはAppleハードウェアの販売に直結したものとなっている。

Services net sales include sales from Digital Content and Services, AppleCare?, Apple Pay, licensing and other services. Services net sales also include amortization of the deferred value of Maps, Siri and free iCloud services, which are bundled in the sales price of certain products.

前段での説明にあるように、今後ベースユーザーが増えない前提で考えれば、外販に頼った売上増はコンテンツ販売やiCloudでの新規契約、サービス購入にかかっている。とはいえ、この分野ではライバルが多く、コンテンツ配信ではNetflixやSpotify、Amazon.com、クラウドも含めればGoogleやMicrosoftもおり、ハードウェアの魅力を除外したサービス面だけでの勝負は非常に厳しい。iOSデバイスなしでどこまでユーザーをサービスに惹きつけることができるのか、ここが正念場となるだろう。

その意味で、デバイスという"枷"から幸か不幸か解き放たれ、プラットフォームを問わずにOffice 365のようなサービスを提供するビジネスにシフトしたMicrosoftは、ハードウェアにおける勝者のない世界で生き残る術を先に身に付けていたといえるのかもしれない。iPhoneは頭打ち、進出するサービス事業ではライバルが非常に多いという状況で、Appleはどこに”らしさ”を見出すのか。2019年モデルが登場する今秋以降の推移を見守りたい。

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